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4-17 え?私の分は?

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 その日の午後1時―

私はお昼を食べることも無くアレックス皇子に部屋に呼び出された。と言うか・・私が風邪を退いてロキシーに部屋を移して貰ってから、そこが何故か私の部屋にされていた。

「しかし・・・いつの間に部屋を別々にされたんだろう・・?まあ別にそれでもかまわないけど・・。だけど、今日のお昼はどうなっているのかしら?肝心のサミュエル皇子は何所へ行ったのか行方が分からないし、ロキシーは今日は午後から休暇日だって言うし・・。」

ブツブツ言いながら私はアレックス皇子の部屋のドアをノックした。

コンコン

「誰だ?」

中から横柄な声が聞こえて来る。

「私です、レベッカですけど?」

「ああ、そうか・・・入れ。」

「では失礼します・・・。」

カチャ・・・

言いながらドアを開けると部屋中に美味しそうな料理の匂いが漂っている。そして真正面にはずらりと並んだ豪勢な食事を前にしたアレックス皇子が椅子に座っていた。

「うわあ・・・何て立派なお食事・・・!」

私は思わずテーブルに駆け寄った。そうか、私をわざわざこの部屋に呼んだのは・・。

「ありがとうございます。アレックス様。この場に私を呼んでくださったのは昼食を一緒にという事だったのですね?」

ニコニコしながら私はテーブル用の椅子を探すが、どこにも椅子が見当たらない。そして一方のアレックス皇子は妙な顔をして私を見る。

「は?お前・・一体何を言ってるんだ?どうして昼食の席にお前を呼ばなければいけないのだ?」

「え?その為に呼んだのですよね?」

するとアレックス皇子が急に怒鳴りつけてきた。

「この馬鹿っ!どうしてお前の様にテーブルマナーも知らないような奴と一緒に食事をとらなければならないのだ?お前のような下品でがさつな食べ方をする奴を前にしているとこちらの食欲が失せてしまう!大体お前の分は無いっ!」

「ええ?!私を食事に招待したわけじゃなかったんですか?!でもいいですよね?実は私はお昼を頂いていないのですよ。こんなに沢山料理が並んでいるのですから、ご一緒させて下さいよ~。」

今までの頼み方では一度もお願いを聞いてもらえなかったので、今回はちょっとしなを作って頼んでみた。

「よせ!やめろ!その奇妙な動きをするのは・・食欲が落ちるっ!それにな・・これは罰だッ!今朝お前はとんでもない行動を取って俺達に恥をかかせたからな?だからお前の分は食事の支度はしなくてよいとこの城のメイドに伝えたのだ。」

アレックス皇子はチキンを口に運びながら言う。

「ええ!そんな・・・・!酷いじゃないですか!でも食欲が落ちたんですよね?だったら尚更その食欲が落ちた分、私に分けて下さいよ!せめてそこに乗っているテーブルパンだけでもいいですからっ!」

私はテーブルに手を伸ばした。

「駄目だ!こらっ!勝手にパンを手づかみするんじゃないっ!全く何て野蛮な女なんだっ!」

今、私とアレックス皇子の間でテーブルパンをめぐるバトルが起きている。が・・・。

「はっはっはっ!どうだっ!届くまいっ!」

ついにアレックス皇子は立ち上がり、テーブルパンが乗った皿をロッカーの上に乗せてしまった。

「ああ!酷いっ!」

「どうだ~?チビのお前には届くまい?どっちにしろお前の様にテーブルマナーを知らない人間と食卓を共にする気は俺にはないからなっ!」

「だったらアレックス皇子が私にテーブルマナーを教えてくれればいいじゃないですか?!」

「うるさいっ!俺は忙しいんだっ!ならお前の忠実な侍女に教えて貰えばいいだろう?」

「忠実な侍女・・?もしかしてミラージュの事を言ってるのですか?あ~それは無理ですって。だってミラージュもテーブルマナーを知らないのですから。」

するとアレックス皇子は真底驚いた顔をした。

「な、何だって・・・?お前の侍女はテーブルマナーも知らないのに侍女をしているのか?!」

「ええ・・そうですけど?何か問題でも・・?」

「ああ・・駄目だ。頭痛がしてきた・・・もういい、用件だけ伝えるからさっさと出て行け。いいか?15時になったら国へ向けて出発するから準備して置けよ。ほら、分ったらさっさと出て行け。お前がいると落ち着いて食事が出来ん。」

アレックス皇子はシッシッと私を手で追い払う素振りをした。

「う~・・酷い!酷すぎますっ!いいですかっ?!食べ物の恨みはおそろしいのですからねっ?!失礼しますっ!」

バンッ!

せめてもの抵抗で私は乱暴にドアを閉めて部屋を出て行った。

「はぁ~・・・まさかこの国へ来てまでお昼抜きにされるとは・・。」

こうして私はすきっ腹の状態でふらふらと自分の部屋へ戻ることになってしまった。

せめて3時のおやつ位は貰えるといいのだけど・・・。

そしてポケットからどさくさに紛れて奪って来たリンゴを取り出すと、私は歩きながら丸かじりするのだった―。








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