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第28話 隠し事には理由があるはず
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フィリップが立ち去った後も、まだ心臓の動機が収まらなかった。
扉が閉まって10数えた後…私はゆっくり身体を起こした。
「…」
耳にはまだフィリップの声が残っている。
『どうして…君は…そんなに…』
あの言葉の意味は何…?どうして、あんなに苦し気な声だったのだろう…?
「フィリップ…」
ポツリと呟いた時、扉をノックする音が聞こえた。
コンコン
『エルザ様、お医者様をお連れしました。入ってよろしいでしょうか?』
それはデイブの声だった。
「はーい、どうぞー」
扉に向かって声を掛けた。
すると…。
「失礼致します…」
カチャリと扉が開かれ、紺色のデイ・ドレスを着用した女性が室内に入ってきた。その後ろにはデイブの姿もある。
40代と思しき女性は黒の大きめのレザーバッグを手にしている。
「あの、もしや貴女がアンバー家のドクターでしょうか?」
立ち上がり、デイ・ドレス姿の女性に声を掛けた。
「はい、私がアンバー家の女医のシャロンと申します。初めまして、奥様」
シャロン先生は丁寧にお辞儀をした。
「まぁ…こちらには女の先生がいらしたのですね。エルザと申します。よろしくお願いします」
女性医師が主治医とは有り難い限りだ。
「はい、実はこの度新しく専属医になってもらいたいとアンバー家から打診を受けたのです」
「え?そうなのですか?」
「はい、さようでございます。もともとアンバー家には男性主治医が1名おりますが、今名回フィリップ様が女性医師も必要だろうとお考えになり、ご自身で女医を探されておりました。そして新しくシャロン先生にアンバー家の女性主治医になって頂いたのです」
デイブの言葉に驚いた。まさか、フィリップがそんなことをしていたとは思いもしなかった。
そして改めて思った。
フィリップは姉と結婚するにあたり、やはり女性の専属医も必要だと考えたのだろう。自ら女性医師を探し出す…フィリップは本当に姉を大切に思っていたのだ。
その姉に捨てられてしまった悲しみは、きっと想像を絶するものなのだろう…。
「それでは診察を行いますので、私と奥様の2人だけにさせて頂けますか?」
シャロン先生は後ろに控えていたデイブに声を掛けた。
「はい、それではエルザ様を宜しくお願い致します」
彼は丁寧に頭を下げると、部屋を出て行った。
パタン…
扉が閉じられると、シャロン先生が言った。
「さて、では診察を始めましょうか?」
****
「本日は2度目の診察でしたね」
聴診器をしまいながらシャロン先生が言った。
「え?そうだったのですか?」
「はい。今朝早くにフィリップ様が息を切らせながら私のところにいらしたのですよ?妻の体調が悪そうなので、すぐに往診に来てもらえないかと言って」
「え?」
その言葉に耳を疑った。フィリップが自ら先生を呼びに…?
「かなり切羽詰まった様子なので、こちらも急いで伺いました。お部屋に入ってみれば奥様がソファの上で蒼い顔でおなかを抑えて意識が朦朧としていたのを目にした時はさすがに驚きましたわ。そこでとりあえず1回分ですが、おなかの痛みを和らげるお薬を処方させていただき、フィリップ様に奥様に薬を飲ませることと、ベッドで休ませてあげることをお願いしたのです」
「…少しも知りませんでした…」
私に薬を飲ませ、ベッドに運んでくれたのはチャールズさんだと聞いていたのに…。
「奥様は今、胃炎を患っていますね。1週間分のお薬を処方しておきます。お食事は胃の痛みが治まるまでは消化の良い食事をとるように心掛けて下さいね?」
「は、はい…」
シャロン先生は丁寧に説明をした後、私に週間分の胃薬を置くと「お大事に」と言って部屋を出て行った―。
****
「どういう事なの…?」
シャロン先生の話で、私に薬を飲ませてベッドへ運んでくれた人物がフィリップである事が判明した。
「フィリップが私の看病をしてくれたなんて…でも何故みんな口裏を合わせているの…?」
でも、事実を私に隠していると言う事は…きっとフィリップが私を看病したことを知られたくはないのだろう。
「いいわ。皆が私に隠したいと思っているなら、このまま何も知らないフリをしておきましょう。きっと…そこには深い理由があるはずだわ…」
だから今はまだ何も、知らないフリをしておこう。
私は、心にそう決めた―。
扉が閉まって10数えた後…私はゆっくり身体を起こした。
「…」
耳にはまだフィリップの声が残っている。
『どうして…君は…そんなに…』
あの言葉の意味は何…?どうして、あんなに苦し気な声だったのだろう…?
「フィリップ…」
ポツリと呟いた時、扉をノックする音が聞こえた。
コンコン
『エルザ様、お医者様をお連れしました。入ってよろしいでしょうか?』
それはデイブの声だった。
「はーい、どうぞー」
扉に向かって声を掛けた。
すると…。
「失礼致します…」
カチャリと扉が開かれ、紺色のデイ・ドレスを着用した女性が室内に入ってきた。その後ろにはデイブの姿もある。
40代と思しき女性は黒の大きめのレザーバッグを手にしている。
「あの、もしや貴女がアンバー家のドクターでしょうか?」
立ち上がり、デイ・ドレス姿の女性に声を掛けた。
「はい、私がアンバー家の女医のシャロンと申します。初めまして、奥様」
シャロン先生は丁寧にお辞儀をした。
「まぁ…こちらには女の先生がいらしたのですね。エルザと申します。よろしくお願いします」
女性医師が主治医とは有り難い限りだ。
「はい、実はこの度新しく専属医になってもらいたいとアンバー家から打診を受けたのです」
「え?そうなのですか?」
「はい、さようでございます。もともとアンバー家には男性主治医が1名おりますが、今名回フィリップ様が女性医師も必要だろうとお考えになり、ご自身で女医を探されておりました。そして新しくシャロン先生にアンバー家の女性主治医になって頂いたのです」
デイブの言葉に驚いた。まさか、フィリップがそんなことをしていたとは思いもしなかった。
そして改めて思った。
フィリップは姉と結婚するにあたり、やはり女性の専属医も必要だと考えたのだろう。自ら女性医師を探し出す…フィリップは本当に姉を大切に思っていたのだ。
その姉に捨てられてしまった悲しみは、きっと想像を絶するものなのだろう…。
「それでは診察を行いますので、私と奥様の2人だけにさせて頂けますか?」
シャロン先生は後ろに控えていたデイブに声を掛けた。
「はい、それではエルザ様を宜しくお願い致します」
彼は丁寧に頭を下げると、部屋を出て行った。
パタン…
扉が閉じられると、シャロン先生が言った。
「さて、では診察を始めましょうか?」
****
「本日は2度目の診察でしたね」
聴診器をしまいながらシャロン先生が言った。
「え?そうだったのですか?」
「はい。今朝早くにフィリップ様が息を切らせながら私のところにいらしたのですよ?妻の体調が悪そうなので、すぐに往診に来てもらえないかと言って」
「え?」
その言葉に耳を疑った。フィリップが自ら先生を呼びに…?
「かなり切羽詰まった様子なので、こちらも急いで伺いました。お部屋に入ってみれば奥様がソファの上で蒼い顔でおなかを抑えて意識が朦朧としていたのを目にした時はさすがに驚きましたわ。そこでとりあえず1回分ですが、おなかの痛みを和らげるお薬を処方させていただき、フィリップ様に奥様に薬を飲ませることと、ベッドで休ませてあげることをお願いしたのです」
「…少しも知りませんでした…」
私に薬を飲ませ、ベッドに運んでくれたのはチャールズさんだと聞いていたのに…。
「奥様は今、胃炎を患っていますね。1週間分のお薬を処方しておきます。お食事は胃の痛みが治まるまでは消化の良い食事をとるように心掛けて下さいね?」
「は、はい…」
シャロン先生は丁寧に説明をした後、私に週間分の胃薬を置くと「お大事に」と言って部屋を出て行った―。
****
「どういう事なの…?」
シャロン先生の話で、私に薬を飲ませてベッドへ運んでくれた人物がフィリップである事が判明した。
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でも、事実を私に隠していると言う事は…きっとフィリップが私を看病したことを知られたくはないのだろう。
「いいわ。皆が私に隠したいと思っているなら、このまま何も知らないフリをしておきましょう。きっと…そこには深い理由があるはずだわ…」
だから今はまだ何も、知らないフリをしておこう。
私は、心にそう決めた―。
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