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第1章 安西航 11
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11月15日午前10時―
この日の沖縄は快晴で、雲一つない空が広がっていた―。
今航は那覇空港の2階にあるウェルカムホールで琢磨が来るのを待っていた。
暇つぶしにスマホのアプリゲームをしていると、不意に右肩を背後からわしづかみにされた。
「おわっ!」
航は驚いて顔を上げると、そこにはニヤリと笑みを浮かべた琢磨が立っていた。
ジーンズに白いTシャツにデニムのジャケット姿とラフな服装の琢磨を見た航は立ち上がると言った。
「おい!いきなり何するんだよっ!心臓が止まるかと思っただろう?!」
しかし琢磨は航の抗議の言葉を意も介さずに言った。
「まぁ、固い事言うなって・・・こうして久しぶりに会うって言うのに・・ん?何だよ?」
航があまりにも自分の顔をジロジロ見つめるので琢磨は尋ねると航が言った。
「琢磨・・・お前・・・痩せたなぁ・・・。それほど朱莉の事・・ショックだったのか?」
「う・・うるさいっ!お前だって人の事言えるのか?・・・って・・・航は健康そうだな?身体も随分日焼けしてるし・・もうすっかり沖縄県民だな。」
「ああ、そうだな。かれこれ沖縄に来て1カ月以上過ぎてるし・・・。よし、それじゃまずはお前の荷物を取りに行くんだろう?」
航は椅子から立ち上ると琢磨を見た―。
****
「しっかし・・・わざわざ名護市のホテルを予約するとは思わなかったな。てっきり那覇市にホテルを予約したかと思っていたよ。」
航は助手席に座り、沖縄の景色に見入っている琢磨に声を掛けた。
「何言ってるんだ?当り前だろう?お前が今名護市に住んでるのに・・何で那覇市のホテルに泊まるんだよ。おい、今夜は一晩中酒に付き合ってもらうからな?やけ酒だ。」
「ん?ああ・・そうだな・・。何せ今日は朱莉の・・・。」
航はそこまで言うと、口を閉ざした。琢磨も今日が何の日か良く分かっていたので、車内はすっかりお通夜のような雰囲気になってしまった。
「「なあ・・・。」」
その時、同時に2人の声がハモった。
「な、何だよ・・琢磨。」
「いや、それは俺の台詞だろう?航・・・今お前、何言おうとしたんだよ?」
「う・・そ、それじゃあ聞くけど・・・琢磨。お前・・朱莉に・・告白したのか?」
「・・・した。」
琢磨は声のトーンを落とした。
「マジ?!したのかよ・・いつ、どこでだ?」
「朱莉さんから・・メールを貰ったその日の夜だ・・・。六本木ヒルズ51Fにある和食ダイニングバーで・・。」
するとそれを聞いた航はヒュ~ッと口笛を吹くと言った。
「おうおう・・・さすが大人のムード満点な場所で告白したなぁ・・・。」
すると琢磨が言った。
「馬鹿言え!あの時はなぁ・・・俺はすでに失恋確定していたんだよ!失恋する為に行ったあのダイニングバー・・・もう二度と俺は行く気はないからな?縁起が悪すぎる!」
そして深いため息をつき、窓の外を流れる美しい南国の景色を見つめながら、琢磨は言った。
「航・・・そういうお前はどうなんだ?朱莉さんに・・告白したのか?」
「ああ・・・したさ。」
航はハンドルを強く握りしめると言った。
「はぁ?何だよ・・・航、お前だって結局告白してるんじゃないか!どこで告白したんだよ?」
途端に琢磨の顔が好奇心で一杯の表情へ変わる。
「お・・俺は・・夜の・・上野公園の噴水で・・。俺だって・・告白する前から朱莉に結婚する話を聞かされたんだぞ?その時の俺の絶望した気持ちがお前に分かるかよ?それでも・・俺は・・・どうしても・・朱莉を困らせる事は十分すぎるくらい分かっていたのに・・どれだけ朱莉の事を好きだったか・・知っておいてもらいたかったんだ・・。」
「航・・・。」
「だけど・・やっぱり面と向かって言うのは辛くて・・・朱莉に泣かれてしまいそうなのが耐えられなくて・・わざと朱莉を噴水の反対側に行かせて・・噴水が上がった時に・・俺はその場を逃げて・・電話で朱莉に告白したんだ・・・。」
航の声は・・いつしか涙声になっていた―。
この日の沖縄は快晴で、雲一つない空が広がっていた―。
今航は那覇空港の2階にあるウェルカムホールで琢磨が来るのを待っていた。
暇つぶしにスマホのアプリゲームをしていると、不意に右肩を背後からわしづかみにされた。
「おわっ!」
航は驚いて顔を上げると、そこにはニヤリと笑みを浮かべた琢磨が立っていた。
ジーンズに白いTシャツにデニムのジャケット姿とラフな服装の琢磨を見た航は立ち上がると言った。
「おい!いきなり何するんだよっ!心臓が止まるかと思っただろう?!」
しかし琢磨は航の抗議の言葉を意も介さずに言った。
「まぁ、固い事言うなって・・・こうして久しぶりに会うって言うのに・・ん?何だよ?」
航があまりにも自分の顔をジロジロ見つめるので琢磨は尋ねると航が言った。
「琢磨・・・お前・・・痩せたなぁ・・・。それほど朱莉の事・・ショックだったのか?」
「う・・うるさいっ!お前だって人の事言えるのか?・・・って・・・航は健康そうだな?身体も随分日焼けしてるし・・もうすっかり沖縄県民だな。」
「ああ、そうだな。かれこれ沖縄に来て1カ月以上過ぎてるし・・・。よし、それじゃまずはお前の荷物を取りに行くんだろう?」
航は椅子から立ち上ると琢磨を見た―。
****
「しっかし・・・わざわざ名護市のホテルを予約するとは思わなかったな。てっきり那覇市にホテルを予約したかと思っていたよ。」
航は助手席に座り、沖縄の景色に見入っている琢磨に声を掛けた。
「何言ってるんだ?当り前だろう?お前が今名護市に住んでるのに・・何で那覇市のホテルに泊まるんだよ。おい、今夜は一晩中酒に付き合ってもらうからな?やけ酒だ。」
「ん?ああ・・そうだな・・。何せ今日は朱莉の・・・。」
航はそこまで言うと、口を閉ざした。琢磨も今日が何の日か良く分かっていたので、車内はすっかりお通夜のような雰囲気になってしまった。
「「なあ・・・。」」
その時、同時に2人の声がハモった。
「な、何だよ・・琢磨。」
「いや、それは俺の台詞だろう?航・・・今お前、何言おうとしたんだよ?」
「う・・そ、それじゃあ聞くけど・・・琢磨。お前・・朱莉に・・告白したのか?」
「・・・した。」
琢磨は声のトーンを落とした。
「マジ?!したのかよ・・いつ、どこでだ?」
「朱莉さんから・・メールを貰ったその日の夜だ・・・。六本木ヒルズ51Fにある和食ダイニングバーで・・。」
するとそれを聞いた航はヒュ~ッと口笛を吹くと言った。
「おうおう・・・さすが大人のムード満点な場所で告白したなぁ・・・。」
すると琢磨が言った。
「馬鹿言え!あの時はなぁ・・・俺はすでに失恋確定していたんだよ!失恋する為に行ったあのダイニングバー・・・もう二度と俺は行く気はないからな?縁起が悪すぎる!」
そして深いため息をつき、窓の外を流れる美しい南国の景色を見つめながら、琢磨は言った。
「航・・・そういうお前はどうなんだ?朱莉さんに・・告白したのか?」
「ああ・・・したさ。」
航はハンドルを強く握りしめると言った。
「はぁ?何だよ・・・航、お前だって結局告白してるんじゃないか!どこで告白したんだよ?」
途端に琢磨の顔が好奇心で一杯の表情へ変わる。
「お・・俺は・・夜の・・上野公園の噴水で・・。俺だって・・告白する前から朱莉に結婚する話を聞かされたんだぞ?その時の俺の絶望した気持ちがお前に分かるかよ?それでも・・俺は・・・どうしても・・朱莉を困らせる事は十分すぎるくらい分かっていたのに・・どれだけ朱莉の事を好きだったか・・知っておいてもらいたかったんだ・・。」
「航・・・。」
「だけど・・やっぱり面と向かって言うのは辛くて・・・朱莉に泣かれてしまいそうなのが耐えられなくて・・わざと朱莉を噴水の反対側に行かせて・・噴水が上がった時に・・俺はその場を逃げて・・電話で朱莉に告白したんだ・・・。」
航の声は・・いつしか涙声になっていた―。
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