命がけの恋~13回目のデスループを回避する為、婚約者の『護衛騎士』を攻略する

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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2-8 誓約書

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 ユベールの好きなペパーミントティーを飲ませたことで少し機嫌が良くなったのか、彼は私に尋ねてきた。

「それで、先ほどお前を護衛しなくていいとは…どういう事なんだ?」

「はい、まさに言葉の通りです。ユベール様は私が魔石を探している間の見張りと、私が集めた魔石を持っていて下さるだけで結構です」

「何だって?それではもしお前の魔石を狙って誰かが襲ってきたらどうするのだ?」

「その時は…私の事は見捨てて下さって構いません」

私はハーブティーを飲みながら答えた。

「何だって?お前、本気でそんな事言ってるのか?だったら何故俺を護衛騎士にした?」

ユベールは真剣な顔で私を見る。ええ、それは貴方が私の護衛騎士なんかやりたくないと言ってるからでしょう?…何て口が裂けても言えっこない。

「はい、それはユベール様にご迷惑をおかけしたくないからです」

「え…?」

「ただでさえ、お忙しいユベール様に護衛になって頂いたのに、さらにお手数おかけしたくないからです。第一、ユベール様はアンリ皇子の専属護衛騎士だったお方。当然その腕前が素晴らしい事はここに参加している全員が知っております。そんなすごい方に護衛して頂いている私を誰が襲うと思いますか?」

私は大げさな位に身振り手振りを加えてユベールに訴える。

「しかし…仮にお前が襲われたとき、俺が何もしないというのは…」

ユベールが考え込んでいる。だったら今度はもう彼の情に訴えてみるしかないだろう。ユベールは…とても冷たい人間だ。恐らく彼が自分以外の為に動く人物はアンリ王子とジュリエッタのみだろう。きっと私を始め、他の参加者たちの命など軽視しているに違いない。けれど、その冷酷さがあるからこそ判断力が素早く、若干22歳とう若さで王宮騎士団の団長になり、アンリ王子の専属護衛騎士に選ばれたのだから。

「だったら、こういうのはどうですか?万一私が襲われた場合はユベール様の気が向いた時だけ助けて頂くと言う事で」

「は?お前…本気でそんな事を言ってるのか?それで俺の気が向かなかった場合はどうする?」

「その時はその時です。仮に重大な事故が起こって、私が命を落とすような事になったとしても…私は決して恨みには思いませんし、ユベール様が罰を受けないように誓約書を書いても構いません。あ?何なら今書いておきましょうか?」

私は席を立つと便箋と万年筆を引き出しから出して来た。そしてユベールの前でサラサラとペンを走らせて、彼の前に立った今書きあげたばかりの誓約書を置いた。

「読んでみてください」

「あ、ああ…」

『私、シルビア・ルグランは護衛騎士ユベール・マルタンの眼前で不慮の死を遂げようとも、決して彼を罰する事なきようにお願い申し上ます』

読み終えたユベールは青くなって誓約書をテーブルの上に置くと興奮気味に言った。

「お、おまえ!何だ?この内容はっ?!大体これではお前がこの婚約者を決めるテストで命を落とすような口ぶりではないかっ?!」

いえ、口ぶりではなくて本当にその通りなのですけど。現に形は違うけれど私は12回も死んでいるのだから。でも…多分その12回の死は全て殺害によるものなのだろうけど。しかし、そんな事を口には出せない。

「いえいえ、これはあくまで例えの話しですから。人の命なんて明日はどうなるか分らないじゃないですか。まして、今から始まるのはアンリ王子の婚約者をかけて始まるサバイバルゲーム見たいなもの。どんな手を使っても一番魔石をより多く手にした者が勝ち。おまけに相手から魔石を奪ってもいいとなれば…どんな事件や事故が起こってもおかしくはないと思いませんか?」

私の真剣みを帯びる態度で、ユベールはようやく事の重大さを理解したようだった。

「しかし…たかが魔石を探すだけのゲームが?しかも女性同士なのに…?」

「甘いですよ。ユベール様。女同士の争いだって…男性と違って派手では無いかもしれませんが、あるのです。それに代々歴史に名を連ねてきた悪女たちだっているのですから。私は王子の婚約者になることは全く興味がありませんけど、そんな事を言って話が通用する令嬢たちがいるとは思えません。だから私はどの令嬢達とも組みたくは無かったのです」

「お前…俺なら信頼できるとでも思っているのか?」

「少なくとも参加者である令嬢達よりはそう思っています」

私は嘘をついた。本当はユベールの事を一番疑っているのに。だけど多分現段階で‥これは私の勘だけども、今の彼は私を殺そうとは考えていないと思う。だったら一番疑わしいユベールとの好感度を上げれば、私は死ななくてもすむかもしれないのだから。

その時…

ボーン
ボーン
ボーン…

部屋の時計が午後2時を知らせる音を奏でた―。


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