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マルセルの章 ⑰ 君に伝えたかった言葉
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「ちょ、ちょっと待って下さい。何故ブライアンと婚約解消出来た事が俺のお陰になるのですか?」
冗談じゃない!俺はブライアンとイングリット嬢の橋渡しをするはずだったのに?それなのにどうして俺がイングリット嬢の片棒を担いだ事になっているんだ?!
「はい、昨日マルセル様はブライアンの元へ行ってくださったのですよね?その上で私と婚約解消するべきだと進言して下さったのでしょう?」
「何ですって?そんな事俺は一言も言っていませんよ?ブライアンがそう言ったのですか?!」
「いいえ…はっきりそうだとは言っておりませんでしたが、私にはもっと年若い男性の方がお似合いだと思うからと話しておりました。やはり結婚は年齢が近い者同士の方が話も合うはずだからというのが理由のようでしたけど?マルセル様がブライアンにそのように説得して下さったのですよね?同じ職場の青年の話で目が覚めたそうです。そこでマルセル様に違いないと私は確信したのです」
「そ、そんな…」
俺は頭を抑えた。違う…!俺はそんなつもりでブライアンに会いに行ったわけじゃない。俺の様に婚約破棄をしてもらいたくなかったから、協力したかったのに…逆に俺が取った行動はブライアンに婚約破棄をすることを決意させてしまったのだろうか…?
「マルセル様~…な~にをそんなに真剣にお悩みなのですか~」
不意に呂律の回らない声で話しかけられた。
「え?」
驚いて見ると、何とイングリット嬢はいつの間にか俺が悩んでいる間にウィスキーを飲み干していた。
「ま、まさか…全て飲み終えてしまったのですかっ?!」
俺はイングリット嬢の両肩を掴むと尋ねた。
「そんなの…当然じゃないです~?そもそも飲むために注文しているのですから…」
「確かにそうかも知れませんが、だからと言ってこんなに度数の強いアルコールを一気に飲んでは…」
両肩を掴んでいたイングリット嬢は先程から俯いている。
「…イングリット嬢?」
無反応だ。俺の呼びかけに返事もしない。ま、まさか…?顔を覗き込んで見ると完全にイングリット嬢は酔いつぶれて眠っている。
「な、何て事だ…だからこんなに度数の強いアルコールはやめたほうが良いと言ったのに…」
それにしても最悪だ。とんだお荷物を引き受けてしまった。一緒にアルコールを飲んだ以上…しかも顔見知りの女性だ。このままここに捨て置くわけにもいかない。
「全く…屋敷へ連れ帰らなければいけない羽目になるなんて…」
手を上げて店員を呼ぶと二人分の会計を支払い、すっかり酔いつぶれて意識の無くなったイングリット嬢を何とか立たせた。そして彼女の肩を抱きかかえるように歩かせて辻馬車乗り場へと向かった。
****
幸い、イングリット嬢は名家の貴族令嬢なので名前を告げただけで御者は彼女が何処に住んでいるのかを理解してくれた。そして俺とイングリット嬢を乗せた馬車は彼女の屋敷を目指している。
「…」
揺れる馬車の中、俺はため息を付いた。向かい側の座席に寝かせているイングリット嬢は気持ち良さげな寝息を立てて眠っている。
…全く、本当に貴族令嬢らしくない。とんだ災難に巻き込まれてしまった。屋敷に連れて行ったらすぐに失礼しよう。
そう考えていたのに…俺はさらに厄介な出来事に巻き込まれることになる―、
冗談じゃない!俺はブライアンとイングリット嬢の橋渡しをするはずだったのに?それなのにどうして俺がイングリット嬢の片棒を担いだ事になっているんだ?!
「はい、昨日マルセル様はブライアンの元へ行ってくださったのですよね?その上で私と婚約解消するべきだと進言して下さったのでしょう?」
「何ですって?そんな事俺は一言も言っていませんよ?ブライアンがそう言ったのですか?!」
「いいえ…はっきりそうだとは言っておりませんでしたが、私にはもっと年若い男性の方がお似合いだと思うからと話しておりました。やはり結婚は年齢が近い者同士の方が話も合うはずだからというのが理由のようでしたけど?マルセル様がブライアンにそのように説得して下さったのですよね?同じ職場の青年の話で目が覚めたそうです。そこでマルセル様に違いないと私は確信したのです」
「そ、そんな…」
俺は頭を抑えた。違う…!俺はそんなつもりでブライアンに会いに行ったわけじゃない。俺の様に婚約破棄をしてもらいたくなかったから、協力したかったのに…逆に俺が取った行動はブライアンに婚約破棄をすることを決意させてしまったのだろうか…?
「マルセル様~…な~にをそんなに真剣にお悩みなのですか~」
不意に呂律の回らない声で話しかけられた。
「え?」
驚いて見ると、何とイングリット嬢はいつの間にか俺が悩んでいる間にウィスキーを飲み干していた。
「ま、まさか…全て飲み終えてしまったのですかっ?!」
俺はイングリット嬢の両肩を掴むと尋ねた。
「そんなの…当然じゃないです~?そもそも飲むために注文しているのですから…」
「確かにそうかも知れませんが、だからと言ってこんなに度数の強いアルコールを一気に飲んでは…」
両肩を掴んでいたイングリット嬢は先程から俯いている。
「…イングリット嬢?」
無反応だ。俺の呼びかけに返事もしない。ま、まさか…?顔を覗き込んで見ると完全にイングリット嬢は酔いつぶれて眠っている。
「な、何て事だ…だからこんなに度数の強いアルコールはやめたほうが良いと言ったのに…」
それにしても最悪だ。とんだお荷物を引き受けてしまった。一緒にアルコールを飲んだ以上…しかも顔見知りの女性だ。このままここに捨て置くわけにもいかない。
「全く…屋敷へ連れ帰らなければいけない羽目になるなんて…」
手を上げて店員を呼ぶと二人分の会計を支払い、すっかり酔いつぶれて意識の無くなったイングリット嬢を何とか立たせた。そして彼女の肩を抱きかかえるように歩かせて辻馬車乗り場へと向かった。
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幸い、イングリット嬢は名家の貴族令嬢なので名前を告げただけで御者は彼女が何処に住んでいるのかを理解してくれた。そして俺とイングリット嬢を乗せた馬車は彼女の屋敷を目指している。
「…」
揺れる馬車の中、俺はため息を付いた。向かい側の座席に寝かせているイングリット嬢は気持ち良さげな寝息を立てて眠っている。
…全く、本当に貴族令嬢らしくない。とんだ災難に巻き込まれてしまった。屋敷に連れて行ったらすぐに失礼しよう。
そう考えていたのに…俺はさらに厄介な出来事に巻き込まれることになる―、
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