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ヤンの章 ⑩ アゼリアの花に想いを寄せて
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「あ、あの…あまりにも突然な話で急にそんな事を言われても…」
返答に困っていると、ベンジャミン先生がポツリと言った。
「実は…この間、アゼリアの義父母が…釈放されたんだ」
「え…?」
僕はその話に驚いた。アゼリア様の義父母の話はケリーさんやマルセル先生…そしてカイ先生から聞いたことがある。食事すら与えず、アゼリア様を酷く虐待してきたと。しかも使用人たちでさえ、アゼリア様を虐めてきたと言う。
「ひどい話だと思わないかい?彼らは本来であれば懲役100年の刑を言い渡されていたのに…法律が改正されて、うんと刑期が短くなってしまったんだよ。僕は刑期をもっと引き伸ばしてやろうと必死になって奮闘したのに…結局力が及ばなかった…」
「ベンジャミン先生…」
「僕はね…そもそもアゼリアがあんな病気にかかってわずか20歳の若さで亡くなってしまったのは…全て義父母と義妹のせいだと考えている。なのに…こんな結果になってしまうなんて…」
ベンジャミン先生が悔しそうに拳を握りしめた。
「それでも、身分を剥奪されて全財産も没収。結局住む場所もなくて救貧院で暮らすことになるらしいけど…それでも僕は許せない。あいつらには一生太陽の光を浴びること無く…死んでいって貰いたかったのに…」
「ベンジャミン先生…」
先生の様子に正直僕は驚いていた。いつも人懐こい笑みを称えていたベンジャミン先生が、実はこんなにも葛藤を抱えて生きていたなんて…。
「僕は…裁かれる人間は正当に裁かれなければと思っている。そうでなければ被害者が報われないじゃないか?だからもっともっと優れた弁護士が必要なんだよ。ヤン、君なら分かるだろう?アゼリアの事を今も忘れられず、大切に思っている君なら…」
ベンジャミン先生はじっと僕の目を見ると言った。
「頼む…大学へ進み、法律を学んで…弱者を助けてあげられる弁護士を目指してほしいんだ…」
そして先生は頭を下げてきた―。
****
「それじゃ、ヤン。期待して返事を待っているよ」
教会の玄関まで見送りに出た僕にベンジャミン先生が言った。結局その場で返事をする事が出来ず、3日間だけ返事を待って貰う事にしたのだ。
「すみません…すぐに返事をすることが出来なくて」
「いや、いいよ。何しろヤンの一生がかかってくる話になるかもしれないからね。だけど…前向きに考えて欲しい」
「…はい」
そしてベンジャミン先生は僕に手を振ると、辻馬車に乗って帰って行った―。
教会の中へ入ると、そこにはシスターアンジュを始め、ここで暮ら子どもたち全員が集まっていた。
「え?皆…一体どうして…?」
するとカレンが僕を見るとみるみるうちに目に涙をためて訴えてきた。
「ヤンお兄ちゃん…ここからいなくなってしまうの…?」
「え?」
驚いてカレンに尋ねた。
「どうしてその事を…?」
「ごめん…聞くつもりは無かったんだけど…扉が開いていて…話が聞こえてしまったんだ…」
ディータが申し訳無さそうに僕を見た―。
返答に困っていると、ベンジャミン先生がポツリと言った。
「実は…この間、アゼリアの義父母が…釈放されたんだ」
「え…?」
僕はその話に驚いた。アゼリア様の義父母の話はケリーさんやマルセル先生…そしてカイ先生から聞いたことがある。食事すら与えず、アゼリア様を酷く虐待してきたと。しかも使用人たちでさえ、アゼリア様を虐めてきたと言う。
「ひどい話だと思わないかい?彼らは本来であれば懲役100年の刑を言い渡されていたのに…法律が改正されて、うんと刑期が短くなってしまったんだよ。僕は刑期をもっと引き伸ばしてやろうと必死になって奮闘したのに…結局力が及ばなかった…」
「ベンジャミン先生…」
「僕はね…そもそもアゼリアがあんな病気にかかってわずか20歳の若さで亡くなってしまったのは…全て義父母と義妹のせいだと考えている。なのに…こんな結果になってしまうなんて…」
ベンジャミン先生が悔しそうに拳を握りしめた。
「それでも、身分を剥奪されて全財産も没収。結局住む場所もなくて救貧院で暮らすことになるらしいけど…それでも僕は許せない。あいつらには一生太陽の光を浴びること無く…死んでいって貰いたかったのに…」
「ベンジャミン先生…」
先生の様子に正直僕は驚いていた。いつも人懐こい笑みを称えていたベンジャミン先生が、実はこんなにも葛藤を抱えて生きていたなんて…。
「僕は…裁かれる人間は正当に裁かれなければと思っている。そうでなければ被害者が報われないじゃないか?だからもっともっと優れた弁護士が必要なんだよ。ヤン、君なら分かるだろう?アゼリアの事を今も忘れられず、大切に思っている君なら…」
ベンジャミン先生はじっと僕の目を見ると言った。
「頼む…大学へ進み、法律を学んで…弱者を助けてあげられる弁護士を目指してほしいんだ…」
そして先生は頭を下げてきた―。
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「それじゃ、ヤン。期待して返事を待っているよ」
教会の玄関まで見送りに出た僕にベンジャミン先生が言った。結局その場で返事をする事が出来ず、3日間だけ返事を待って貰う事にしたのだ。
「すみません…すぐに返事をすることが出来なくて」
「いや、いいよ。何しろヤンの一生がかかってくる話になるかもしれないからね。だけど…前向きに考えて欲しい」
「…はい」
そしてベンジャミン先生は僕に手を振ると、辻馬車に乗って帰って行った―。
教会の中へ入ると、そこにはシスターアンジュを始め、ここで暮ら子どもたち全員が集まっていた。
「え?皆…一体どうして…?」
するとカレンが僕を見るとみるみるうちに目に涙をためて訴えてきた。
「ヤンお兄ちゃん…ここからいなくなってしまうの…?」
「え?」
驚いてカレンに尋ねた。
「どうしてその事を…?」
「ごめん…聞くつもりは無かったんだけど…扉が開いていて…話が聞こえてしまったんだ…」
ディータが申し訳無さそうに僕を見た―。
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