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ヤンの章 ㉗ アゼリアの花に想いを寄せて
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『リンデン』の図書館は3階建てのとても大きな建物だ。1階、2階は一般書籍で3階は過去の新聞や市の歴史書、そして大学のパンフレットや受験勉強用の参考書や問題集が置いてある。僕のようにお金が無い貧しい学生にとってはとてもありがたかった。
3階に上がると早速『ハイネ』の大学のパンフレットを探し始めた。メロディが進学し、僕が受験しようとしているのは『ハイネ国立大学』で国内屈指のエリート大学だった。メロディはそこの大学に推薦入学出来たのだから本当に優秀だと思う。
「あ…あった。これだ」
『ハイネ国立大学』のパンフレットを見つけた僕はすぐその場で中身を開いた。
「えっと…僕の受ける法学部の受験科目は…」
受験科目と試験内容を確認し、それぞれの参考書を探し出すと部屋の中央に並べられたテーブルに運び、参考書を広げると早速勉強を開始した―。
利用客のあまりいない図書館はシンと静まり返っていた。時折聞こえてくるのは僕がペンを走らせ、参考書をめくる音だけ。この静かな空間は勉強するのにピッタリの場所だった。教会の中はいつも騒がしいので試験勉強をする時は寒くない季節は外で勉強をしていたけれども、今度からはこの図書館で勉強しよう。
そんな事を考えながら勉強を進めていると…。
「ヤン」
不意に声を掛けられ、一つ席を開けて人が座る気配を感じた。
「え…?」
驚いてゆっくり顔を上げると、そこには頬杖をついて笑顔で僕を見ているメロディの姿があった。
「教会に行ったらヤンは図書館に行ったと聞かされたから…来ちゃった」
はにかみながら話しかけてくるメロディ。
そんな笑顔で僕を見るなんて…ひょっとしてメロディは僕に好意を持ってくれているのでは無いかと勘違いしそうになってしまう。
「メ、メロディ…どうしてここに…?」
「どうして?あ…もしかして受験勉強の邪魔だった?」
メロディはニコニコしながら尋ねてくる。
「そ、そういうわけじゃないけれど…」
分からない。どうして今日のメロディはこんなに機嫌がいいんだろう?ひょっとして恋人が出来たから…?
僕は暗い考えに囚われそうになる。
「ね、ヤン。少し話をしてもいいかしら?」
「うん、いいけど?」
「本当?嬉しい」
メロディは席を詰めて僕の隣に座ってきた。その時、彼女からフワリと甘い匂いがして、思わず心臓が高鳴る。
一体どうしたんだろう?急にメロディを意識するようになるなんて…。小さい時からずっと彼女の事を知っているのに…。
「そ、それで話って何かな?」
まともにメロディの顔を見ることが出来なくて、視線をそらせながら尋ねた。
「ええ、聞いたわよ。ベンジャミン先生の養子になる事に決めたのよね?それで受験勉強を始めたんでしょう?」
「そうだよ…。ひょっとしてシスターアンジュから聞いたの?」
動揺する心を隠しながら僕は返事をする。
「ええ、それでヤンは図書館に勉強しに行ったって聞いたから…受験勉強の邪魔したら悪いと思ったけど、どうしてもヤンに会いたくて来てしまったの」
「え?ぼ、僕に…」
思わず顔を赤らめて僕はメロディを振り返った―。
3階に上がると早速『ハイネ』の大学のパンフレットを探し始めた。メロディが進学し、僕が受験しようとしているのは『ハイネ国立大学』で国内屈指のエリート大学だった。メロディはそこの大学に推薦入学出来たのだから本当に優秀だと思う。
「あ…あった。これだ」
『ハイネ国立大学』のパンフレットを見つけた僕はすぐその場で中身を開いた。
「えっと…僕の受ける法学部の受験科目は…」
受験科目と試験内容を確認し、それぞれの参考書を探し出すと部屋の中央に並べられたテーブルに運び、参考書を広げると早速勉強を開始した―。
利用客のあまりいない図書館はシンと静まり返っていた。時折聞こえてくるのは僕がペンを走らせ、参考書をめくる音だけ。この静かな空間は勉強するのにピッタリの場所だった。教会の中はいつも騒がしいので試験勉強をする時は寒くない季節は外で勉強をしていたけれども、今度からはこの図書館で勉強しよう。
そんな事を考えながら勉強を進めていると…。
「ヤン」
不意に声を掛けられ、一つ席を開けて人が座る気配を感じた。
「え…?」
驚いてゆっくり顔を上げると、そこには頬杖をついて笑顔で僕を見ているメロディの姿があった。
「教会に行ったらヤンは図書館に行ったと聞かされたから…来ちゃった」
はにかみながら話しかけてくるメロディ。
そんな笑顔で僕を見るなんて…ひょっとしてメロディは僕に好意を持ってくれているのでは無いかと勘違いしそうになってしまう。
「メ、メロディ…どうしてここに…?」
「どうして?あ…もしかして受験勉強の邪魔だった?」
メロディはニコニコしながら尋ねてくる。
「そ、そういうわけじゃないけれど…」
分からない。どうして今日のメロディはこんなに機嫌がいいんだろう?ひょっとして恋人が出来たから…?
僕は暗い考えに囚われそうになる。
「ね、ヤン。少し話をしてもいいかしら?」
「うん、いいけど?」
「本当?嬉しい」
メロディは席を詰めて僕の隣に座ってきた。その時、彼女からフワリと甘い匂いがして、思わず心臓が高鳴る。
一体どうしたんだろう?急にメロディを意識するようになるなんて…。小さい時からずっと彼女の事を知っているのに…。
「そ、それで話って何かな?」
まともにメロディの顔を見ることが出来なくて、視線をそらせながら尋ねた。
「ええ、聞いたわよ。ベンジャミン先生の養子になる事に決めたのよね?それで受験勉強を始めたんでしょう?」
「そうだよ…。ひょっとしてシスターアンジュから聞いたの?」
動揺する心を隠しながら僕は返事をする。
「ええ、それでヤンは図書館に勉強しに行ったって聞いたから…受験勉強の邪魔したら悪いと思ったけど、どうしてもヤンに会いたくて来てしまったの」
「え?ぼ、僕に…」
思わず顔を赤らめて僕はメロディを振り返った―。
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