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第40話 出直してきました
待たせておいた辻馬車に3人で乗り込むと馬車はすぐにガラガラと音を立てて走り出した。
「私の言葉でかなりウッド氏は動揺しているはずだ」
「ええ、そうですね。僕達の事を物乞いと言う程ですから」
父の後に兄が忌々しげに唇を噛んだ。
「でも本当にパメラは父親にそっくりです…。彼女はあの農園で働いている父を持つ3人の同級生をまるで下僕のように扱っているのですから。私はパメラの取り巻き達に散々嫌がらせを受けていましたけど、シビルと言う女子学生から話を聞いて、彼女達が気の毒になりました。だから救ってあげなければと思っています」
「成程…さすが私の娘だ」
父が嬉しそうに目を細める。
「それなら尚更あの農園で過酷な労働環境で働かされている人たちを救ってあげなければいけませんね」
兄の言葉に父が頷く。
「ああ、その通りだ。でもまさかあそこまでいい加減な経営をしていると思わなかった。あの農園の資料は最近になって私の所に回ってきてね…まだよく目を通せていなかったのだよ。あの農園で働く労働者達には悪いことをしてしまったな」
「それなら尚更厳しく取り締まって、今迄搾取して物は取り返さないとならないですね」
私は父に言った―。
****
2時間後―
一度屋敷に帰宅した私達は戦闘服?ならぬ正装姿でパメラの父親の農園にやってきた。乗ってきた馬車は先程の辻馬車とは違い、毛並みの良い馬に引かせた黒塗りの美しい車体の馬車だった。これはベルモンド家が所持する馬車であり、特別な行事の時にのみ使用される特別な車両だった。
その様な立派な馬車に乗り付けてきたのだから、ウッド氏はよほど驚いたのだろう。馬車がウッドハウスに到着するやいなや、慌てた様子でハウスの中から飛び出してきた。
そして私達が馬車から降りてくると、ウッド氏は満面な笑みを浮かべながら声を掛けてきた。
「これは驚きました。皆様のように身なりの良い方々が、私の農園に一体どの様なご用件でいらしたのでしょうか?」
ウッド氏の言葉に私も父も兄も呆れたのは言うまでもなかった。2時間前も確かにこの農園にやってきたと言うのに、私達の顔も覚えていなかったのだろうか?
すると父はニコリと笑みを浮かべながら言った。
「こんにちは、ウッドさん」
「は、はぁ…こ、こんにちは…?」
パメラの父は訳が分からないと言う様子で返事をすると、ためらいがちに尋ねてきた。
「あ、あの~…私の名前をご存知なのですか?」
「ええ、勿論です」
兄が代わりに返事をする。
「契約書を頂きに参りました。もう出来上がっておりますか?」
父は満面の笑みを浮かべながらパメラの父に尋ねた。
「はて?契約書…一体何の事でしょうか?」
私達の前で首を傾げるウッド氏。まさかこの人は私達の事を覚えていないのだろうか?服装が変わっただけで判別出来なくなるとは…呆れたものだ。
「おや?覚えていないのですか?先程ご自身でおっしゃったではありませんか?2時間後にまた来れば契約書を用意してやろうと。それで我々は出直して来たのですよ?どうですか?当然契約書は出来上がっているのでしょうね?」
「え…?」
父の言葉にウッド氏の顔色が変わった―。
「私の言葉でかなりウッド氏は動揺しているはずだ」
「ええ、そうですね。僕達の事を物乞いと言う程ですから」
父の後に兄が忌々しげに唇を噛んだ。
「でも本当にパメラは父親にそっくりです…。彼女はあの農園で働いている父を持つ3人の同級生をまるで下僕のように扱っているのですから。私はパメラの取り巻き達に散々嫌がらせを受けていましたけど、シビルと言う女子学生から話を聞いて、彼女達が気の毒になりました。だから救ってあげなければと思っています」
「成程…さすが私の娘だ」
父が嬉しそうに目を細める。
「それなら尚更あの農園で過酷な労働環境で働かされている人たちを救ってあげなければいけませんね」
兄の言葉に父が頷く。
「ああ、その通りだ。でもまさかあそこまでいい加減な経営をしていると思わなかった。あの農園の資料は最近になって私の所に回ってきてね…まだよく目を通せていなかったのだよ。あの農園で働く労働者達には悪いことをしてしまったな」
「それなら尚更厳しく取り締まって、今迄搾取して物は取り返さないとならないですね」
私は父に言った―。
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2時間後―
一度屋敷に帰宅した私達は戦闘服?ならぬ正装姿でパメラの父親の農園にやってきた。乗ってきた馬車は先程の辻馬車とは違い、毛並みの良い馬に引かせた黒塗りの美しい車体の馬車だった。これはベルモンド家が所持する馬車であり、特別な行事の時にのみ使用される特別な車両だった。
その様な立派な馬車に乗り付けてきたのだから、ウッド氏はよほど驚いたのだろう。馬車がウッドハウスに到着するやいなや、慌てた様子でハウスの中から飛び出してきた。
そして私達が馬車から降りてくると、ウッド氏は満面な笑みを浮かべながら声を掛けてきた。
「これは驚きました。皆様のように身なりの良い方々が、私の農園に一体どの様なご用件でいらしたのでしょうか?」
ウッド氏の言葉に私も父も兄も呆れたのは言うまでもなかった。2時間前も確かにこの農園にやってきたと言うのに、私達の顔も覚えていなかったのだろうか?
すると父はニコリと笑みを浮かべながら言った。
「こんにちは、ウッドさん」
「は、はぁ…こ、こんにちは…?」
パメラの父は訳が分からないと言う様子で返事をすると、ためらいがちに尋ねてきた。
「あ、あの~…私の名前をご存知なのですか?」
「ええ、勿論です」
兄が代わりに返事をする。
「契約書を頂きに参りました。もう出来上がっておりますか?」
父は満面の笑みを浮かべながらパメラの父に尋ねた。
「はて?契約書…一体何の事でしょうか?」
私達の前で首を傾げるウッド氏。まさかこの人は私達の事を覚えていないのだろうか?服装が変わっただけで判別出来なくなるとは…呆れたものだ。
「おや?覚えていないのですか?先程ご自身でおっしゃったではありませんか?2時間後にまた来れば契約書を用意してやろうと。それで我々は出直して来たのですよ?どうですか?当然契約書は出来上がっているのでしょうね?」
「え…?」
父の言葉にウッド氏の顔色が変わった―。
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