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第35日目 奪われた魔鉱石 ⑤(残り時間38日)
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あの後・・・瓦礫の山と化したカジノで何とか合流する事が出来たベソとノッポと一緒に騒ぎに紛れて私達は逃げだす事に成功した。
3人で夜の町を逃げるように走っていると、反対方向から『アルハール』の治安警備隊がぶっ壊されたカジノへ向かって駆けていく。
どうしよう、なんだか物凄い事になっているが・・・もう私の力では到底弁償出来るレベルでは無い。なので選択肢は『逃げる』だけだ。
路地裏迄来ると私はハアハア言いながらベソとノッポを見た。
「い・・いい・・?コンピューターウィルスは・・・駆除したし・・・それに・・見てごらんなさい・・・?」
私はずっと握りしめていた布袋を2人の前にズイと見せた。」
「な?何ですか?これは?」
ノッポが息を切らせながら尋ねて来た。
「フ・フ・フ・・・これはねえ・・・何と魔鉱石よっ!コンピューターウィルスに取りつかれたオリバーを倒した?時にどさくさに紛れて取り返してきたのよっ!」
「おおっ!流石はエリスさんっ!相変わらず汚い手口がお得意ですね!」
ベソの言葉にカチンとなる。
「はあ・・・?ちょっと待ちなさい・・・。相変わらず汚い手口がお得意って一体どういう意味なのかしら・・?」
青筋を立て、笑みを浮かべて腕組みしながら私はベソの前に立ち塞がった。
「ひいいっ!す、すみませんっ!い・今のは言葉のあやです!」
ベソが土下座して謝って来た。
「エリスさんっ!そんな事よりもオリバーの奴が目を覚ます前に一刻も早く逃げないとっ!」
ノッポの言葉に我に返る。そうだっ!恐らく私が変身した姿は多くの人々に目撃されているはず。そして魔法のステッキから『神の裁き』をオリバーにくらわした姿だってきっと用心棒?達にみられているはずだっ!
「た、大変っ!すぐにホテルへ戻って荷物を持って、そして・・・宿代を支払ったらずらからなくちゃ!」
「ずらかるって・・・随分言葉が悪いですねえ・・・。」
ジト目でベソが言うが、そんな事はどうだっていい。
「う・・・煩いわね。男のくせに細かい事をごちゃごちゃ言うんじゃないの!ベソッ!ノッポッ!すぐにホテルへ向かうわよ!」
そして再び私達はホテルへ向かって走り始めた—。
「お客様。お帰りなさいませ。」
フロントマンがホテルへ辿り着いた私達を出迎えた。そこで素早く彼に言う。
「私達、すぐにこのホテルを出ます。準備をしてくるので清算しておいて下さい。」
それだけ言い残すとすぐに私達は部屋へと戻った。
「うーん・・・。それにしても私こんな恥ずかしい恰好で町中を逃げて来たのか・・・。」
鏡の前に立ち、初めて自分が未だに戦闘メイド服姿だったことを思い出した。
「まあ、いいや。着替えるのも面倒だし・・・それよりもいつ追手が放たれるかもしれないし、すぐに逃げなくちゃ!」
自分の私物を全てボストンバックに詰め込むと、部屋を出た。
フロントに行くと、既にベソとノッポが着替えを済ませてソファに座っている。
「ちょっと・・・何?2人供その恰好は・・・?」
私はベソとノッポの着ている衣装を震える手で指さした。するとベソが答える。
「ああ、これは『アルハール』の民族衣装ですよ?どうですか?よく似合っているでしょう?ひょっとしたら、我々はもう指名手配されているかもしれませんからね。カモフラージュの為の変装ですよ。」
「この衣装っていいですよ?フードもついているから目深に被れて顔も見られる事無いし・・・・って何睨んでるんですか?!エリスさんっ!」
ノッポが悲鳴交じりの声をあげる。そう、彼等が今着ている衣装は『アルハール』の砂漠の民の民族衣装である。長いガウンのようなものをこの国の男達は来ているのである。この衣装は断熱効果があり、とても快適に過ごせるらしいのだが・・・。
「ねえ・・こんな服・・・いつどこで買ったのよ?」
「え~と・・・いつだったかなあ・・?ああ、そうだ。エリスさんがタリク王子の元へ1人で行った時ですよっ!」
思い出したかように自分の手をポンと叩くベソ。
「どうしてついでに女性用の民族衣装を買おうって発想は起きなかったのよ?」
「う~ン・・・どうしてと言われましても・・考えもつかなかったから・・としか言いようが・・。」
首を捻るノッポに言う。
「ううう・・・・っ!も、もういいわっ!その代わりベソッ!ノッポ!私の分の宿代も払って頂戴っ!」
「えええっ?!な、何故ですかっ?!」
「意味が分かりませんよっ!」
ベソとノッポが交互に喚くが・・・。
「あら?いいの?そんな態度を取って・・私がいないと貴方達は電車で何日もかけてエタニティス学園へ帰ることになるのよ?」
「すみませんっ!すぐに払ってきますっ!」
「だから置いて行かないで下さいねっ!」
ノッポとベソは脱兎の如く、フロントへ向かって駆けだして行った。2人がカンターで支払いを済ませるのを待っていた時・・。
何気なく窓の外を眺めていた私は度肝を抜かした。オリバーがこのホテルを目指して近付いてきているのである。
「そ、そんな・・・嘘でしょう?!『神の裁き』をまともに受けたはずなのに、もう動けるようになったなんて・・!」
兎に角マズイっ!とってもマズイッ!私は急いでカウンターへ駆け寄った。
「ね、ねえっ!まだ支払い済んでいないのっ?!」
私は取りあえず一番近くにいたベソの袖をグイと引っ張って尋ねた。
「え、ええ・・・。ワイン代は領収書を切れないって言うんですよ・・・。」
「はあ?」
何それ・・・ワイン代・・ワイン代・・・。
「ふ・・・ふざけないでよっ!これ、これで支払いに充ててください!」
苦労して取って来た魔鉱石を1個ゴロンとテーブルの上に乗せると途端に相手は態度を変える。
「あああっ!こ・・・・これは魔鉱石じゃないですかっ!す、凄い・・見事だっ!こんな大きな魔鉱石は初めて見ますっ!」
するとベソが声を上げた。
「あっ!魔鉱石がっ!」
「どうですか?これで支払いさせて下さい。領収書もいりませんから。」
「そんなっ!経費で落とさせて下さいよっ!」
ノッポが喚く。
「静かにしてよっ!見つかるでしょうっ!」
「見つかるって一体誰に?」
ベソに言われたので私は無言で顎をしゃくると、丁度オリバーが2階の部屋へと上がって行く。
「しめたっ!今がチャンスよっ!オリバーはチェックアウトされた部屋へと上がって行ったわっ!」
私は急いで液晶タッチパネルを操作して、格納されていた『魔法の絨毯』を取り出した。
「さあ!早くこの『MJ』に乗ってっ!」
もうここがホテルのフロント内だとか、人の目が気になるだとか言っていられない。何せ私はオリバーから魔鉱石を奪い返した本人なのだから・・!
ベソとノッポが絨毯に乗り込むと私は叫んだ。
「『MJ』よっ!エタニティス学園迄連れて行っておくれっ!」
「待ってくれっ!!」
魔絨毯で消え去る瞬間にオリバーが階段から叫ぶ姿を見つけた。そして頭上に輝く好感度のゲージは・・400を超えていた・・・気がする。
ヒュンッ!
耳元で風を切る音が聞こえてなと思った瞬間、私達の眼前にはすっかり夜の闇に包まれたエタニティス学園の門の前に立っていた。
足元には『MJ』に酔ってしまったベソとノッポが転がっている。
う~ん・・・気のせいだろうか?あの時のオリバーの頭上には好感度を現すハートのゲージが400をさしていた気がするが・・。
「コンピューターウィルスを退治したことによって好感度が上がったのかな・・・?まあ、いいやっ!」
そして足元で伸びているベソとノッポを揺すった。
「ねえ。2人供。起きて。学園についたよ。」
しかし、2人供無反応だ。う~ん・・・こうなったら仕方が無い。
ベソとノッポをその場に放置したまま私は自室へ戻って来た。
シャワーを浴びて、髪も洗ってすっきりした私は布団に潜り込むとすぐに眠りにつくのだった—。
『お疲れさまでした。35日目無事終了致しました。ウィルス駆除、お疲れさまでした。メイドレベルが45になりました。ポイントを加算させて頂きます。現在のポイントは100000ポイントになりました、『白銀のナイト』達の好感度が下がっています。好感度を奪い返して下さい。残り時間は残り38日となります。』
3人で夜の町を逃げるように走っていると、反対方向から『アルハール』の治安警備隊がぶっ壊されたカジノへ向かって駆けていく。
どうしよう、なんだか物凄い事になっているが・・・もう私の力では到底弁償出来るレベルでは無い。なので選択肢は『逃げる』だけだ。
路地裏迄来ると私はハアハア言いながらベソとノッポを見た。
「い・・いい・・?コンピューターウィルスは・・・駆除したし・・・それに・・見てごらんなさい・・・?」
私はずっと握りしめていた布袋を2人の前にズイと見せた。」
「な?何ですか?これは?」
ノッポが息を切らせながら尋ねて来た。
「フ・フ・フ・・・これはねえ・・・何と魔鉱石よっ!コンピューターウィルスに取りつかれたオリバーを倒した?時にどさくさに紛れて取り返してきたのよっ!」
「おおっ!流石はエリスさんっ!相変わらず汚い手口がお得意ですね!」
ベソの言葉にカチンとなる。
「はあ・・・?ちょっと待ちなさい・・・。相変わらず汚い手口がお得意って一体どういう意味なのかしら・・?」
青筋を立て、笑みを浮かべて腕組みしながら私はベソの前に立ち塞がった。
「ひいいっ!す、すみませんっ!い・今のは言葉のあやです!」
ベソが土下座して謝って来た。
「エリスさんっ!そんな事よりもオリバーの奴が目を覚ます前に一刻も早く逃げないとっ!」
ノッポの言葉に我に返る。そうだっ!恐らく私が変身した姿は多くの人々に目撃されているはず。そして魔法のステッキから『神の裁き』をオリバーにくらわした姿だってきっと用心棒?達にみられているはずだっ!
「た、大変っ!すぐにホテルへ戻って荷物を持って、そして・・・宿代を支払ったらずらからなくちゃ!」
「ずらかるって・・・随分言葉が悪いですねえ・・・。」
ジト目でベソが言うが、そんな事はどうだっていい。
「う・・・煩いわね。男のくせに細かい事をごちゃごちゃ言うんじゃないの!ベソッ!ノッポッ!すぐにホテルへ向かうわよ!」
そして再び私達はホテルへ向かって走り始めた—。
「お客様。お帰りなさいませ。」
フロントマンがホテルへ辿り着いた私達を出迎えた。そこで素早く彼に言う。
「私達、すぐにこのホテルを出ます。準備をしてくるので清算しておいて下さい。」
それだけ言い残すとすぐに私達は部屋へと戻った。
「うーん・・・。それにしても私こんな恥ずかしい恰好で町中を逃げて来たのか・・・。」
鏡の前に立ち、初めて自分が未だに戦闘メイド服姿だったことを思い出した。
「まあ、いいや。着替えるのも面倒だし・・・それよりもいつ追手が放たれるかもしれないし、すぐに逃げなくちゃ!」
自分の私物を全てボストンバックに詰め込むと、部屋を出た。
フロントに行くと、既にベソとノッポが着替えを済ませてソファに座っている。
「ちょっと・・・何?2人供その恰好は・・・?」
私はベソとノッポの着ている衣装を震える手で指さした。するとベソが答える。
「ああ、これは『アルハール』の民族衣装ですよ?どうですか?よく似合っているでしょう?ひょっとしたら、我々はもう指名手配されているかもしれませんからね。カモフラージュの為の変装ですよ。」
「この衣装っていいですよ?フードもついているから目深に被れて顔も見られる事無いし・・・・って何睨んでるんですか?!エリスさんっ!」
ノッポが悲鳴交じりの声をあげる。そう、彼等が今着ている衣装は『アルハール』の砂漠の民の民族衣装である。長いガウンのようなものをこの国の男達は来ているのである。この衣装は断熱効果があり、とても快適に過ごせるらしいのだが・・・。
「ねえ・・こんな服・・・いつどこで買ったのよ?」
「え~と・・・いつだったかなあ・・?ああ、そうだ。エリスさんがタリク王子の元へ1人で行った時ですよっ!」
思い出したかように自分の手をポンと叩くベソ。
「どうしてついでに女性用の民族衣装を買おうって発想は起きなかったのよ?」
「う~ン・・・どうしてと言われましても・・考えもつかなかったから・・としか言いようが・・。」
首を捻るノッポに言う。
「ううう・・・・っ!も、もういいわっ!その代わりベソッ!ノッポ!私の分の宿代も払って頂戴っ!」
「えええっ?!な、何故ですかっ?!」
「意味が分かりませんよっ!」
ベソとノッポが交互に喚くが・・・。
「あら?いいの?そんな態度を取って・・私がいないと貴方達は電車で何日もかけてエタニティス学園へ帰ることになるのよ?」
「すみませんっ!すぐに払ってきますっ!」
「だから置いて行かないで下さいねっ!」
ノッポとベソは脱兎の如く、フロントへ向かって駆けだして行った。2人がカンターで支払いを済ませるのを待っていた時・・。
何気なく窓の外を眺めていた私は度肝を抜かした。オリバーがこのホテルを目指して近付いてきているのである。
「そ、そんな・・・嘘でしょう?!『神の裁き』をまともに受けたはずなのに、もう動けるようになったなんて・・!」
兎に角マズイっ!とってもマズイッ!私は急いでカウンターへ駆け寄った。
「ね、ねえっ!まだ支払い済んでいないのっ?!」
私は取りあえず一番近くにいたベソの袖をグイと引っ張って尋ねた。
「え、ええ・・・。ワイン代は領収書を切れないって言うんですよ・・・。」
「はあ?」
何それ・・・ワイン代・・ワイン代・・・。
「ふ・・・ふざけないでよっ!これ、これで支払いに充ててください!」
苦労して取って来た魔鉱石を1個ゴロンとテーブルの上に乗せると途端に相手は態度を変える。
「あああっ!こ・・・・これは魔鉱石じゃないですかっ!す、凄い・・見事だっ!こんな大きな魔鉱石は初めて見ますっ!」
するとベソが声を上げた。
「あっ!魔鉱石がっ!」
「どうですか?これで支払いさせて下さい。領収書もいりませんから。」
「そんなっ!経費で落とさせて下さいよっ!」
ノッポが喚く。
「静かにしてよっ!見つかるでしょうっ!」
「見つかるって一体誰に?」
ベソに言われたので私は無言で顎をしゃくると、丁度オリバーが2階の部屋へと上がって行く。
「しめたっ!今がチャンスよっ!オリバーはチェックアウトされた部屋へと上がって行ったわっ!」
私は急いで液晶タッチパネルを操作して、格納されていた『魔法の絨毯』を取り出した。
「さあ!早くこの『MJ』に乗ってっ!」
もうここがホテルのフロント内だとか、人の目が気になるだとか言っていられない。何せ私はオリバーから魔鉱石を奪い返した本人なのだから・・!
ベソとノッポが絨毯に乗り込むと私は叫んだ。
「『MJ』よっ!エタニティス学園迄連れて行っておくれっ!」
「待ってくれっ!!」
魔絨毯で消え去る瞬間にオリバーが階段から叫ぶ姿を見つけた。そして頭上に輝く好感度のゲージは・・400を超えていた・・・気がする。
ヒュンッ!
耳元で風を切る音が聞こえてなと思った瞬間、私達の眼前にはすっかり夜の闇に包まれたエタニティス学園の門の前に立っていた。
足元には『MJ』に酔ってしまったベソとノッポが転がっている。
う~ん・・・気のせいだろうか?あの時のオリバーの頭上には好感度を現すハートのゲージが400をさしていた気がするが・・。
「コンピューターウィルスを退治したことによって好感度が上がったのかな・・・?まあ、いいやっ!」
そして足元で伸びているベソとノッポを揺すった。
「ねえ。2人供。起きて。学園についたよ。」
しかし、2人供無反応だ。う~ん・・・こうなったら仕方が無い。
ベソとノッポをその場に放置したまま私は自室へ戻って来た。
シャワーを浴びて、髪も洗ってすっきりした私は布団に潜り込むとすぐに眠りにつくのだった—。
『お疲れさまでした。35日目無事終了致しました。ウィルス駆除、お疲れさまでした。メイドレベルが45になりました。ポイントを加算させて頂きます。現在のポイントは100000ポイントになりました、『白銀のナイト』達の好感度が下がっています。好感度を奪い返して下さい。残り時間は残り38日となります。』
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