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第22話 退学してはいけない理由

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「ねぇ、何故私の退学を承諾出来ないの?何かそこには重大な理由があるの?」

身を乗り出してジョンを見る。

「ああ…理由ならある。しかも最大級のな」

真剣な眼差しで頷くジョン。

「最大級…」

何だろう?一体どんな理由が…?しかし、ジョンは中々口を割ろうとしない。

「な、何よ。勿体つけないで話してよ」

たまらず催促した。

「分った…しかし、何を聞かされても一切の文句は受け付けないからな。分かったか?約束だぞ?」

文句?文句…一体どういう意味なのだろう?けれど私は頷いた。

「ええ、分かったわ、一切の文句を言わないと約束する」

「分かった…なら言おう。…授業料の問題だ」

「…は?」

今の言葉…空耳だろうか?

「ね、ねぇ…私、今ジョンの言葉うまく聞き取れなかったみたい。もう一度教えてくれる?」

「全く仕方ないな…いいだろう。もう一度だけ言うから、良く聞いているんだぞ?」

「ええ」

素直に頷く。

「授業料の問題があって、退学する事が出来ないんだ」

やっぱり空耳じゃ無かった。

「ねぇ、その授業料って一体誰の授業料なのよ」

まさか自分の授業料とは言い出さないだろう。ところが…。

「何を言っている?俺の授業料に決まっているだろう?」

や、やっぱり…。言いたいことは山程あったが、グッと飲み込んでジョンに尋ねた。

「授業料の問題で退学出来ないって…どういう意味なの?」

「今回ユリアの護衛をするにあたり、俺も学生として潜入することにしたのだが、この学園の決まりで2ヶ月分の授業料を支払わなければならないことになっている」

「成程」

相槌を打つ私。

「そこで公爵様に頼んで、高額の授業料を支払って貰った。その額は実に俺がユリアの護衛につく為に貰った報酬の約3倍に相当する」

「そんなにこの学園の授業料は高いのね?!」

いや、実際にジョンがお父様からどれほどの報酬額を貰ったのかは不明だが、恐らくこの学園の授業料は相当高いのだろう。

「でも、その授業料と私が退学してはいけない理由がどう繋がるのよ?」

どうしてもその繋がりが分からない。

「うん、ユリアにしてはいい質問だ。それは俺が公爵様に言われたからだ。高額な授業料を2ヶ月分わざわざ支払ってやったのだから、絶対に2ヶ月間は通って貰う。もし途中で退学したなら、通わなかった分の授業料を報酬から天引きすると言われたのだ」

熱く語るジョン。

え…?何、それ…。

「あ、あのね。もう一度確認したいのだけど、つまり私が退学してはいけない理由は、ジョンが私の護衛をする為に入学してきたからなの?しかも2ヶ月分の授業料をお父様に支払ってもらって、2ヶ月間通わなければ報酬から天引きされてしまうからなの?」

「ああ、そうだ。ユリアが退学してしまったら、俺がこの学園にいる意味が無くなってしまうだろう?何しろ護衛対象がいなくなるのだから。そうなると俺だって退学せざるを得ないじゃないか?報酬が天引きされる?冗談じゃない。そうは思わないか?」

腕組みをするジョンに私は怒りをたぎらせた。

「ちょっと…!」

「おっと!さっき、文句は言わないと約束しただろう?」

ジョンは右手を私の前に広げて静止した。

「うぅ…な、何て卑怯な…」

悔しくて思わず拳を握りしめる。そんな私を見ながら、ジョンは口角を上げると言った。

「これで分かっただろう?だからユリアには何があっても2ヶ月間は絶対にこの学園に通って貰う。俺の報酬に関わることなんだからな?」

「だ、だけど退学になったらどうするのよ。あ、あんな魔法を使って先生の髪を焦がしちゃったんだから…へ、下手したら退学になるかも知れないじゃない。その時はどうるのよ」

「う~ん…」

この時になって、初めてジョンの眉が険しくなる。フフフ…なにやら相当困ってるようだ。私の姿であんな危険な魔法を放つからだ。自業自得というものだろう。
少しの間、悩んでいたジョンが顔を上げた。

「もし、仮に退学させられそうになったなら…」

「なったなら?」

「拝み倒せ」

「…は?」

「ひたすら頭を下げて謝るんだ。安心しろ、俺も謝ってやるから」

「ちょ、ちょっと!何それっ!」

理不尽だ、あまりにも理不尽過ぎる!しかし、次の瞬間…。

学食の壁に取り付けられた伝声管から大きな声が響き渡ってきた。

『ユリア・アルフォンスさん、ユリア・アルフォンスさん。理事長が及びです。至急
理事長室まで来るように』

来た!ついに呼び出しが…!

学食にいた学生たちの視線が一斉に向けられる。やはり、私は全校生徒から知られていたようだ。

「ジョン…」

思い切り恨みを込めた目で睨みつける。しかし、ジョンは少しも動じない。それどころか私の腕を掴んで立ち上がらせると言った。

「急ぐぞ!ユリアッ!何としても退学だけは死守するんだ!」

ジョンは私の腕を掴むとズンズン廊下を目指して歩き始めた。

「ちょ、ちょっと…!」

廊下を出たところで、突然背後から声を掛けられた。

「おい!そこの2人、待てっ!」

あ…その声は…。

ジョンはピタリと足を止めて振り返り、口を開いた。

「一体、俺たちに何の用ですか?ベルナルド・バイロン王太子」

そう、そこに立っていたのはベルナルド王子、その人だった―。


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