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第4章 37 エドガーの提案
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朝食後、ヒルダは部屋に戻り外出の準備をしていた。今からエドガーと一緒にルドルフの墓参りに行く為である。
「ルドルフ…」
ヒルダはドレッサーの前で黒いリボンの髪留めを付けるとポツリと呟いた。そして、再びヒルダの目に涙が浮かぶ。
コンコン
その時、ドアをノックする音と同時にエドガーの声が聞こえてきた。
「ヒルダ、出かける準備は出来たか?」
「はい、お兄様。今行きます」
ヒルダはコートハンガーに掛けてある黒い防寒コートを羽織る扉を開けた。
扉の前にはやはり黒いコートを着たエドガーが立っていた。そしてヒルダを見ると驚いた。
「ヒルダ‥‥もしかして、泣いていたのか?」
「あ…ご、ごめんなさい」
ヒルダは目をゴシゴシ擦ると謝った。
「何故謝るんだ?ヒルダは少しも悪くないだろう?」
エドガーはヒルダの頭を撫でながら言う。
「だ、だけど…私はお兄様と会ってから‥泣いてばかりで…」
「それは仕方ない事だろう?ルドルフを…失ってしまったのだから」
「お兄様…」
ヒルダの大きな青い目に涙が浮かぶ。
「ヒルダ‥‥」
(頼むから、そんな顔しないでくれ…!)
とうとうエドガーは我慢しきれず、ヒルダの肩を掴んで引き寄せると強く抱きしめた。
「ヒルダ。お前には俺が付いている。お前の悲しみが癒えるまで…傍にいるから‥」
「お、お兄様…。有難うございます…」
ヒルダはエドガーの背中に手をまわし‥声を殺して涙した―。
****
ガラガラガラガラ…
ルドルフの墓へ向かう馬車の中、ヒルダとエドガーは向かい合って座っていた。
「ヒルダ、冬期休暇の間はずっと『カウベリー』にいるんだ。何所か行きたい場所は無いか?どこでも連れて行ってやるぞ?」
エドガーはヒルダを元気づけたくて尋ねてみた。
「いいえ…何をする気も起きなくて…すみません、お兄様」
ヒルダは悲し気に首を振る。
「そうだよな…すまん。そんな気力出ないよな?俺はお前を元気づけたかったのだが…」
エドガーの言葉にヒルダは言う。
「お兄様のお気持ちだけで十分です。私は…ルドルフの為に喪に服したいと思います」
「ああ…分った。ところでヒルダ。『ロータス』での暮らしはどうだ?何か不便な事とかは無いか?」
エドガーは返事をすると話題を変える事にした。あまりルドルフの話しばかりしても余計にヒルダの悲しみを煽るだけだと思ったからだ。
「不便な事ですか…?特に感じたことはありません。私が住むアパートメント周辺はとても都会で、メインストリートでは辻馬車やバスも走っていますし、お店も沢山あります。それに裏手はマルシェがありますから買い物で困ることもありません」
「そうか…実はヒルダ。俺に考えがあるのだが…ヒルダとカミラの住む部屋に電話を置いてみたらどうかと思うのだが…」
「まあ、電話ですか?でもあれはとても高級な品物ですよ?」
「それは気にする事は無い。実は父に相談しようかと思っていたんだ。ヒルダと頻繁に連絡を取り合うにはやはり電話があった方がいいだろう?月々の電話料金もこちらで支払うように手配すれば問題は無いし」
「ですが…」
ヒルダは言いよどむとエドガーは言った。
「母もヒルダと頻繁に電話で話がしたいと思っているはずだ」
「お母様も‥」
「あ、勿論俺もそう思っているからな?」
エドガーは慌てて取って付けたかのように言ったが、本当は誰よりもヒルダと電話で話がしたいと思っているのは自分であることを自覚していた。
(せめて傍にいられないなら…電話で話すこと位、許されるだろう?)
エドガーは心の中でヒルダに語り掛けるのだった―。
「ルドルフ…」
ヒルダはドレッサーの前で黒いリボンの髪留めを付けるとポツリと呟いた。そして、再びヒルダの目に涙が浮かぶ。
コンコン
その時、ドアをノックする音と同時にエドガーの声が聞こえてきた。
「ヒルダ、出かける準備は出来たか?」
「はい、お兄様。今行きます」
ヒルダはコートハンガーに掛けてある黒い防寒コートを羽織る扉を開けた。
扉の前にはやはり黒いコートを着たエドガーが立っていた。そしてヒルダを見ると驚いた。
「ヒルダ‥‥もしかして、泣いていたのか?」
「あ…ご、ごめんなさい」
ヒルダは目をゴシゴシ擦ると謝った。
「何故謝るんだ?ヒルダは少しも悪くないだろう?」
エドガーはヒルダの頭を撫でながら言う。
「だ、だけど…私はお兄様と会ってから‥泣いてばかりで…」
「それは仕方ない事だろう?ルドルフを…失ってしまったのだから」
「お兄様…」
ヒルダの大きな青い目に涙が浮かぶ。
「ヒルダ‥‥」
(頼むから、そんな顔しないでくれ…!)
とうとうエドガーは我慢しきれず、ヒルダの肩を掴んで引き寄せると強く抱きしめた。
「ヒルダ。お前には俺が付いている。お前の悲しみが癒えるまで…傍にいるから‥」
「お、お兄様…。有難うございます…」
ヒルダはエドガーの背中に手をまわし‥声を殺して涙した―。
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ガラガラガラガラ…
ルドルフの墓へ向かう馬車の中、ヒルダとエドガーは向かい合って座っていた。
「ヒルダ、冬期休暇の間はずっと『カウベリー』にいるんだ。何所か行きたい場所は無いか?どこでも連れて行ってやるぞ?」
エドガーはヒルダを元気づけたくて尋ねてみた。
「いいえ…何をする気も起きなくて…すみません、お兄様」
ヒルダは悲し気に首を振る。
「そうだよな…すまん。そんな気力出ないよな?俺はお前を元気づけたかったのだが…」
エドガーの言葉にヒルダは言う。
「お兄様のお気持ちだけで十分です。私は…ルドルフの為に喪に服したいと思います」
「ああ…分った。ところでヒルダ。『ロータス』での暮らしはどうだ?何か不便な事とかは無いか?」
エドガーは返事をすると話題を変える事にした。あまりルドルフの話しばかりしても余計にヒルダの悲しみを煽るだけだと思ったからだ。
「不便な事ですか…?特に感じたことはありません。私が住むアパートメント周辺はとても都会で、メインストリートでは辻馬車やバスも走っていますし、お店も沢山あります。それに裏手はマルシェがありますから買い物で困ることもありません」
「そうか…実はヒルダ。俺に考えがあるのだが…ヒルダとカミラの住む部屋に電話を置いてみたらどうかと思うのだが…」
「まあ、電話ですか?でもあれはとても高級な品物ですよ?」
「それは気にする事は無い。実は父に相談しようかと思っていたんだ。ヒルダと頻繁に連絡を取り合うにはやはり電話があった方がいいだろう?月々の電話料金もこちらで支払うように手配すれば問題は無いし」
「ですが…」
ヒルダは言いよどむとエドガーは言った。
「母もヒルダと頻繁に電話で話がしたいと思っているはずだ」
「お母様も‥」
「あ、勿論俺もそう思っているからな?」
エドガーは慌てて取って付けたかのように言ったが、本当は誰よりもヒルダと電話で話がしたいと思っているのは自分であることを自覚していた。
(せめて傍にいられないなら…電話で話すこと位、許されるだろう?)
エドガーは心の中でヒルダに語り掛けるのだった―。
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