64 / 77
64 夢の中の少年
しおりを挟む
「あら。テア・・・お風呂から上がったのね?」
電話を切った母が笑みを浮かべて私を見る。
「え、ええ・・。あ、あの・・・今の電話・・ヘンリーからだったんじゃ・・・?」
すると母はにべもなく言った。
「いいのよ、貴女がわざわざ対応するほどの男ではないわ。」
「ええ、そうよ。テア。それじゃ、2人でお部屋に行って沢山お話しましょうよ。ほら、おばさまからこんな素敵なワイン頂いちゃったんだから。」
キャロルは嬉しそうにワインを見せてきた。
「フフフ・・・2人の為にこのワインを用意しておいたのよ。それじゃ2人ともおやすみなさい。私もお風呂に入ってくることにするから。」
「はーい。おやすみなさい。それじゃ、行きましょう?テア。」
「え、ええ・・・。」
私は先ほどのキャロルと母の話がどうにも気になっていたが、彼女の無邪気な笑顔を見ていれば、もうどうでもいい気持になってきたので、2人で仲良く私の部屋へと向かった―。
****
2人でワインを飲みながら色々な話をした。毎年子供の頃から夏休みにキャロルの家に遊びに行って過ごした楽しかった日々・・そして大学での話・・・。徐々に私たちは深酒になり・・話はいつの間にか恋の話になっていた。
ワインで頭が朦朧となりながら私はキャロルに尋ねた。
「ねえ~・・キャロル。貴女はそれだけ美人なのだから・・好きな人はいないの?」
するとキャロルが答えた。
「私にはね・・・ずっと昔から好きな人がいるんだけど・・・その人には昔から好きな人がいて・・・絶対私の事は振り向いてはくれないのよ。でもその人の好きな相手がまともな人だったら良かったのに・・とんでもない人間だったのよ。」
「え・・?そうなの・・?」
知らなかった・・・キャロルがそんな辛い恋をしているなんて・・。
「でもね、最近その好きな人はようやく相手がろくな人間ではない事に気が付いて・・別れを決意してくれたのよ。」
「それは良かったわね!チャンスじゃない!告白すればいいのに・・え?」
すると何故かキャロルは私の頬にするりと右手を添えるとグイッと顔を近づけてきた。
「何?キャロル。」
「ねえ・・・テア?私の顔・・どう思う?」
「キャロルの顔?そうね・・・とても美人だと思うわ。」
「美人・・・。」
何故か少し落胆した声で言うキャロル。何故だろう・・美人という言葉は好きではないのだろうか?
「あ、でも・・キャロルの顔は好きよ?とても。」
すると、途端にキャロルがパアッと笑顔を見せた。
「本当?!嬉しいっ!」
そして大げさなくらいに喜ぶと、ごろりとベッドに横になった。
「ふ~・・・何だかワイン飲みすぎちゃったかしら・・。眠くなってきちゃったわ・・。」
キャロルは目を閉じた。
「そうね、それじゃ寝ましょうか?」
するとキャロルが言った。
「ねえ、テア・・・今夜は貴女と一緒のベッドで寝てもいいかしら?」
「ええ、いいわよ。私・・寝相はいいから。じゃあ、一緒に寝ましょう。」
そして私は部屋の明かりを消して回り・・ベッドサイドの明かりを灯した頃には・・キャロルは目を閉じていた。
「おやすみなさい、キャロル・・・。」
そして私も眠っているキャロルの隣に潜り込み・・・ワインのせいか、すぐに眠りについた―。
眠りに落ちる寸前にある言葉を聞きながら・・・。
****
私は夢を見ていた。まだ随分昔・・・小さな子供の頃の夢を―。
< 待ってよ~〇〇〇〇~!>
私は誰かを追いかけていた。
< アハハハ・・・早くおいでよ、テア。 >
まぶしい太陽の下、振り向いたのは金の髪の巻き毛の男の子。白い半そでのシャツに青い半ズボンを履いた男の子は麦わら帽子に虫取り網を持って振り向く。
その時・・・
< キャアッ! >
石につまづいて転びそうになった。
< 危ない、テアッ! >
男の子がとっさに抱きとめてくれた。
< ありがとう・・。 >
すると男の子は言う。
< テアはちょっとドジなところがあるから・・僕がずっとそばにいて・・守ってあげるよ。将来・・僕のお嫁さんにしてあげるね? >
< 本当? 〇〇〇〇?>
<うん。本当。待ってて、テア。大人になったら必ず迎えに行くからね・・。 >
< 約束ね? 〇〇〇〇・・。 >
< うん。2人だけの約束だよ・・・。 >
そして私と男の子は指切りをした・・・。
男の子の顔は・・・最後まで思い出すことは出来なかった―。
電話を切った母が笑みを浮かべて私を見る。
「え、ええ・・。あ、あの・・・今の電話・・ヘンリーからだったんじゃ・・・?」
すると母はにべもなく言った。
「いいのよ、貴女がわざわざ対応するほどの男ではないわ。」
「ええ、そうよ。テア。それじゃ、2人でお部屋に行って沢山お話しましょうよ。ほら、おばさまからこんな素敵なワイン頂いちゃったんだから。」
キャロルは嬉しそうにワインを見せてきた。
「フフフ・・・2人の為にこのワインを用意しておいたのよ。それじゃ2人ともおやすみなさい。私もお風呂に入ってくることにするから。」
「はーい。おやすみなさい。それじゃ、行きましょう?テア。」
「え、ええ・・・。」
私は先ほどのキャロルと母の話がどうにも気になっていたが、彼女の無邪気な笑顔を見ていれば、もうどうでもいい気持になってきたので、2人で仲良く私の部屋へと向かった―。
****
2人でワインを飲みながら色々な話をした。毎年子供の頃から夏休みにキャロルの家に遊びに行って過ごした楽しかった日々・・そして大学での話・・・。徐々に私たちは深酒になり・・話はいつの間にか恋の話になっていた。
ワインで頭が朦朧となりながら私はキャロルに尋ねた。
「ねえ~・・キャロル。貴女はそれだけ美人なのだから・・好きな人はいないの?」
するとキャロルが答えた。
「私にはね・・・ずっと昔から好きな人がいるんだけど・・・その人には昔から好きな人がいて・・・絶対私の事は振り向いてはくれないのよ。でもその人の好きな相手がまともな人だったら良かったのに・・とんでもない人間だったのよ。」
「え・・?そうなの・・?」
知らなかった・・・キャロルがそんな辛い恋をしているなんて・・。
「でもね、最近その好きな人はようやく相手がろくな人間ではない事に気が付いて・・別れを決意してくれたのよ。」
「それは良かったわね!チャンスじゃない!告白すればいいのに・・え?」
すると何故かキャロルは私の頬にするりと右手を添えるとグイッと顔を近づけてきた。
「何?キャロル。」
「ねえ・・・テア?私の顔・・どう思う?」
「キャロルの顔?そうね・・・とても美人だと思うわ。」
「美人・・・。」
何故か少し落胆した声で言うキャロル。何故だろう・・美人という言葉は好きではないのだろうか?
「あ、でも・・キャロルの顔は好きよ?とても。」
すると、途端にキャロルがパアッと笑顔を見せた。
「本当?!嬉しいっ!」
そして大げさなくらいに喜ぶと、ごろりとベッドに横になった。
「ふ~・・・何だかワイン飲みすぎちゃったかしら・・。眠くなってきちゃったわ・・。」
キャロルは目を閉じた。
「そうね、それじゃ寝ましょうか?」
するとキャロルが言った。
「ねえ、テア・・・今夜は貴女と一緒のベッドで寝てもいいかしら?」
「ええ、いいわよ。私・・寝相はいいから。じゃあ、一緒に寝ましょう。」
そして私は部屋の明かりを消して回り・・ベッドサイドの明かりを灯した頃には・・キャロルは目を閉じていた。
「おやすみなさい、キャロル・・・。」
そして私も眠っているキャロルの隣に潜り込み・・・ワインのせいか、すぐに眠りについた―。
眠りに落ちる寸前にある言葉を聞きながら・・・。
****
私は夢を見ていた。まだ随分昔・・・小さな子供の頃の夢を―。
< 待ってよ~〇〇〇〇~!>
私は誰かを追いかけていた。
< アハハハ・・・早くおいでよ、テア。 >
まぶしい太陽の下、振り向いたのは金の髪の巻き毛の男の子。白い半そでのシャツに青い半ズボンを履いた男の子は麦わら帽子に虫取り網を持って振り向く。
その時・・・
< キャアッ! >
石につまづいて転びそうになった。
< 危ない、テアッ! >
男の子がとっさに抱きとめてくれた。
< ありがとう・・。 >
すると男の子は言う。
< テアはちょっとドジなところがあるから・・僕がずっとそばにいて・・守ってあげるよ。将来・・僕のお嫁さんにしてあげるね? >
< 本当? 〇〇〇〇?>
<うん。本当。待ってて、テア。大人になったら必ず迎えに行くからね・・。 >
< 約束ね? 〇〇〇〇・・。 >
< うん。2人だけの約束だよ・・・。 >
そして私と男の子は指切りをした・・・。
男の子の顔は・・・最後まで思い出すことは出来なかった―。
236
あなたにおすすめの小説
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
我慢しないことにした結果
宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
かつて番に婚約者を奪われた公爵令嬢は『運命の番』なんてお断りです。なのに獣人国の王が『お前が運命の番だ』と求婚して来ます
神崎 ルナ
恋愛
「運命の番に出会ったからローズ、君との婚約は解消する」
ローズ・ファラント公爵令嬢は婚約者のエドモンド・ザックランド公爵令息にそう言われて婚約を解消されてしまう。
ローズの居るマトアニア王国は獣人国シュガルトと隣接しているため、数は少ないがそういった可能性はあった。
だが、今回の婚約は幼い頃から決められた政略結婚である。
当然契約違反をしたエドモンド側が違約金を支払うと思われたが――。
「違約金? 何のことだい? お互いのうちどちらかがもし『運命の番』に出会ったら円満に解消すること、って書いてあるじゃないか」
確かにエドモンドの言葉通りその文面はあったが、タイミングが良すぎた。
ここ数年、ザックランド公爵家の領地では不作が続き、ファラント公爵家が援助をしていたのである。
その領地が持ち直したところでこの『運命の番』騒動である。
だが、一応理には適っているため、ローズは婚約解消に応じることとなる。
そして――。
とあることを切っ掛けに、ローズはファラント公爵領の中でもまだ発展途上の領地の領地代理として忙しく日々を送っていた。
そして半年が過ぎようとしていた頃。
拙いところはあるが、少しずつ治める側としての知識や社交術を身に付けつつあったローズの前に一人の獣人が現れた。
その獣人はいきなりローズのことを『お前が運命の番だ』と言ってきて。
※『運命の番』に関する独自解釈がありますm(__)m
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる