身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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4-17 エルウィンの変化

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 アリアドネがシュミットと別れ、地下階段を上って仕事場に戻ってきた途端、マリアとダリウスが慌てた様子で駆けつけて来た。

「「アリアドネッ!」」

2人が同時に駆けつけて来たので、アリアドネは驚いた。

「まぁ…どうしたのですか?2人共。そんなに慌てて…」

そして頭に巻き付けていたクラバットを外した。

「どうしたもこうしたも…大丈夫だったかい?恐ろしい目に遭わなかったかい?」

マリアが心配そうに尋ねて来た。

「え?ええ…大丈夫でした」

するダリウスが安堵の溜息をついた。

「そ、そうか…良かった…。アイゼンシュタット城には手癖の悪い騎士や兵士がいると言う話をマリアさんから聞かされたから…君の事が心配でたまらなかったんだ」

「ダリウス…ありがとう、心配してくれて」

「ところで、その手に持っている青い布は何だい?顔に巻いて戻って来たよね?」

ダリウスが尋ねて来た。

「ええ、このクラバットはエルウィン様が貸して下さったの」

「え?エルウィン様が?」

マリアが驚いた様子を見せる。

「…城主様が貸してくれたのか?」

ダリウスは真剣な目でアリアドネを見た。

「え、ええ?そうだけど…?」

「アリアドネ。何で頭に布を巻いていたんだい?一体何があったのか説明して貰えるかい?」

「はい。実は…」

マリアの質問にアリアドネは答えた。城で何があったのかを…。



「まさか…そんな事があったなんて…本当に無事で良かったよ。あんたは器量良しだから、心配していたんだよ」

話を聞き終えたマリアはアリアドネをギュッと抱きしめた。

「心配して頂き有難うございます」

アリアドネは嬉しそうに言った。今ではマリアはまるでアリアドネの母親の様な存在になりつつあった。

「だけど…城主様がアリアドネを助けたなんて…信じられないな…」

ダリウスは訝し気に言う。

「おや?あんたは『アイデン』の領民なのに、エルウィン様の事をまだ暴君だと思っているのかい?乱暴だけどね、優しいところもある方なんだよ?」

マリアの言葉にアリアドネも賛同する。

「ええ、そうですね。私もエルウィン様は恐ろしい方だと思っておりましたが、今日お会いして分りました。優しい一面を持ち合わせているお方なのだと」

「アリアドネ…。そんな…まさか、あの辺境伯に…?」

ダリウスの最後の言葉は小さすぎて、マリアとアリアドネの耳には入って来る事は無かった―。



****


 アリアドネと別れたシュミットはエルウィンの執務室の前に立っていた。

(エルウィン様は執務室を出られた時は訓練所に行くと仰っておられたが…もう戻られているのだろうか…?)

コンコン

シュミットは扉をノックしてみた。

『…誰だ?』

扉の奥からエルウィンの声が聞こえて来た。シュミットはまさか本当にエルウィンがいるとは思わず、少しだけ驚きつつも声を掛けた。

「私です、シュミットです」

『入れ』

間髪開けず、エルウィンの声が聞こえて来た。

「失礼致します」

カチャリと扉を開けて室内へ入り、驚いた。何とエルウィンが机に向かい、仕事をしていたのだ。
その姿にシュミットは驚いてしまった。

「エルウィン様、一体どうされたのですか?まさかお仕事をされているとは思いもしませんでした。訓練所へ行かれる予定で執務室を出られたはずでしたよね?なぜこちらに戻って来られたのですか?」

するとエルウィンは機嫌が悪そうにシュミットを見た。

「何だ?お前は一体…。いつもなら人の顔を見る度に仕事をしろと言ってくるくせに、いざ仕事をすれば驚くし…お前は俺が一体どうすれば納得いくのだ?」

「い、いえ。エルウィン様が真面目に仕事をして頂くに越したことはありませんが…何故ですか?」

シュミットは自分の席に座ると質問した。

「ああ、真面目に仕事をすれば早く終わる。早く終われば領民達と話が出来るだろう?」

エルウィンは書類から目を離さずに言った。

「え…?領民達と…?」

その時、シュミットの頭の中にエルウィンの言葉が蘇って来た。

『叔父上はこの領民に興味を持ってしまったようだ』

(そうだ、エルウィン様はアリアドネ様の事を領民だと勘違いしておられた。でも…まさか…?)

すると不意にエルウィンが声を掛けて来た。

「シュミット」

「はい、何でしょうか?」

「下働きの者達と領民達にハンドクリームを支給してやってくれ」

「え…?ハンドクリームを…ですか?」

「何だ?文句あるのか?それ位の予算が組めないのか?」

ジロリとエルウィンはシュミットを睨み付けた。

「い、いえ。そんな事はありません。直ちに手配致します」

「ああ。早急に頼む」

そしてエルウィンは再び書類に目を落とした。そんなエルウィンを見つめながらシュミットは思った。

(エルウィン様…もしや…アリアドネ様の事を…?)

しかし、その事をエルウィンに尋ねる事など、到底出来るはずは無かった―。


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