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9-19 名案
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午後5時―
「ふ~…いい汗をかいた…」
アリアドネとロイが執務室を去って約2時間後、エルウィンが戻ってきた。
「お帰りなさいませ、エルウィン様…おや?随分血色の良い顔色をされていますね?」
シュミットは机の上の書類から目を上げた。
「ああ、分かるか?スティーブと久しぶりに剣を交えてきたんだ。気づけばこんな時間になっていた」
久しぶりに剣を振るったエルウィンは上機嫌である。
「そうですか。それは良かったですね」
「ところで、俺の留守中何かあったか?」
書斎の椅子に座るとエルウィンは尋ねてきた。
「はい、ミカエル様とウリエル様の新しい専属メイドになった者がロイと一緒にエルウィン様を訪ねて来ました」
「何?リアが?」
「はい、ロイに抱きかかえられておりました」
「何だって?まだ…い、いや。何でも無い」
「そう言えば、怪我をした彼女を運ばれたのがエルウィン様なのですよね?」
「ああ、そうだ。全くあの女…」
エルウィンはゾーイの事を思い出し、再び苛立ちが募ってきた。一方のシュミットは何故エルウィンが苛立たっているのか理解できずに尋ねた。
「エルウィン様、随分不機嫌そうですが…何かあったのですか?あの女とは誰のことです?」
「何?シュミット…お前、何も知らないのか?何故リアが怪我をしたのかを」
エルウィンは驚きで目を見開いた。
「え?ワゴンでミカエル様とウリエル様のお茶とお菓子を乗せて運んでいたところ、転んでしまい、割れた食器の上で倒れてしまったと伺っておりますが?」
「いや、それは違う。あれはゾーイの仕業だ。あの女のせいでリアは怪我をしたに違いない。俺は直接現場を見たわけではないが、リアはワゴンに乗せて運んでいた。恐らくゾーイがワゴンの上の食器をわざと落として割ったに違いない。そしてリアに食器を片付けさせようとしたところ…。ゾーイは割れた食器の上にリアを倒して、背中を足で踏みつけたんだ」
エルウィンは興奮のあまり、一気にまくしたてた。
「な、何ですって?!ゾーイさんがそのようなことをっ?!」
「ああ、そうだ…クソッ!あの女…つくづく腹が立ってくる。大体何故リアをあんな目に遭わせたんだ?生意気なメイドに礼儀を教えようとした等わけの分からないことを言いやがって…」
「エルウィン様、言葉使いが少々悪いようですが…」
シュミットはエルウィンを咎めながらも、自分自身良い気がしなかった。
(仮にもゾーイさんは子爵家令嬢…その方がよりにもよって伯爵令嬢でエルウィン様の妻となるはずのアリアドネ様に無礼を働くなど…)
「とにかくあの女がリアに怪我を負わせたんだ。あいつ…俺にあんな真似をしただけで無く、リアにまで…一体何を考えているんだっ?!」
エルウィンはゾーイがアリアドネに嫉妬していることなど、気付いてもいなかった。
「それで…?その後、どうされたのですか?」
「今度何かしでかしたら越冬期間を待たずに城を追い出してやると告げた」
「それはエルウィン様にしては寛大な処置ですね?」
「そうか?一応仮にも相手は女だからな。あまり手荒な罰は当たるつもりは無かったし…。それで?リアの要件は何だったんだ?」
「はい、この足ではミカエル様とウリエル様のお世話が出来ないので足が治るまでは別のメイドをお願いしたいと話しておりました」
「なるほど…確かにあの足では、無理だな…。だが、この南塔には殆どメイドはいないし…。そうだ、いいことを思いついた」
エルウィンは立ち上がった。
「え?どちらへ行かれるのですか?」
「ああ。少し用事を思い出した。今から行ってくるから、シュミットは残りの書類を片付けておいてくれ」
「ええっ?!エルウィン様っ?!せめて行き先くらい教えて下さい!」
しかし、エルウィンは返事もせずに足早に執務室を出ていってしまった。
「エルウィン様っ!」
バタン…
引き止めるシュミットの目の前で、無常にも閉じられる扉。
「全く…この書類を自分1人でなんて…」
シュミットは机の上に載った書類の束を見て、ため息をついた―。
「ふ~…いい汗をかいた…」
アリアドネとロイが執務室を去って約2時間後、エルウィンが戻ってきた。
「お帰りなさいませ、エルウィン様…おや?随分血色の良い顔色をされていますね?」
シュミットは机の上の書類から目を上げた。
「ああ、分かるか?スティーブと久しぶりに剣を交えてきたんだ。気づけばこんな時間になっていた」
久しぶりに剣を振るったエルウィンは上機嫌である。
「そうですか。それは良かったですね」
「ところで、俺の留守中何かあったか?」
書斎の椅子に座るとエルウィンは尋ねてきた。
「はい、ミカエル様とウリエル様の新しい専属メイドになった者がロイと一緒にエルウィン様を訪ねて来ました」
「何?リアが?」
「はい、ロイに抱きかかえられておりました」
「何だって?まだ…い、いや。何でも無い」
「そう言えば、怪我をした彼女を運ばれたのがエルウィン様なのですよね?」
「ああ、そうだ。全くあの女…」
エルウィンはゾーイの事を思い出し、再び苛立ちが募ってきた。一方のシュミットは何故エルウィンが苛立たっているのか理解できずに尋ねた。
「エルウィン様、随分不機嫌そうですが…何かあったのですか?あの女とは誰のことです?」
「何?シュミット…お前、何も知らないのか?何故リアが怪我をしたのかを」
エルウィンは驚きで目を見開いた。
「え?ワゴンでミカエル様とウリエル様のお茶とお菓子を乗せて運んでいたところ、転んでしまい、割れた食器の上で倒れてしまったと伺っておりますが?」
「いや、それは違う。あれはゾーイの仕業だ。あの女のせいでリアは怪我をしたに違いない。俺は直接現場を見たわけではないが、リアはワゴンに乗せて運んでいた。恐らくゾーイがワゴンの上の食器をわざと落として割ったに違いない。そしてリアに食器を片付けさせようとしたところ…。ゾーイは割れた食器の上にリアを倒して、背中を足で踏みつけたんだ」
エルウィンは興奮のあまり、一気にまくしたてた。
「な、何ですって?!ゾーイさんがそのようなことをっ?!」
「ああ、そうだ…クソッ!あの女…つくづく腹が立ってくる。大体何故リアをあんな目に遭わせたんだ?生意気なメイドに礼儀を教えようとした等わけの分からないことを言いやがって…」
「エルウィン様、言葉使いが少々悪いようですが…」
シュミットはエルウィンを咎めながらも、自分自身良い気がしなかった。
(仮にもゾーイさんは子爵家令嬢…その方がよりにもよって伯爵令嬢でエルウィン様の妻となるはずのアリアドネ様に無礼を働くなど…)
「とにかくあの女がリアに怪我を負わせたんだ。あいつ…俺にあんな真似をしただけで無く、リアにまで…一体何を考えているんだっ?!」
エルウィンはゾーイがアリアドネに嫉妬していることなど、気付いてもいなかった。
「それで…?その後、どうされたのですか?」
「今度何かしでかしたら越冬期間を待たずに城を追い出してやると告げた」
「それはエルウィン様にしては寛大な処置ですね?」
「そうか?一応仮にも相手は女だからな。あまり手荒な罰は当たるつもりは無かったし…。それで?リアの要件は何だったんだ?」
「はい、この足ではミカエル様とウリエル様のお世話が出来ないので足が治るまでは別のメイドをお願いしたいと話しておりました」
「なるほど…確かにあの足では、無理だな…。だが、この南塔には殆どメイドはいないし…。そうだ、いいことを思いついた」
エルウィンは立ち上がった。
「え?どちらへ行かれるのですか?」
「ああ。少し用事を思い出した。今から行ってくるから、シュミットは残りの書類を片付けておいてくれ」
「ええっ?!エルウィン様っ?!せめて行き先くらい教えて下さい!」
しかし、エルウィンは返事もせずに足早に執務室を出ていってしまった。
「エルウィン様っ!」
バタン…
引き止めるシュミットの目の前で、無常にも閉じられる扉。
「全く…この書類を自分1人でなんて…」
シュミットは机の上に載った書類の束を見て、ため息をついた―。
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