身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
343 / 376

18-8 思いがけない偶然

しおりを挟む
「何だ?随分外が騒がしくなってきたが……?」

 シュミットが首を傾げる。

 宿屋の外からはガラガラと鳴り響く馬車の音に、大勢の人々のざわめきが聞こえる。

「クソ!こんな時に何事だ!」

 スティーブは再び宿屋を飛び出し、目を見開いた。

「な、何故……ここに王族の馬車が……?」

 広場には王族の紋章が刻まれた黒塗りに金の縁取りの馬車が止められている。そして王宮の近衛兵たちの姿があった。
 その数はおよそ30人はあろうかと思われる。

 いきなり辺鄙《へんぴ》な村に現れた王族の馬車と近衛兵たちの姿。外に出てきたアイゼンシュタットの騎士たちは勿論、『ウルス』の村人たちも何事かと集まっている。

「一体これはどういうことだ……?何故王族の馬車が……。だが、なんてツイているんだ。こんな偶然はない!」

 スティーブは黒馬車に駆け寄ると、途端に近衛兵達が立ち塞がった。

「一体何事だ!いきなり馬車に駆け寄ってくるとは!」

 口髭を生やした男がスティーブに乱暴に声を掛けてきた。

「これは失礼致しました。私はアイゼンシュタットの第一騎士団長のスティーブと申します。是非ともこちらの馬車にお乗りの方にお目通り願いたく、駆けつけてしまいました。ご無礼をお許し下さい」

 すると、馬車の中から声が聞こえてきた。

「何?アイゼンシュタットの騎士?」

 馬車の扉が音を立てて開かれると、1人の青年が馬車から降りてきた。

「私の名はマクシミリアン・レビアス。レビアス王国の第一王子だ。一体私にどんな用事があるのだ?」

 青年……マクシミリアンはスティーブに笑みを浮かべた――。



****


「何だか外が騒がしいね」

『ウルス』の村の集会所で村人たちと食事をしていたウリエルが窓の外を気にしている。

「ええ、そうですね。一体何事でしょうか?」

 アリアドネが頷くと、窓の外を覗いていた村人が声を上げた。

「な、何だ?!見たこともないような立派な馬車が広場に止まっているぞ!それに騎士たちの姿も見える!」

「何だって?」
「よし、見に行ってみよう!」

 村人たちは食事の手を止め、次々と外へ出ていく。

「リア、僕達も見に行こうよ」

 ウリエルがアリアドネに声を掛けてきた。

「え?ええ……分かりました」

 そしてアリアドネもミカエルとウリエルに続き、外へ出た。



****

「何?辺境伯がカルタン族の毒にやられて死にかけている?あのエルウィン殿がか?」

 マクシミリアンは驚きで目を見開いた。

「はい、さようでございます。今この村の宿屋で手当を受けていますが……どの解毒薬も効かないのです。城の薬士たちの話によりますと、王宮には『生命の雫』と呼ばれる液体があるそうですね?何でも体内に溜まった毒素を吐き出す効果があるとか……」

「ああ、そう言われているな。成程……確かにあれなら解毒が出来るだろう」

 マクシミリアンの言葉にスティーブの顔がほころぶ。

「それでは恐れ入りますが、エルウィン様の為にどうか『生命の雫』を分けて頂けないでしょうか?どうか宜しくお願い致します!あの方はこの国の要、どうぞお命をお助け下さい!」

 スティーブはマクシミリアンに頭を下げた。

「成程……しかし、何という偶然なのだろうな。まさかアイゼンシュタット城に行くつもりが、このようなことになっていたとは……」

「そう言えば、何故王太子殿下がこちらにいらっしゃったのですか?」

 スティーブは顔を上げた。

「ああ、大事な用があってやってきたのさ」

 「大事な用……?」

 スティーブが首を傾げたその時――。


「え?!お、王太子殿下!」

 アリアドネの声にマクシミリアンは振り返った――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

【完結】いくら溺愛されても、顔がいいから結婚したいと言う男は信用できません!

大森 樹
恋愛
天使の生まれ変わりと言われるほど可愛い子爵令嬢のアイラは、ある日突然騎士のオスカーに求婚される。 なぜアイラに求婚してくれたのか尋ねると「それはもちろん、君の顔がいいからだ!」と言われてしまった。 顔で女を選ぶ男が一番嫌いなアイラは、こっ酷くオスカーを振るがそれでもオスカーは諦める様子はなく毎日アイラに熱烈なラブコールを送るのだった。 それに加えて、美形で紳士な公爵令息ファビアンもアイラが好きなようで!? しかし、アイラには結婚よりも叶えたい夢があった。 アイラはどちらと恋をする? もしくは恋は諦めて、夢を選ぶのか……最後までお楽しみください。

推活♡指南〜秘密持ちVtuberはスパダリ社長の溺愛にほだされる〜

湊未来
恋愛
「同じファンとして、推し活に協力してくれ!」 「はっ?」 突然呼び出された社長室。総務課の地味メガネこと『清瀬穂花(きよせほのか)』は、困惑していた。今朝落とした自分のマスコットを握りしめ、頭を下げる美丈夫『一色颯真(いっしきそうま)』からの突然の申し出に。 しかも、彼は穂花の分身『Vチューバー花音』のコアなファンだった。 モデル顔負けのイケメン社長がヲタクで、自分のファン!? 素性がバレる訳にはいかない。絶対に…… 自分の分身であるVチューバーを推すファンに、推し活指南しなければならなくなった地味メガネOLと、並々ならぬ愛を『推し』に注ぐイケメンヲタク社長とのハートフルラブコメディ。 果たして、イケメンヲタク社長は無事に『推し』を手に入れる事が出来るのか。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【電子書籍化・1月末削除予定】余命一カ月の魔法使いは我儘に生きる

大森 樹
恋愛
【本編完結、番外編追加しています】 多くの方にお読みいただき感謝申し上げます。 感想たくさんいただき感謝致します。全て大切に読ませていただいております。 残念ですが、この度電子書籍化に伴い規約に基づき2026年1月末削除予定です。 よろしくお願いいたします。 ----------------------------------------------------------- 大魔法使いエルヴィは、最大の敵である魔女を倒した。 「お前は死の恐怖に怯えながら、この一カ月無様に生きるといい」 死に際に魔女から呪いをかけられたエルヴィは、自分の余命が一カ月しかないことを知る。 国王陛下から命を賭して魔女討伐をした褒美に『どんな我儘でも叶える』と言われたが……エルヴィのお願いはとんでもないことだった!? 「ユリウス・ラハティ様と恋人になりたいです!」 エルヴィは二十歳近く年上の騎士団長ユリウスにまさかの公開告白をしたが、彼は亡き妻を想い独身を貫いていた。しかし、王命により二人は強制的に一緒に暮らすことになって…… 常識が通じない真っ直ぐな魔法使いエルヴィ×常識的で大人な騎士団長のユリウスの期間限定(?)のラブストーリーです。 ※どんな形であれハッピーエンドになります。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

虜囚の王女は言葉が通じぬ元敵国の騎士団長に嫁ぐ

あねもね
恋愛
グランテーレ国の第一王女、クリスタルは公に姿を見せないことで様々な噂が飛び交っていた。 その王女が和平のため、元敵国の騎士団長レイヴァンの元へ嫁ぐことになる。 敗戦国の宿命か、葬列かと見紛うくらいの重々しさの中、民に見守られながら到着した先は、言葉が通じない国だった。 言葉と文化、思いの違いで互いに戸惑いながらも交流を深めていく。

処理中です...