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2話
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「……婚約破棄? 本気で仰っているのですか? 私達の婚約は両家で取り決めた婚約ですよね?」
エイド伯爵家は財産を武器に、手広く商売を行っている。
一方、ローゼン子爵家はエイド伯爵家の経営管理を行っていた。そこでトビアスと同年齢の私が彼の婚約者に選ばれ、本来トビアスが処理しなければならない仕事を押し付けられていたのだ。
「それがどうしたっていうんだよ? だいたいなぁ、俺は最初っからお前のような生意気女は好みじゃ無いんだよ!」
トビアスは最低な男だった。
婚約者である私に仕事を押し付け、自分は浮気し放題なのだから。
「……トビアス様は今までも、数多くの女性たちと散々遊んできましたが……今まで多めに見て、目をつぶってまいりました」
「え!? トビアス様! 今の話、本当ですの?」
ジュリアという女性は驚いた様子でトビアスを見る。
「ち、違う! 彼女たちは……皆、俺の友人だったんだよ。本気で好きなのは君だけだよ。ジュリア」
トビアスはジュリアの肩を抱き寄せて慰めると、今度は私を睨みつけてきた。
「ミシェル! なんてことを言うんだ! 彼女に謝れ!」
「何故謝らなくてはならないのです? 事実ですよね?」
腕組みすると、何故かトビアスは不敵な笑みを浮かべた。
「そうか……分かったぞ。お前、嫉妬しているんだな? だから嫌がらせのためにそんな嘘を平気でつくのだろう? 大丈夫だ、ジュリア。あの女は俺達に嫉妬して、アリもしない嘘をついているだけなのだから」
甘い声でジュリアを慰めるトビアス。
嫉妬? 誰が誰に嫉妬しているというのだろう? 私とトビアスの婚約は、ほぼ一方的にエイド家が決めたことなのだ。父は身分の違いから断りきれなかっただけだと言うのに。
「嫌がらせをしているのはむしろトビアス様の方ではありませんか? まさか私に妬いて欲しくて、そちらの女性に手を出されたのですか?」
「そ、そうなのですか!? トビアス様!!」
「何言ってるんだ!! そんな筈無いだろう? おいミシェル! いい加減にしろ!」
涙目になっているジュリアを抱きしめると、トビアスは怒鳴りつけてきた。
「いい加減にするのはトビアス様の方です。婚約破棄なんて、ふざけたことを言わないで頂けますか? そんなことできるはずありませんよね?」
「お前……それほどまでに俺と婚約破棄したくないのか? だが、俺は決めたぞ。もう限界なんだよ! お前……俺が何故、今婚約破棄を告げているか分かるか?」
「さぁ? 何故ですか?」
私は膝を組んだ。
「父は今日から外遊で海外に行く。戻ってくるのは5ヶ月後だ。だから父のいない今のうちに、婚約破棄をしてジュリアと結婚するんだよ」
「トビアス様……」
ジュリアはトビアスのことをうっとりした目つきで見つめている。
「外遊ですか……そう言えば、そんな話を聞いていた気がします。ですが、5ヶ月後と言えば、私とトビアス様が結婚する頃ですよね? もう準備は出来ているのですけど?」
そう、5ヶ月後には私とトビアスは結婚式を挙げることになっている。昨日、私は結婚式の招待状をエイド家の名前で郵送したばかりだった。
500通を超える、手書きの招待状は全て自分一人で行ったのだっけ……本当に大変な作業だった。
他にも式場の手配や、メニューについてなどもトビアスの名前を使って全て1人で行った。
寝る間も惜しんで、2ヶ月も費やして準備したというのに……トビアスは、こんな僅かな時間で今までのワタシの苦労を台無しにするつもりなのだろうか?
「うるさい! 婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか! お前の方で勝手にしろ!」
トビアスが喚いた。
プチッ
その言葉に、私の中で何かが切れた。
「……そうですか。本当に、私の方で勝手にして宜しいのですね……?」
「ああ、そうだ。勝手にしろ。用件はそれだけだ、とっとと帰って父親に伝えろ。俺との婚約は破棄されたとな」
「分かりました。では、これで私は失礼します」
席を立って、軽く会釈すると私は二人に背を向けた。もう、こんなところに長居は無用だ。
「フフ。私を恨まないでくださいね。トビアス様に選ばれなかったのは、あなたの責任なのですから」
ジュリアの楽しそうな声が背後から聞こえたが、私は振り返らない。
何故なら、今の自分の顔を二人に見られたくはなかったからだ――
エイド伯爵家は財産を武器に、手広く商売を行っている。
一方、ローゼン子爵家はエイド伯爵家の経営管理を行っていた。そこでトビアスと同年齢の私が彼の婚約者に選ばれ、本来トビアスが処理しなければならない仕事を押し付けられていたのだ。
「それがどうしたっていうんだよ? だいたいなぁ、俺は最初っからお前のような生意気女は好みじゃ無いんだよ!」
トビアスは最低な男だった。
婚約者である私に仕事を押し付け、自分は浮気し放題なのだから。
「……トビアス様は今までも、数多くの女性たちと散々遊んできましたが……今まで多めに見て、目をつぶってまいりました」
「え!? トビアス様! 今の話、本当ですの?」
ジュリアという女性は驚いた様子でトビアスを見る。
「ち、違う! 彼女たちは……皆、俺の友人だったんだよ。本気で好きなのは君だけだよ。ジュリア」
トビアスはジュリアの肩を抱き寄せて慰めると、今度は私を睨みつけてきた。
「ミシェル! なんてことを言うんだ! 彼女に謝れ!」
「何故謝らなくてはならないのです? 事実ですよね?」
腕組みすると、何故かトビアスは不敵な笑みを浮かべた。
「そうか……分かったぞ。お前、嫉妬しているんだな? だから嫌がらせのためにそんな嘘を平気でつくのだろう? 大丈夫だ、ジュリア。あの女は俺達に嫉妬して、アリもしない嘘をついているだけなのだから」
甘い声でジュリアを慰めるトビアス。
嫉妬? 誰が誰に嫉妬しているというのだろう? 私とトビアスの婚約は、ほぼ一方的にエイド家が決めたことなのだ。父は身分の違いから断りきれなかっただけだと言うのに。
「嫌がらせをしているのはむしろトビアス様の方ではありませんか? まさか私に妬いて欲しくて、そちらの女性に手を出されたのですか?」
「そ、そうなのですか!? トビアス様!!」
「何言ってるんだ!! そんな筈無いだろう? おいミシェル! いい加減にしろ!」
涙目になっているジュリアを抱きしめると、トビアスは怒鳴りつけてきた。
「いい加減にするのはトビアス様の方です。婚約破棄なんて、ふざけたことを言わないで頂けますか? そんなことできるはずありませんよね?」
「お前……それほどまでに俺と婚約破棄したくないのか? だが、俺は決めたぞ。もう限界なんだよ! お前……俺が何故、今婚約破棄を告げているか分かるか?」
「さぁ? 何故ですか?」
私は膝を組んだ。
「父は今日から外遊で海外に行く。戻ってくるのは5ヶ月後だ。だから父のいない今のうちに、婚約破棄をしてジュリアと結婚するんだよ」
「トビアス様……」
ジュリアはトビアスのことをうっとりした目つきで見つめている。
「外遊ですか……そう言えば、そんな話を聞いていた気がします。ですが、5ヶ月後と言えば、私とトビアス様が結婚する頃ですよね? もう準備は出来ているのですけど?」
そう、5ヶ月後には私とトビアスは結婚式を挙げることになっている。昨日、私は結婚式の招待状をエイド家の名前で郵送したばかりだった。
500通を超える、手書きの招待状は全て自分一人で行ったのだっけ……本当に大変な作業だった。
他にも式場の手配や、メニューについてなどもトビアスの名前を使って全て1人で行った。
寝る間も惜しんで、2ヶ月も費やして準備したというのに……トビアスは、こんな僅かな時間で今までのワタシの苦労を台無しにするつもりなのだろうか?
「うるさい! 婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか! お前の方で勝手にしろ!」
トビアスが喚いた。
プチッ
その言葉に、私の中で何かが切れた。
「……そうですか。本当に、私の方で勝手にして宜しいのですね……?」
「ああ、そうだ。勝手にしろ。用件はそれだけだ、とっとと帰って父親に伝えろ。俺との婚約は破棄されたとな」
「分かりました。では、これで私は失礼します」
席を立って、軽く会釈すると私は二人に背を向けた。もう、こんなところに長居は無用だ。
「フフ。私を恨まないでくださいね。トビアス様に選ばれなかったのは、あなたの責任なのですから」
ジュリアの楽しそうな声が背後から聞こえたが、私は振り返らない。
何故なら、今の自分の顔を二人に見られたくはなかったからだ――
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