勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
3 / 6

3話

しおりを挟む
 職場に戻り、廊下を歩いていると部長が駆けつけてきた。

「良かった、 常務。今迄一体どちらにいかれていたのですか? これから役員会議が開かれます。すぐに会議室へ行きましょう」

相当走り回って私を捜していたのだろう。部長は肩で息をしている。

「いいえ、行きません」

「は? 今、何とおっしゃられたのです?」

「ですから、会議室には行きませんと言っているのです。ここへ来たのは自分の私物を取りに来ただけですから」

「え? 私物を取りに来ただけって……それでは会議には……?」

「出るわけありません、というか私はもう完全に部外者になりましたから。部外者が重要な会議に出れるはずありませんよね?」

「部外者になった? 一体どういう意味なのでしょう?」

部長は訳が分からないと言った様子で首を傾げる。そこで私は彼を正面から見据えた。

「実は私、先程トビアス様に呼び出されて婚約破棄を告げられたのです」

「な、何ですって!? 婚約破棄ですか!?」

「ええ、そうです。他に好きな女性が出来たそうです。お相手の方はジュリアという名前の女性でした。近々結婚するそうですよ」

「け、結婚ですって!? それはまた随分性急な話ではありませんか!」

「はい、私はもうお払い箱になりました。そういうことなので会議には出ませんし、仕事もしません」

仕事もしません……なんて、素敵な響きなのだろう。

「そ、そんな! 今この会社が回っていられるのも、常務と常務代行のおかげなのですよ!? お願いですからそんなことおっしゃらないでください! 今見捨てられたらこの会社は大変なことになります!」

常務代行……勿論、この人物は父のことである。
父は別に会社を経営しているので多忙な人だ。そして私の仕事の補佐迄時々してくれている。それもこれも、トビアスが自分の立場を放棄して、遊んでいるからだ。

でも、それも今日で終わりだ。私は仕事から解放され、ようやく父も肩の荷が下りるだろう。

「仕事の話なら今後はトビアス様にしてください。彼は今駅前に新しく出来たオープンカフェ『ドルチェ』で女性とデート中です。今から行けば、恐らくまだ間に合うのではありませんか?」

「カフェ『ドルチェ』ですね? 分かりました。今すぐ行って連れてきます」

「ええ。それがいいです。では5年間、お世話になりました」

「いえ。こちらこそお世話になりました。常務はこれからどうするのですか?」

突然の部長の質問に少し考え込んでしまった。

「そうですね……5年間働き詰めだったので、どこかにバカンスに行きたいです。海を眺めながらのんびり過ごすのも良いかもしれません」

「そうですか……ではどうぞお元気で、常務。あなたのことは忘れません」

「ええ、私も部長のこと、忘れません。どうぞお元気で」

少々大げさすぎる別れの挨拶を交わす私達。

「それでは、これからトビアス様を捕まえに行ってきます!」

部長は手を振ると、急ぎ足でエントランスへ駆け足で去って行く。

「さて、私も行きましょう」

そして自分の私物を取りに行くために、書斎へ足を向けた――

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

侯爵家の婚約者に手を出す意味、わかってます?

碧井 汐桜香
恋愛
侯爵令嬢ジョセリアは地味な外見をしている少女だ。いつも婚約者のアランとその取り巻きの少女たちに罵倒されている。 しかし、今日はアランの取り巻きは一人しかおらず、いつも無視を決め込んでいたジョセリアが口を開いた。

侯爵令嬢は限界です

まる
恋愛
「グラツィア・レピエトラ侯爵令嬢この場をもって婚約を破棄する!!」 何言ってんだこの馬鹿。 いけない。心の中とはいえ、常に淑女たるに相応しく物事を考え… 「貴女の様な傲慢な女は私に相応しくない!」 はい無理でーす! 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 サラッと読み流して楽しんで頂けたなら幸いです。 ※物語の背景はふんわりです。 読んで下さった方、しおり、お気に入り登録本当にありがとうございました!

メイクをしていたなんて俺を騙していたのか、と婚約破棄された令嬢は自分の素顔を見せる。素顔をみてまた婚約してくれと言ってももう遅い

朱之ユク
恋愛
 メイクが大好きなお年頃のスカーレットは婚約者に自分がメイクをしていることを言うと、なんと婚約者のグレイからメイクをしているなんて俺を騙していたのかと言われて、なんと婚約破棄されてしまった。  最後の両親との話し合いの時にメイクをせずに挨拶に行ったら、やっぱりあの時の言葉は嘘だったと言われたけど、そんなことを言われてももう遅い。  私はメイクをしながら自由に生きていきます。

聖女は神の力を借りて病を治しますので、神の教えに背いた病でいまさら泣きついてきても、私は知りませんから!

甘い秋空
恋愛
神の教えに背いた病が広まり始めている中、私は聖女から外され、婚約も破棄されました。 唯一の理解者である王妃の指示によって、幽閉生活に入りましたが、そこには……

熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。 しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。 「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」 身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。 堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。 数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。 妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。

ざまぁを回避したい王子は婚約者を溺愛しています

宇水涼麻
恋愛
春の学生食堂で、可愛らしい女の子とその取り巻きたちは、一つのテーブルに向かった。 そこには、ファリアリス公爵令嬢がいた。 「ファリアリス様、ディック様との婚約を破棄してください!」 いきなりの横暴な要求に、ファリアリスは訝しみながらも、淑女として、可憐に凛々しく対応していく。

家族から見放されましたが、王家が救ってくれました!

マルローネ
恋愛
「お前は私に相応しくない。婚約を破棄する」  花嫁修業中の伯爵令嬢のユリアは突然、相応しくないとして婚約者の侯爵令息であるレイモンドに捨てられた。それを聞いた彼女の父親も家族もユリアを必要なしとして捨て去る。 途方に暮れたユリアだったが彼女にはとても大きな味方がおり……。

やめてください、お姉様

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
恋愛
 伯爵令嬢アリサ・ヴァン・エルフリートは不幸に見舞われていた。  何度お付き合いをしても婚約破棄されてしまう。  何度も何度も捨てられ、離れていく。  ふとアリサは自分の不幸な運命に疑問を抱く。  なぜ自分はこんなにも相手にされないのだろう、と。  メイドの協力を得て調査をはじめる。  すると、姉のミーシュの酷い嫌がらせが判明した。

処理中です...