悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

文字の大きさ
12 / 13

第11話 覚悟を決めたヒロイン

しおりを挟む
「一体どういうことだ?断罪されるのはアンジェリカでは無く君だというのかい?」

 アイザック王子は優しい声でセリーヌに話しかけるも、既に彼が私に対する横暴な態度は全学生が目撃している。
 今更、そんな甘ったるい声を出されても気色悪くて鳥肌しか立ってこない。

 う~寒っ!寒すぎるっ!
 そんなくだりはいいから、セリーヌ。さっさと白状してしまいなさいよ。

 私は心のなかで急かした。

「はい、アイザック様。アンジェリカ様が私に嫌がらせをしたというのは全くの嘘です!私がさも、アンジェリカ様に嫌がらせを受けたかのように見せかけたのです。友人たちも巻き込んで!」

 そしてビシッ!とセリーヌはある方向を指さした。するとそこには数人の女子学生たちが立っている。彼女たちは自分たちが指さされると、肩を大きくビクリと震わせた。

 ははぁん……。恐らくあの中の誰かが私のことを『悪役令嬢』と言ったな?恐らくセリーヌに教わった言葉なのだろう。
 何故なら『悪役令嬢』などという単語は転生者の私とセリーヌしか知らない言葉なのだから。

「何だって……?君たち、一体それはどういうことだ……?」

 惚れた弱み?のせいか、アイザックはセリーヌを責めることが出来ないようで指さされた女子学生たちを振り向いた。

「あ、あの……そ、それは……」
「私達は……別にその……!」
「言われたとおりにしただけなんです!」

 女子学生たちはグズグズ言い訳するだけで、何をしたのかも言おうとしない。
 するとその様子にアイザックはため息をつくと、セリーヌを見た。

「ほら、彼女たちは答えないじゃないか。つまり……あの女の仲間で、命じられるまま君に嫌がらせを働いたのだろう?!」

 そしてアイザックは私を指差し、睨みつけてきた。

 ええええっ?!な、何故そうなるのよ?!

 駄目だ、やはりあの王子はクズだ。何としてもこの私、アンジェリカを断罪したいらしい。それほどアンジェリカは憎まれていたのだろう。

 私はチラリとセリーヌを見た。セリーヌは固まったまま、何故か一言も口を利こうとしない。

 ちょっと!どうしたのよ!このまま黙っていたら私は間違いなく断罪、そして貴女はこの俺様王子と婚約させられるのよ‼

 必死で心のなかでセリーヌに訴える私。すると私の気持ちが通じたのだろう。

「待って下さい‼ほ、本当に悪いのはアンジェリカ様ではありません!私なんです!私がアンジェリカ様からアイザック様を奪いたくて、わざと嫌がらせを受けたようにしむけたのです!」

 セリーヌが大きな声で喚いた。

「何?本当に……本当の話なのか?」

 目を見開くアイザック。

「そうです、アイザック様!アンジェリカ様は一切私に嫌がらせをしたことはありません!全ては私がでっち上げた嘘なのです!今からそれらの嘘を申し上げます!」

セリーヌは観念したかのように今までついてきた嘘を語り始めた――。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

やさしい・悪役令嬢

きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」 と、親切に忠告してあげただけだった。 それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。 友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。 あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。 美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。

光の王太子殿下は愛したい

葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。 わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。 だが、彼女はあるときを境に変わる。 アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。 どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。 目移りなどしないのに。 果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!? ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。 ☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

悪役令嬢の名誉を挽回いたします!

みすずメイリン
恋愛
 いじめと家庭崩壊に屈して自ら命を経ってしまったけれど、なんとノーブル・プリンセスという選択式の女性向けノベルゲームの中の悪役令嬢リリアンナとして、転生してしまった主人公。  同時に、ノーブル・プリンセスという女性向けノベルゲームの主人公のルイーゼに転生した女の子はまるで女王のようで……?  悪役令嬢リリアンナとして転生してしまった主人公は悪役令嬢を脱却できるのか?!  そして、転生してしまったリリアンナを自分の新たな人生として幸せを掴み取れるのだろうか?

処理中です...