【完結】あなたと結ぶ半年間の契約結婚〜私の最後のお願いを叶えてくれますか

冬馬亮

文字の大きさ
34 / 54

何かが


 オスカーとシャルロッテが2回続けて踊った後、父ジョナスと交代して1曲踊った。


 その頃にはもうリベット第二王女の姿は会場から消えていて、壇上の王族の席には王太子アレックスと国王夫妻だけになっていた。


 それから少し休憩を挟んで長兄ランツと1曲、そして次兄イグナートと1曲。

 合計で5曲も踊れば、シャルロッテの足は生まれたての子ギーゼア(こちらの鹿に似た動物)よろしくガクガク状態となっていた。


 まさしく疲労困憊の状態、しかしシャルロッテに断るという選択肢はなかった。というか、断りたくなかった。

 デビュタントという事ももちろんあるが、シャルロッテはもうすぐオスカーと離縁して国を離れる予定だ。
 そうなったら、もう二度とこんな風に夜会で家族と踊る機会はない。


 家族もきっとそう思っているから、申し訳なさそうな顔をしつつも、ダンスの申し込みを取り消すことはしない。


「綺麗だねぇ、シャル」


 ジョナスは、目を潤ませながらステップを踏んだ。


「思った以上にオスカー殿がお前を大切にしてくれて驚いたよ。よかったな」


 ランツは、ブルーグリーンのドレスと白銀のお飾りに視線を走らせ、そう言った。


 そしてイグナートは・・・


「シャルに会わせたい人がいるんだ。うちに来るのは難しいだろうから、そっちの屋敷に連れて行くよ」


 薬を全部飲み終えたこと、爪の色が戻り始めたことを伝えると、イグナートはそうかと安心したように笑って、次回の訪問の約束をした。


 会わせたい人とは誰だろう、なんて思いながら、シャルロッテは最後の力を振り絞って、ラストのターンを決めた。



 シャルロッテが家族とのダンスを終えるまで、令嬢たちのダンスの誘いをひたすら拒否しながら待っていたオスカーは、妻が少し足元をふらつかせたのを見て、すかさず横抱きにかかえ上げた。


「ひゃっ!? オ、オスカーさま?」

「もう歩くのも辛いだろう」


 周囲の目が一気に集まるのも気にせず、あちこちで悲鳴が上がるのも意に介さず。

 オスカーはシャルロッテを抱えたまま、最後まで会場中の注目を集めた状態で会場を後にした。

 ケイヒル伯爵家も時を同じくして退出。下手に残って、人に囲まれても敵わない。



「・・・オスカー殿は女性嫌いではなかったっけ」


 馬車に乗り込んだ後、ジョナスが隣に座る妻にぽつりと尋ねた。


「確か、そう聞いてましたけどねぇ。ずいぶんと仲がよさそうに見えましたねぇ」


 頬に手を当て、おっとりと答えるラステルの横で、ランツもまた首を捻る。


「シャルの思い出作りにってオスカー殿に協力を仰いだけど、あれって何か育ちつつある? ような・・・?」

「確実に育ってるだろ・・・全く、もう障害は取っ払えたも同然だってのに、まだシャルは死んだふりをするつもりか」

「告白って勇気がいるからね。シャルが怖がるのも分からなくはないんだけど・・・難しいよね」


 頭をがしがしかきながら呆れ声で話すイグナートに、ランツがなだめるように言った。







 ―――ちなみにその夜会から1週間後。


 リベット第二王女の婚約が発表された。


 なんでもお忍びで夜会に出席していた隣国の公爵令息が、オスカーとシャルロッテに絡むリベットを見て、躾がい・・・があると大層気に入ったらしい。


 すぐにでも国に連れ帰りたいと言うほどの執心ぶりで、彼の帰国に合わせて同行する事が決まった。

 当初、国王夫妻はこの縁談に難色を示したが、隣国の公爵令息はあちらの国で王太子の側近として、主に外交を担当しており、リベットとの婚姻が叶うなら、と貿易上の優遇措置を提案した。


 それでも国王夫妻は渋ったが、その後2人が揃って体調を崩し、慌ただしく王太子に譲位の手続きがなされた。


 前国王夫妻は、離宮での静養が決定。

 病気故に、前国王夫妻が隣国のリベット王女の結婚式への参列する事も叶わず、祝福の声明を出して終わったのだった。





















感想 103

あなたにおすすめの小説

幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました

ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。 けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。 やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。 ――もう、この結婚には見切りをつけよう。 夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。 身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。 一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。 幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?