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姪っ子さん
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「カーン騎士団長の姪御殿・・・?」
予想していたというか、予想外というか。
思わずベルはまじまじと目の前のルナフレイアを見つめる。
「あら、伯父さまのことご存知? じゃあ、貴方も王城勤めなのかしら」
元の口調に戻すことにしたようで、また人懐こい笑みに変わる。
「ああ、よく知っているとも。成程、それであの見事な体捌きか」
「ふふ、疑いは晴れた?」
そう言ってベルフェルトの顔を覗き込む。
不審に思っていた事は気づいていたようだ。
「ああ、どうやら綺麗さっぱり晴れたようだな」
「良かった。なら、私にも手伝わせてくれない? 貴方のお仕事」
「残念ながらそれはお受け出来ないな」
「どうして? きっと役に立てると思うわ。多少危なくても、自分の身は自分で守れるし」
「それでも駄目だ」
「・・・理由は?」
「これは自警団レベルの話ではない。身元が確かとはいえ、一貴族令嬢に頼んでいいような仕事ではないのだ」
「そうねのね。残念」
もう少し粘るかと身構えていたが、ルナフレイアはあっさりと席を立った。
「じゃあ、これ以上お仕事の邪魔しちゃいけないから、私はもう行くわね。貴方と話せて楽しかったわ」
そう言って一度去ろうとしてから、「あ、そうだ」と立ち止まりこちらを振り返る。
その顔は悪戯っ子なように無邪気だ。
「先回と今回みたいに偶然トラブルに居合わせた時は、私が何か動いたとしても怒らないでよね?」
「・・・」
「じゃあね、ベルフェルト・エイモスさん。お仕事、頑張ってね」
そう言い残して、すたすたと去って行く後ろ姿をぽかんと眺めていた。
結局、監視対象者はその後も待ち合わせのテーブル席で話し込んでいたらしく、他の騒ぎに巻き込まれていたオレも、無事に仕事に戻れた訳だが。
「では、接触してきたのは、シャウヘッセ伯爵家の者だったという事で間違いないのだな」
長官室での報告に、リュークザインがやはりという表情で呟いた。
「ああ、顔も身元も確認済みだ。現れたのは伯爵の従者を長年勤めている男で、名をドルンという。母方の祖母がベイベル国出身で、その関係からかドルン本人もベイベル国の公用語は解せるらしい」
「・・,という事は、バリューガ語も?」
「書類上に記載されてはいないが、恐らく出来ると見ていいだろう。すぐ近くで会話を確認したハトからの報告によると、バリューガ語で会話していたらしいからな」
「その内容は?」
「声を潜めていたからね。途切れ途切れにしか聞き取れなかったようだぞ。ええと、報告書によれば・・・」
ベルフェルトはハトたちからの報告書から一枚を取り出す。
「シャガーン宮地下最奥、デサイファミス、王太子の結婚式の日取り、あと数字を言っていたらしいが、恐らくは報酬の金額だろう。そして・・・賢者くずれ、と」
ベルフェルトが書類を読み上げる声に、リュークザインは静かに耳を傾けていた。
「デサイファミスの名まで知っているとはな。どうやら領地に引きこもっているばかりのシャウヘッセの他に、誰か王都で動いている奴がいるようだ」
「そのようだな。恐らくはシャウヘッセもいいように使われているクチだろう。だが、リューク、これは思っていたよりも大事のようだぞ。お前が妹に見合いと称して護衛を押しつけたのも、あながち大仰な事ではなかったな」
「そうだな。シュリエラの事はあいつに頼るしかなさそうだ」
そこに扉が開いてラエラがお茶を乗せたトレイを持って入ってくる。
「お二人とも、少し休憩を取られたらいかがですか?」
「ああ、ありがとう。ラエラ」
それぞれの席の前にお茶を置きながら、ラエラは気遣わしげな視線をリュークに送った。
「ここのところずっと休みなしで働いていらっしゃるでしょう? このままではお体にさわりますわ」
「これでも、君が来てくれて随分と楽になったんだが」
本当の事なのに、ラエラの眼には疑いの色が浮かんだままだ。
「わたくし、嫌でございますよ? 結婚しないうちに未亡人になるなんて」
「おいおい、物騒な事を言うな」
「愛する婚約者を心配させたくないと思ってくださるのなら、どうか行動で示してくださいませ」
目をじっと見つめ、少し拗ねた口ぶりでそう諭されては、仕事人間のリュークもやれやれと降参するしかなくて。
「分かった。今日はこれで帰るとしよう」
そう言うと、やり取りを見ていたベルフェルトが、揶揄うように口を挟んだ。
「やれやれ。相変わらずの熱愛ぶりだな。恋人もいない寂しい男の惨めな気持ちを少しは思いやってくれてもいいだろうに」
「どの口でそれを言うんだ? 敢えて特別な存在を作らずにいる男が」
呆れ顔で答えるリュークを、ベルは両手を上げてハイハイ、と軽くいなす。
その様子はどこか楽しげで。リュークはそれが少し気になって。
それで聞いてみたのだ。
「なんだ、ベル。何かあったのか? 今日はいつもより機嫌がいいな」
その質問に、帰り支度をしていた手を止め、ベルはにやり、不敵な笑みを浮かべる。
「何かあったか、と問われればあったと答えるしかないだろうね。実は今日、街中を巡回していた時に、非常に面白いものを見かけてな」
「面白いもの、だと?」
怪訝な表情を浮かべるリュークに、ベルはくく、と肩を揺らす。
「ああ、そうだ。虎のように獰猛で、小鳥のように可愛らしい生きものに出会ったのだよ」
予想していたというか、予想外というか。
思わずベルはまじまじと目の前のルナフレイアを見つめる。
「あら、伯父さまのことご存知? じゃあ、貴方も王城勤めなのかしら」
元の口調に戻すことにしたようで、また人懐こい笑みに変わる。
「ああ、よく知っているとも。成程、それであの見事な体捌きか」
「ふふ、疑いは晴れた?」
そう言ってベルフェルトの顔を覗き込む。
不審に思っていた事は気づいていたようだ。
「ああ、どうやら綺麗さっぱり晴れたようだな」
「良かった。なら、私にも手伝わせてくれない? 貴方のお仕事」
「残念ながらそれはお受け出来ないな」
「どうして? きっと役に立てると思うわ。多少危なくても、自分の身は自分で守れるし」
「それでも駄目だ」
「・・・理由は?」
「これは自警団レベルの話ではない。身元が確かとはいえ、一貴族令嬢に頼んでいいような仕事ではないのだ」
「そうねのね。残念」
もう少し粘るかと身構えていたが、ルナフレイアはあっさりと席を立った。
「じゃあ、これ以上お仕事の邪魔しちゃいけないから、私はもう行くわね。貴方と話せて楽しかったわ」
そう言って一度去ろうとしてから、「あ、そうだ」と立ち止まりこちらを振り返る。
その顔は悪戯っ子なように無邪気だ。
「先回と今回みたいに偶然トラブルに居合わせた時は、私が何か動いたとしても怒らないでよね?」
「・・・」
「じゃあね、ベルフェルト・エイモスさん。お仕事、頑張ってね」
そう言い残して、すたすたと去って行く後ろ姿をぽかんと眺めていた。
結局、監視対象者はその後も待ち合わせのテーブル席で話し込んでいたらしく、他の騒ぎに巻き込まれていたオレも、無事に仕事に戻れた訳だが。
「では、接触してきたのは、シャウヘッセ伯爵家の者だったという事で間違いないのだな」
長官室での報告に、リュークザインがやはりという表情で呟いた。
「ああ、顔も身元も確認済みだ。現れたのは伯爵の従者を長年勤めている男で、名をドルンという。母方の祖母がベイベル国出身で、その関係からかドルン本人もベイベル国の公用語は解せるらしい」
「・・,という事は、バリューガ語も?」
「書類上に記載されてはいないが、恐らく出来ると見ていいだろう。すぐ近くで会話を確認したハトからの報告によると、バリューガ語で会話していたらしいからな」
「その内容は?」
「声を潜めていたからね。途切れ途切れにしか聞き取れなかったようだぞ。ええと、報告書によれば・・・」
ベルフェルトはハトたちからの報告書から一枚を取り出す。
「シャガーン宮地下最奥、デサイファミス、王太子の結婚式の日取り、あと数字を言っていたらしいが、恐らくは報酬の金額だろう。そして・・・賢者くずれ、と」
ベルフェルトが書類を読み上げる声に、リュークザインは静かに耳を傾けていた。
「デサイファミスの名まで知っているとはな。どうやら領地に引きこもっているばかりのシャウヘッセの他に、誰か王都で動いている奴がいるようだ」
「そのようだな。恐らくはシャウヘッセもいいように使われているクチだろう。だが、リューク、これは思っていたよりも大事のようだぞ。お前が妹に見合いと称して護衛を押しつけたのも、あながち大仰な事ではなかったな」
「そうだな。シュリエラの事はあいつに頼るしかなさそうだ」
そこに扉が開いてラエラがお茶を乗せたトレイを持って入ってくる。
「お二人とも、少し休憩を取られたらいかがですか?」
「ああ、ありがとう。ラエラ」
それぞれの席の前にお茶を置きながら、ラエラは気遣わしげな視線をリュークに送った。
「ここのところずっと休みなしで働いていらっしゃるでしょう? このままではお体にさわりますわ」
「これでも、君が来てくれて随分と楽になったんだが」
本当の事なのに、ラエラの眼には疑いの色が浮かんだままだ。
「わたくし、嫌でございますよ? 結婚しないうちに未亡人になるなんて」
「おいおい、物騒な事を言うな」
「愛する婚約者を心配させたくないと思ってくださるのなら、どうか行動で示してくださいませ」
目をじっと見つめ、少し拗ねた口ぶりでそう諭されては、仕事人間のリュークもやれやれと降参するしかなくて。
「分かった。今日はこれで帰るとしよう」
そう言うと、やり取りを見ていたベルフェルトが、揶揄うように口を挟んだ。
「やれやれ。相変わらずの熱愛ぶりだな。恋人もいない寂しい男の惨めな気持ちを少しは思いやってくれてもいいだろうに」
「どの口でそれを言うんだ? 敢えて特別な存在を作らずにいる男が」
呆れ顔で答えるリュークを、ベルは両手を上げてハイハイ、と軽くいなす。
その様子はどこか楽しげで。リュークはそれが少し気になって。
それで聞いてみたのだ。
「なんだ、ベル。何かあったのか? 今日はいつもより機嫌がいいな」
その質問に、帰り支度をしていた手を止め、ベルはにやり、不敵な笑みを浮かべる。
「何かあったか、と問われればあったと答えるしかないだろうね。実は今日、街中を巡回していた時に、非常に面白いものを見かけてな」
「面白いもの、だと?」
怪訝な表情を浮かべるリュークに、ベルはくく、と肩を揺らす。
「ああ、そうだ。虎のように獰猛で、小鳥のように可愛らしい生きものに出会ったのだよ」
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