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親父訪問
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ラエラが仕事場に戻った後も、ライナスバージは暫くその場に留まり何事かを考えていた。
そこに背後から声がかかる。
「お疲れ。今日は交代、早かったんだな」
「・・・アッテン」
見知った声に、ライナスはゆっくりと振り向いた。
「お疲れ。お前は今から休憩か?」
「ああ。今日は結構ゆとりがあるんだ。今から明日の朝まで何もない。・・・お前は?」
「オレは殿下の就寝時まで休憩。その後は明け方まで扉前で警護、かな」
話しながら肩をぐるぐると回し、固くなりかけた筋肉を軽くほぐす。
基本、同じ姿勢で立ちっぱなしの仕事だ。
交代時間になる頃には、結構な割合であちこちの筋肉が固くなる。
・・・まあ、任務中に体を駆使する事態になる方が問題なのだろうが。
「正直、前よりも警護体制は厳しくなって忙しくなったってのに、人員が補充されたせいか、今の方がやり易いよな。こうして休憩時間もマメに取れるし」
「へぇ? お前は休憩なんかない方が嬉しいのかと思ってたよ。仕事中の方がシュリエラ嬢と一緒にいられるもんな」
「・・・煩ぇ」
瞬時に顔を赤くするライバルの姿に、ライナスが揶揄うような視線を送る。
「怒るなよ。良かったじゃないか。まとまった休みが取りにくくなってんだ。仕事中にデート気分が味わえるなんて、そこらのカップルから羨ましがられてるぞ、きっと」
「いや、それはそうかもしれねぇけど。そう簡単にデート気分なんて味わえねぇよ。ていうか、人目が多くなればなるほど、よそよそしくなるだろ、あの子は。甘い雰囲気どころか、真面目に仕事しろって視線がバシバシ飛んでくんだよ」
いとも簡単に想像がついてしまう説明に、「成程な」と、ライナスもついつい笑ってしまう。
「まあ、でも、そのツンツンしてるとこが可愛いんだけどさ・・・」
「・・・アッテン。お前もすっかり自分の感情に素直になったな」
なんだかんだと意地を張って、一人で距離を置こうとしていた頃を思い出し、人は変わるもんなんだなぁ、などと感心して。
・・・あれ?
「まあな。今思うと、あんなバカな意地を張ったりしないで、さっさと自分の気持ちに素直になっときゃ良かったって思うよ」
「・・・」
「・・・ライナス?」
・・・あれ? なんか。
なんか、これ。
「ライナス? どうかしたか?」
「あ、いや・・・」
なんか、これ。ブーメラン来た。
「おい、ライナス?」
「悪い、ちょっと出てくる」
「え?」
「用事、思い出したから」
「・・・? ああ」
アッテンボローは、何となく不思議そうな顔をしていたけど、黙ってライナスを見送ることにしたようだ。
頭をぽりぼりと掻きながら、暫くその後ろ姿を眺めていたが、やがて騎士寮の方向へと足を向けた。
そしてライナスは。
彼が向かったのは、王城の執務棟。
回廊から執務棟に入ると、階段を上がり、最近は足が遠のきがちだった騎士団長の執務室をノックした。
扉前にいた警護騎士は、顔見知りの彼を不審に思う事なく無言のまま。
ライナスバージが凄腕の若き剣士として有名であることも理由の一つだが、今回は勿論それだけではない。
「・・・入れ」
扉向こうから聞こえてきたのは、低く、少し掠れた声。
ライナスは、入室を許可する声を受け、かちゃりと扉を開ける。
奥の執務机に座していた筋肉質の強面の男は、扉から現れたライナスバージの顔を見て、珍しいとばかりに軽く目を瞠った。
「・・・どうした。お前が執務室に来るなんて」
「ああ、うん。ちょっとね、話したい事があってさ」
普段とは少し違う空気を纏う息子の様子に、持っていたペンを手から離す。
そしてカーンは腕組みをして聞く体勢に入った。
「なんだ? 言ってみろ」
「えっと・・・その、アリスティシアのことなんだけど・・・」
「・・・ほう?」
これまでずっと避けてきた話題をライナス自ら持ち出したことにカーンは驚きを隠しもせず、訝しげに息子を見つめる。
いや、こうして話に来た自分が、ある意味一番信じられないんだけどね。
自分でも、格好つかないくらい逃げ回ってた自負はあるから。
そうだ、オレはこれまでずっと逃げていた。
強い、強い、アリスティシアから。
強くて、潔くて、誰にも弱みを見せようとしない、格好よすぎるアリスティシアから。
忘れることも出来ないくせに、見ないことでそのつもりになって。
だけど。
そうだよな、アッテン。
お前の言う通りだよ。
---今思うと、あんなバカな意地を張ったりしないで、さっさと自分の気持ちに素直になっときゃ良かったって思うよ---
やっとだ。
ホント、バカみたいだって。
周りに散々迷惑かけた挙句。
今になって、やっと分かったから。
そこに背後から声がかかる。
「お疲れ。今日は交代、早かったんだな」
「・・・アッテン」
見知った声に、ライナスはゆっくりと振り向いた。
「お疲れ。お前は今から休憩か?」
「ああ。今日は結構ゆとりがあるんだ。今から明日の朝まで何もない。・・・お前は?」
「オレは殿下の就寝時まで休憩。その後は明け方まで扉前で警護、かな」
話しながら肩をぐるぐると回し、固くなりかけた筋肉を軽くほぐす。
基本、同じ姿勢で立ちっぱなしの仕事だ。
交代時間になる頃には、結構な割合であちこちの筋肉が固くなる。
・・・まあ、任務中に体を駆使する事態になる方が問題なのだろうが。
「正直、前よりも警護体制は厳しくなって忙しくなったってのに、人員が補充されたせいか、今の方がやり易いよな。こうして休憩時間もマメに取れるし」
「へぇ? お前は休憩なんかない方が嬉しいのかと思ってたよ。仕事中の方がシュリエラ嬢と一緒にいられるもんな」
「・・・煩ぇ」
瞬時に顔を赤くするライバルの姿に、ライナスが揶揄うような視線を送る。
「怒るなよ。良かったじゃないか。まとまった休みが取りにくくなってんだ。仕事中にデート気分が味わえるなんて、そこらのカップルから羨ましがられてるぞ、きっと」
「いや、それはそうかもしれねぇけど。そう簡単にデート気分なんて味わえねぇよ。ていうか、人目が多くなればなるほど、よそよそしくなるだろ、あの子は。甘い雰囲気どころか、真面目に仕事しろって視線がバシバシ飛んでくんだよ」
いとも簡単に想像がついてしまう説明に、「成程な」と、ライナスもついつい笑ってしまう。
「まあ、でも、そのツンツンしてるとこが可愛いんだけどさ・・・」
「・・・アッテン。お前もすっかり自分の感情に素直になったな」
なんだかんだと意地を張って、一人で距離を置こうとしていた頃を思い出し、人は変わるもんなんだなぁ、などと感心して。
・・・あれ?
「まあな。今思うと、あんなバカな意地を張ったりしないで、さっさと自分の気持ちに素直になっときゃ良かったって思うよ」
「・・・」
「・・・ライナス?」
・・・あれ? なんか。
なんか、これ。
「ライナス? どうかしたか?」
「あ、いや・・・」
なんか、これ。ブーメラン来た。
「おい、ライナス?」
「悪い、ちょっと出てくる」
「え?」
「用事、思い出したから」
「・・・? ああ」
アッテンボローは、何となく不思議そうな顔をしていたけど、黙ってライナスを見送ることにしたようだ。
頭をぽりぼりと掻きながら、暫くその後ろ姿を眺めていたが、やがて騎士寮の方向へと足を向けた。
そしてライナスは。
彼が向かったのは、王城の執務棟。
回廊から執務棟に入ると、階段を上がり、最近は足が遠のきがちだった騎士団長の執務室をノックした。
扉前にいた警護騎士は、顔見知りの彼を不審に思う事なく無言のまま。
ライナスバージが凄腕の若き剣士として有名であることも理由の一つだが、今回は勿論それだけではない。
「・・・入れ」
扉向こうから聞こえてきたのは、低く、少し掠れた声。
ライナスは、入室を許可する声を受け、かちゃりと扉を開ける。
奥の執務机に座していた筋肉質の強面の男は、扉から現れたライナスバージの顔を見て、珍しいとばかりに軽く目を瞠った。
「・・・どうした。お前が執務室に来るなんて」
「ああ、うん。ちょっとね、話したい事があってさ」
普段とは少し違う空気を纏う息子の様子に、持っていたペンを手から離す。
そしてカーンは腕組みをして聞く体勢に入った。
「なんだ? 言ってみろ」
「えっと・・・その、アリスティシアのことなんだけど・・・」
「・・・ほう?」
これまでずっと避けてきた話題をライナス自ら持ち出したことにカーンは驚きを隠しもせず、訝しげに息子を見つめる。
いや、こうして話に来た自分が、ある意味一番信じられないんだけどね。
自分でも、格好つかないくらい逃げ回ってた自負はあるから。
そうだ、オレはこれまでずっと逃げていた。
強い、強い、アリスティシアから。
強くて、潔くて、誰にも弱みを見せようとしない、格好よすぎるアリスティシアから。
忘れることも出来ないくせに、見ないことでそのつもりになって。
だけど。
そうだよな、アッテン。
お前の言う通りだよ。
---今思うと、あんなバカな意地を張ったりしないで、さっさと自分の気持ちに素直になっときゃ良かったって思うよ---
やっとだ。
ホント、バカみたいだって。
周りに散々迷惑かけた挙句。
今になって、やっと分かったから。
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