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仲良し姉妹の内緒の話
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「それにしても、随分といろいろな事があったわねぇ・・・」
感慨深げにそう呟いたのは、ブライトン公爵家に嫁いだ姉のアリエラだ。
「貴女が帰り道の馬車に乗っている時に襲撃されたって聞いた時も驚いたけど、この間は夜会の最中に襲われそうになったのでしょう?」
その夜、愛娘が熱を出して夜会を欠席していたアリエラは、全て事が済んでから事態について知ることとなり、大層驚かせてしまったのだ。
「実際に暴漢たちと対峙して下さったのは私のフリをして捕まったルナフレイアさまですわ、お姉さま」
相変わらず妹に対しては心配性な姉の姿に、カトリアナは懐かしさも相まって思わず苦笑した。
「その前に変装してルナフレイアさまと入れ替わったと聞いてるわ。前もって予想していた事とはいえ、貴女もよくその計画に乗ったわね?」
今日は、カトリアナがマスカルバーノ家で過ごす最後の日。
明日には王家に嫁ぐカトリアナのために、今夜は家族だけの晩餐が開かれた。
それに出席するため、アリエラは夫に頼んで実家にお泊まりすることになって。
そして今、仲良し姉妹はひとつのベッドに潜り込み、仲良くお喋りを楽しんでいる。
「お姉さまが私に諭して下さったじゃないですか。王太子であるレオンさまの隣に立つ覚悟をしろ、と」
ブランケットに包まりながら、カトリアナは悪戯っぽく笑う。
「だから頑張れたのです。お姉さまのお陰ですよ」
その笑顔に一瞬見惚れ、アリエラは呆けた表情を浮かべた。
「・・・強くなったのね、本当に」
そう呟きながら、そっと手を愛する妹へと伸ばす。
頬を撫でながら、ふと思いついたように悪戯っぽく笑うと、ぐいっと体を寄せた。
「・・・ねえ、せっかくこうして二人きりで眠れるんですもの。ずっと聞きたかったことがあったのだけど、聞いてもいい?」
「・・・? はい、勿論ですわ、お姉さま。こんな風に過ごすことも、きっともう最後かもしれません。何なりとお聞きください」
「そう? ・・・じゃあね、カトリアナ、貴女・・・」
寝室で二人きり。
他に誰がいるという訳でもないのに、アリエラは声を潜めた。
「どんな時に、殿下に愛されてるって実感する?」
「・・・お、お姉さま?」
予想外の質問に、カトリアナが思わず焦った声を上げると、アリエラは悪戯が成功した子どものようにくすくすと笑う。
「いいじゃないの、教えてちょうだいな。ずっと聞きたかったのよ。ほら、貴女も私も片思いの期間はかなり長かったけど、想いが通じ合ってからはそれ程の時間はなかったでしょう?」
そう言ってじっと妹の目を見つめる。
「だからわたくし達って、好きなお方を遠くから見ていてどこが素敵、とか、こんな仕草にきゅんときた、とか、そういう話は沢山していたけれど、こんな風に愛されて幸せだっていう話は一回もしたことがないなって思っていたの」
「お姉さま・・・」
「だから、ね? 明日には王家に嫁いで遠い存在になってしまう私の可愛い妹と、ちょっとだけ二人だけの秘密の話をしたいの」
顔の前で両手を合わせ、お願い、と言われれば、カトリアナも頷くしかない。
「・・・絶対に、他の人には内緒ですよ?」
もじもじしながらカトリアナは口を開く。
「ひ、膝枕をして・・・」
黙ったまま、アリエラがうんうんと頷く。
「とても気持ちよさそうに眠っておられるその寝顔を見るのが・・・好きです」
「まぁ、カトリアナったら」
アリエラは少し困ったように微笑んだ。
「とてもカトリアナらしいとは思うけれど、それは殿下に愛されている、というよりも殿下を愛しているのではなくて?」
「あ・・・え、と。そうですね。えと、じゃあ、それで・・・」
「ふふ、なぁに?」
先を促すと、カトリアナは恥ずかしいのかブランケットで顔をすっぽりと覆ってしまう。
「それで、殿下が私の膝の上でお目覚めになると・・・とても嬉しそうに微笑まれるんです。目が覚めて、まず君が視界に映るなんて最高に幸せだって、そう仰って・・・」
最後の方は尻つぼみになって、もにょもにょとしか聞こえない。
「ふふ、そうなの。素敵だわ。本当に、殿下は貴女のことを愛して下さっているのね」
被ったブランケットはそのままに、アリエラは手を伸ばして、その上からぽんぽんと頭を撫でた。
「ねぇ、カトリアナ。私のアイシー・・・アイスケルヒさまはね、とても素晴らしい夫なの」
頭を撫でていた手をそっと放すと、アリエラは枕をぎゅっと抱きしめた。
「アイシーは、記念日とか誕生日とかを忘れない人だけどね、普段の何気ない日常で、別に特別でも何でもない小さな幸せを、雪のようにどんどん重ねていってくれるの」
なんだか抽象的な言い方でごめんね、とアリエラは笑う。
「眼差しひとつ、肩に置かれた手の温もり、歩いている時に黙って繋いでくれた手、そんなちょっとした行動のひとつひとつで感じるの。アイシーに愛されてるなぁって。それで胸の辺りがじんわり温かくなるのよ」
とても穏やかな笑みを浮かべて、でも少し照れ臭そうで。
「恋人同士だったときは、どちらかと言うと何をするのも劇的で、刺激があって、勿論とても素敵な時間だったわ。もう一度恋人同士に戻ってみたいって思う時も、やっぱりあるし」
夫婦と恋人は違うから、とアリエラは笑う。
「結婚生活は、小さな幸せが少しずつ重なっていく感じかしら。さっき貴女が聞かせてくれた膝枕の話みたいにね」
「お姉さま・・・」
「貴女も、そんな幸せを積み重ねていくのね」
そう言って、アリエラは慈愛に満ちた眼差しを愛する妹に注いだ。
「どうか幸せになってね。私の大好きなカトリアナ。約束よ?」
感慨深げにそう呟いたのは、ブライトン公爵家に嫁いだ姉のアリエラだ。
「貴女が帰り道の馬車に乗っている時に襲撃されたって聞いた時も驚いたけど、この間は夜会の最中に襲われそうになったのでしょう?」
その夜、愛娘が熱を出して夜会を欠席していたアリエラは、全て事が済んでから事態について知ることとなり、大層驚かせてしまったのだ。
「実際に暴漢たちと対峙して下さったのは私のフリをして捕まったルナフレイアさまですわ、お姉さま」
相変わらず妹に対しては心配性な姉の姿に、カトリアナは懐かしさも相まって思わず苦笑した。
「その前に変装してルナフレイアさまと入れ替わったと聞いてるわ。前もって予想していた事とはいえ、貴女もよくその計画に乗ったわね?」
今日は、カトリアナがマスカルバーノ家で過ごす最後の日。
明日には王家に嫁ぐカトリアナのために、今夜は家族だけの晩餐が開かれた。
それに出席するため、アリエラは夫に頼んで実家にお泊まりすることになって。
そして今、仲良し姉妹はひとつのベッドに潜り込み、仲良くお喋りを楽しんでいる。
「お姉さまが私に諭して下さったじゃないですか。王太子であるレオンさまの隣に立つ覚悟をしろ、と」
ブランケットに包まりながら、カトリアナは悪戯っぽく笑う。
「だから頑張れたのです。お姉さまのお陰ですよ」
その笑顔に一瞬見惚れ、アリエラは呆けた表情を浮かべた。
「・・・強くなったのね、本当に」
そう呟きながら、そっと手を愛する妹へと伸ばす。
頬を撫でながら、ふと思いついたように悪戯っぽく笑うと、ぐいっと体を寄せた。
「・・・ねえ、せっかくこうして二人きりで眠れるんですもの。ずっと聞きたかったことがあったのだけど、聞いてもいい?」
「・・・? はい、勿論ですわ、お姉さま。こんな風に過ごすことも、きっともう最後かもしれません。何なりとお聞きください」
「そう? ・・・じゃあね、カトリアナ、貴女・・・」
寝室で二人きり。
他に誰がいるという訳でもないのに、アリエラは声を潜めた。
「どんな時に、殿下に愛されてるって実感する?」
「・・・お、お姉さま?」
予想外の質問に、カトリアナが思わず焦った声を上げると、アリエラは悪戯が成功した子どものようにくすくすと笑う。
「いいじゃないの、教えてちょうだいな。ずっと聞きたかったのよ。ほら、貴女も私も片思いの期間はかなり長かったけど、想いが通じ合ってからはそれ程の時間はなかったでしょう?」
そう言ってじっと妹の目を見つめる。
「だからわたくし達って、好きなお方を遠くから見ていてどこが素敵、とか、こんな仕草にきゅんときた、とか、そういう話は沢山していたけれど、こんな風に愛されて幸せだっていう話は一回もしたことがないなって思っていたの」
「お姉さま・・・」
「だから、ね? 明日には王家に嫁いで遠い存在になってしまう私の可愛い妹と、ちょっとだけ二人だけの秘密の話をしたいの」
顔の前で両手を合わせ、お願い、と言われれば、カトリアナも頷くしかない。
「・・・絶対に、他の人には内緒ですよ?」
もじもじしながらカトリアナは口を開く。
「ひ、膝枕をして・・・」
黙ったまま、アリエラがうんうんと頷く。
「とても気持ちよさそうに眠っておられるその寝顔を見るのが・・・好きです」
「まぁ、カトリアナったら」
アリエラは少し困ったように微笑んだ。
「とてもカトリアナらしいとは思うけれど、それは殿下に愛されている、というよりも殿下を愛しているのではなくて?」
「あ・・・え、と。そうですね。えと、じゃあ、それで・・・」
「ふふ、なぁに?」
先を促すと、カトリアナは恥ずかしいのかブランケットで顔をすっぽりと覆ってしまう。
「それで、殿下が私の膝の上でお目覚めになると・・・とても嬉しそうに微笑まれるんです。目が覚めて、まず君が視界に映るなんて最高に幸せだって、そう仰って・・・」
最後の方は尻つぼみになって、もにょもにょとしか聞こえない。
「ふふ、そうなの。素敵だわ。本当に、殿下は貴女のことを愛して下さっているのね」
被ったブランケットはそのままに、アリエラは手を伸ばして、その上からぽんぽんと頭を撫でた。
「ねぇ、カトリアナ。私のアイシー・・・アイスケルヒさまはね、とても素晴らしい夫なの」
頭を撫でていた手をそっと放すと、アリエラは枕をぎゅっと抱きしめた。
「アイシーは、記念日とか誕生日とかを忘れない人だけどね、普段の何気ない日常で、別に特別でも何でもない小さな幸せを、雪のようにどんどん重ねていってくれるの」
なんだか抽象的な言い方でごめんね、とアリエラは笑う。
「眼差しひとつ、肩に置かれた手の温もり、歩いている時に黙って繋いでくれた手、そんなちょっとした行動のひとつひとつで感じるの。アイシーに愛されてるなぁって。それで胸の辺りがじんわり温かくなるのよ」
とても穏やかな笑みを浮かべて、でも少し照れ臭そうで。
「恋人同士だったときは、どちらかと言うと何をするのも劇的で、刺激があって、勿論とても素敵な時間だったわ。もう一度恋人同士に戻ってみたいって思う時も、やっぱりあるし」
夫婦と恋人は違うから、とアリエラは笑う。
「結婚生活は、小さな幸せが少しずつ重なっていく感じかしら。さっき貴女が聞かせてくれた膝枕の話みたいにね」
「お姉さま・・・」
「貴女も、そんな幸せを積み重ねていくのね」
そう言って、アリエラは慈愛に満ちた眼差しを愛する妹に注いだ。
「どうか幸せになってね。私の大好きなカトリアナ。約束よ?」
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