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第7章 瑛太3
第92話 助けたくても
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トイレ休憩なんかも適当にすませて再び荷馬車に乗りこんだ。
荷馬車に揺られながら尾市さんと椎名さんが石倉さんと話をしていた。
「麻美ちゃんも多分来てると思う。助け出せないかな。」
「まみちゃん‥て‥‥。」
「越前麻美ちゃんだよ。」
「ああ‥‥合唱部の。」
「放送部だよ。」
「ああ、そういえば朝礼で見た事あったかも‥‥。」
石倉さんが召還されたときに近くにいたはずだという誰かの話をしているようだった。
「助け出すって言ったって、どこにいるか分からないだろ。」
「神殿にいるかも。見に行くだけでも行けない?」
「いや,俺達神殿から逃げて来たんだからね。それも何日もかけて。」
尾市さんと椎名さんは石倉さんの要望に応じる事ができなくて困った顔をしている。石倉さんは聞き入れてもらえず今にも泣きそうな様子だ。
尾市さんが助けを求めるように周囲を見回した。
緒方さんと真希さんが三人に向かって移動して行く。荷馬車の上なので座った姿勢のままの移動だ。
真希さんが石倉さんの傍に両膝を付いて顔を覗き込み話しかけた。
「あなたの気持ちはわかるわ。でもね。考えてみて。今、神殿に戻ったら全員捕まってしまうと思うの。」
「だけど‥‥。」
「誰かを助けに行くとしても、力や知識を付けてからだと思うわ。今の私達ってこの世界の事ほとんど何も知らないのよ。
字だって最近覚えはじめたばかりだし。腕力もない。お金もない。逃げるルートだって知らない。」
「でも‥‥、今こうやって隣の国に向かって行ってるのに‥‥。」
「ライアンさんが協力してくれているからよ。でもライアンさんに、戻って他の人も助けて何てお願いできないわ。」
「‥‥そんな‥‥。」
石倉さんが少し睨むように真希さんを見た後、ギュッと唇を噛んで俯き、肩を震わせた。泣き出してしまったようだ。
助けたいと思っている人物は石倉さんにとって大事な友達なんだろうな。
もしも藍ちゃんが捕まってたら? うん、俺だって助けに行きたいって思う。
周囲に協力を求められそうな人がいたら頼んでみるし、だめなら自分一人で助けに行こうとするだろう。
今は藍ちゃんも無事だし、自分も多少余裕が有って落ち着いているからわかるけど、
一人で行って助け出す程の実力は今の俺にはないと思う。
皆もそうだ。そうじゃなかったら今逃げてないよ。
でこぼことした道を進む荷馬車のガタゴトという音と石倉さんのすすり泣く声をききながら
重苦しい空気を感じていた。
日暮れの直前にギリギリ街に辿り着いた。
街の門番の所で、作ったばかりの身分証を見せる。石倉さんだけはまだ持っていなかったけど、俺達が身分証を持っているから同行者として追加料金なく入れた。
この街にも狩猟ギルドがあるみたいなので、後で作れるだろう。
宿は一軒目は空きがなく、二軒目で四人部屋が3部屋ちょうど空いていたのでそこに決まった。
俺はいつもと同じように尾市さんと椎名さんと同部屋。部屋に入ってみて窓を開ける。
どれでもいいけど一応最初に各自のベッドを決めておくことにした。
荷馬車に揺られながら尾市さんと椎名さんが石倉さんと話をしていた。
「麻美ちゃんも多分来てると思う。助け出せないかな。」
「まみちゃん‥て‥‥。」
「越前麻美ちゃんだよ。」
「ああ‥‥合唱部の。」
「放送部だよ。」
「ああ、そういえば朝礼で見た事あったかも‥‥。」
石倉さんが召還されたときに近くにいたはずだという誰かの話をしているようだった。
「助け出すって言ったって、どこにいるか分からないだろ。」
「神殿にいるかも。見に行くだけでも行けない?」
「いや,俺達神殿から逃げて来たんだからね。それも何日もかけて。」
尾市さんと椎名さんは石倉さんの要望に応じる事ができなくて困った顔をしている。石倉さんは聞き入れてもらえず今にも泣きそうな様子だ。
尾市さんが助けを求めるように周囲を見回した。
緒方さんと真希さんが三人に向かって移動して行く。荷馬車の上なので座った姿勢のままの移動だ。
真希さんが石倉さんの傍に両膝を付いて顔を覗き込み話しかけた。
「あなたの気持ちはわかるわ。でもね。考えてみて。今、神殿に戻ったら全員捕まってしまうと思うの。」
「だけど‥‥。」
「誰かを助けに行くとしても、力や知識を付けてからだと思うわ。今の私達ってこの世界の事ほとんど何も知らないのよ。
字だって最近覚えはじめたばかりだし。腕力もない。お金もない。逃げるルートだって知らない。」
「でも‥‥、今こうやって隣の国に向かって行ってるのに‥‥。」
「ライアンさんが協力してくれているからよ。でもライアンさんに、戻って他の人も助けて何てお願いできないわ。」
「‥‥そんな‥‥。」
石倉さんが少し睨むように真希さんを見た後、ギュッと唇を噛んで俯き、肩を震わせた。泣き出してしまったようだ。
助けたいと思っている人物は石倉さんにとって大事な友達なんだろうな。
もしも藍ちゃんが捕まってたら? うん、俺だって助けに行きたいって思う。
周囲に協力を求められそうな人がいたら頼んでみるし、だめなら自分一人で助けに行こうとするだろう。
今は藍ちゃんも無事だし、自分も多少余裕が有って落ち着いているからわかるけど、
一人で行って助け出す程の実力は今の俺にはないと思う。
皆もそうだ。そうじゃなかったら今逃げてないよ。
でこぼことした道を進む荷馬車のガタゴトという音と石倉さんのすすり泣く声をききながら
重苦しい空気を感じていた。
日暮れの直前にギリギリ街に辿り着いた。
街の門番の所で、作ったばかりの身分証を見せる。石倉さんだけはまだ持っていなかったけど、俺達が身分証を持っているから同行者として追加料金なく入れた。
この街にも狩猟ギルドがあるみたいなので、後で作れるだろう。
宿は一軒目は空きがなく、二軒目で四人部屋が3部屋ちょうど空いていたのでそこに決まった。
俺はいつもと同じように尾市さんと椎名さんと同部屋。部屋に入ってみて窓を開ける。
どれでもいいけど一応最初に各自のベッドを決めておくことにした。
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