276 / 334
第2章
第276話 家族の写し絵を飾りたい
しおりを挟む
魔道具に魔力を通してから、時間を置いてから写すことができた魔法紙の結果を兄上が覗き込んだ。
「……もう出来たのか?」
「六秒くらいの時間差になったよ」
「音とかしないから、いつ発動したのかわからなかったけど、上手く行ったみたいだな」
「音?」
「いや……、今は改良とかしなくて良いから」
時間差で発動した場合に、いつのタイミングで起動するか分かりにくいから音とかで知らせたほうが良いってことみたいだ。
確かに、魔法陣が浮かび上がった時にはもう写ってしまっているし、起動するぞってタイミングがわかった方が良さそうだ。音でお知らせするのは良いね!
改良した方が良さそうだけど、兄上は今やらなくても良いって言うし、六秒なら身構えていられるってことで、何枚か家族全員揃った写し絵を作ってみた。
最初の写し絵は僕が口を開けた状態で写ってしまっていたので、
皆、口を閉じて無言でじっとしているというのは側から見たら妙な光景かもしれない。
何秒も我慢した結果、良い感じの写し絵が出来た。
家族全員が写っている絵を見るのってなんだか嬉しい。
「……額に入れて飾っておきたいけれど、今は他人に見せるわけにはいかないわね……」
家族が写っている写し絵を眺めながら母様が残念そうに言う。メイリが不満気に眉を下げた。
「ええー?いつでも眺められるところに飾っておけたら良いのに」
「この魔道具が公表できる状態にならないと、難しいわよ。見た方が『どうしたんだ?』って思うでしょう?」
「本館でなく離れなら大丈夫じゃない?」
メイリは納得できない様子で小さい口を歪めている。
兄上が顎に手を当て、壁にかけられているカレンダーに目を向けた。
「シャルおじさんが来たら、この魔道具も見せるんでしょ。その時相談したら?
『販売予定だから試しに写した物だ』って話にできれば飾れるんじゃない?
……シャル叔父さんの到着は明後日くらい?」
「そうね。もう国内には戻ってきているそうよ。……メイリ、シャル叔父さんが来てから相談しましょ」
母様はそう言って微笑むとメイリの髪をそっと撫でた。メイリは仕方ないなという様子で頷いた。
「シャル叔父さんは外国に居たの?どこにいるか分かるの?」
「あちこち回っていたそうよ。ペオニア国内に入ってから商業ギルド経由で連絡をくれたの」
「魔鷹便!」
「そうよ」
シャル叔父さんに手紙を出したって話は聞いていたんだけど、その後どうなったのかをちゃんと聞いていなかった。
どうやら、移動して大きな街に入ったところで商業ギルドから手紙を送ってくれているらしい。
「こちらからも連絡できるの?」
「あらかじめ経由する街の商業ギルドに伝言を頼んでおくことは出来るわよ。
辺境伯領に入ったようだから、もうこちらからは連絡しないけど」
「アンソラ男爵領の商業ギルドには伝言を頼まないってこと?」
ゲンティアナ男爵領とナスタチウム辺境伯領の間にはアンソラ男爵領がある。
隣国との国境からナスタチウム辺境伯領に入って最初の街に伝言を預けていたらしいのだけど、その後は伝言しないのか、ちょっと不思議に思って訊いてみた。
「特別な用事がなければ、通りやすい道を使って来てもらった方が早いわ」
商業ギルドに伝言を預けるなら、指定した街を通ってもらわないといけない。
遠回りになる場合だってあるから最小限の連絡しかしないんだって。
「お話」の魔道具とか「手紙」の魔道具があれば、連絡しやすそうだけど、国の外まで繋がるかはわからない。
「手紙」の魔道具をシャル叔父さんの商会で採用してもらえなくても、
国外に出てどこまで繋がるか試すのはお願い出来ないかな。
「……もう出来たのか?」
「六秒くらいの時間差になったよ」
「音とかしないから、いつ発動したのかわからなかったけど、上手く行ったみたいだな」
「音?」
「いや……、今は改良とかしなくて良いから」
時間差で発動した場合に、いつのタイミングで起動するか分かりにくいから音とかで知らせたほうが良いってことみたいだ。
確かに、魔法陣が浮かび上がった時にはもう写ってしまっているし、起動するぞってタイミングがわかった方が良さそうだ。音でお知らせするのは良いね!
改良した方が良さそうだけど、兄上は今やらなくても良いって言うし、六秒なら身構えていられるってことで、何枚か家族全員揃った写し絵を作ってみた。
最初の写し絵は僕が口を開けた状態で写ってしまっていたので、
皆、口を閉じて無言でじっとしているというのは側から見たら妙な光景かもしれない。
何秒も我慢した結果、良い感じの写し絵が出来た。
家族全員が写っている絵を見るのってなんだか嬉しい。
「……額に入れて飾っておきたいけれど、今は他人に見せるわけにはいかないわね……」
家族が写っている写し絵を眺めながら母様が残念そうに言う。メイリが不満気に眉を下げた。
「ええー?いつでも眺められるところに飾っておけたら良いのに」
「この魔道具が公表できる状態にならないと、難しいわよ。見た方が『どうしたんだ?』って思うでしょう?」
「本館でなく離れなら大丈夫じゃない?」
メイリは納得できない様子で小さい口を歪めている。
兄上が顎に手を当て、壁にかけられているカレンダーに目を向けた。
「シャルおじさんが来たら、この魔道具も見せるんでしょ。その時相談したら?
『販売予定だから試しに写した物だ』って話にできれば飾れるんじゃない?
……シャル叔父さんの到着は明後日くらい?」
「そうね。もう国内には戻ってきているそうよ。……メイリ、シャル叔父さんが来てから相談しましょ」
母様はそう言って微笑むとメイリの髪をそっと撫でた。メイリは仕方ないなという様子で頷いた。
「シャル叔父さんは外国に居たの?どこにいるか分かるの?」
「あちこち回っていたそうよ。ペオニア国内に入ってから商業ギルド経由で連絡をくれたの」
「魔鷹便!」
「そうよ」
シャル叔父さんに手紙を出したって話は聞いていたんだけど、その後どうなったのかをちゃんと聞いていなかった。
どうやら、移動して大きな街に入ったところで商業ギルドから手紙を送ってくれているらしい。
「こちらからも連絡できるの?」
「あらかじめ経由する街の商業ギルドに伝言を頼んでおくことは出来るわよ。
辺境伯領に入ったようだから、もうこちらからは連絡しないけど」
「アンソラ男爵領の商業ギルドには伝言を頼まないってこと?」
ゲンティアナ男爵領とナスタチウム辺境伯領の間にはアンソラ男爵領がある。
隣国との国境からナスタチウム辺境伯領に入って最初の街に伝言を預けていたらしいのだけど、その後は伝言しないのか、ちょっと不思議に思って訊いてみた。
「特別な用事がなければ、通りやすい道を使って来てもらった方が早いわ」
商業ギルドに伝言を預けるなら、指定した街を通ってもらわないといけない。
遠回りになる場合だってあるから最小限の連絡しかしないんだって。
「お話」の魔道具とか「手紙」の魔道具があれば、連絡しやすそうだけど、国の外まで繋がるかはわからない。
「手紙」の魔道具をシャル叔父さんの商会で採用してもらえなくても、
国外に出てどこまで繋がるか試すのはお願い出来ないかな。
274
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる