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第2章
第295話 魔道具は検証が必要
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僕は兄上に毒鑑定の魔法陣魔石について説明をした。
「毒があると点滅するんだけど、それ以外に『毒あり』って目の前に文字が浮かぶんだ。
他の人が使っても文字が浮かぶのか見てほしいんだ」
「……また、次から次へと人が欲しがりそうなものを……」
「川から汲んだ水に毒が混じっているか確認するとか、役に立ちそうだと思ったんだけど」
「役に立つから、皆が欲しがるんだよ。で、これを持って毒を見れば良いのか?」
兄上は早速毒鑑定玉を手にしてくれた。キョロキョロと首を動かして判定する対象を探している。
「あ、じゃあ、毒の入っているのと入っていないのを混ぜこぜにしてみるね」
僕は口に入れたら毒の絵の具と、似たような色の毒が入っていない絵の具を、さらに他の色を混ぜたりして、色々な色を作って、絵の具用の小皿に入れて並べた。一応番号を振っておいて、どの番号が毒入りなのかは、板に書いて伏せておく。
小皿を八個並べていて、「一」と「六」が毒入りだ。
兄上は掌に乗せた乳白色の魔石をじっと見つめた。
「……魔法陣に魔力を通すんだよな……」
「握っちゃって魔力を通せば良いと思うよ。さあ!どれが毒でしょー!」
乳白色の魔石は小さい。小指の先くらいの大きさだから、刻まれている魔法陣を探して魔力を通すのは結構難しい。しかも雷魔石で魔法陣を転写しているから表面が削られているわけじゃないので魔法陣の位置が分かりづらいんだ。
「こう……か。お、光った」
ポウッとぼんやりと兄上の手の中の魔石が光を帯びた。
「点滅していないのは『毒なし』ってことだよ。何か頭の中に浮かんだ?」
「いや。特に何も浮かばなかったぞ。次は……、お、点滅した」
「おお!毒の反応が出たやつの番号をメモしておいてね」
「おう」
兄上は八個の小皿全部を試してくれた。試す時は、対象の小皿を他の小皿から離れた場所に置いて、魔石を持った手を近づけていた。
一通り、試した後に兄上がメモ書きを僕に見せながら言う。
「一と六だ」
「正解!」
パチパチと手を叩く。僕が番号を控えておいた板を兄上に見せた。
兄上が神妙な顔をして頷いた。
「……殿下に必要そうな魔道具だな」
「そうだね。送ってあげようか?」
「誰が作ったかバレバレなのはダメだぞ!」
兄上が眉間に皺を寄せて、僕を叱るように睨んだ。
わかってる。でも、殿下が毒鑑定魔道具を持っていたら安心だろうな、とは思ってしまう。
「……何か良い方法ないかな……」
僕が尋ねると、兄上は掌の上でコロコロと乳白色の魔法陣魔石を転がしながら口を開いた。
「今のところは、捕まったりした奴がいて警戒しているだろうし、毒耐性水もあるから、全く無防備ってわけでもないだろ。
そもそもこれは、川の水に毒が混ざっているか分かるようにするために作ったんだろ。
川の水の毒判定で、あちこちで使われるようになれば、そのうち殿下の手にも渡るんじゃないか?」
「そうだね!じゃあ、川のあるところに配れば……!」
「まあ、落ち着け。毒鑑定の検証なら、薬師のばあちゃんのところでもっと細かく検証した方が良いだろ。
薄めたらどのくらいまで反応するかとか。反応しない毒はあるか、とか」
「反応しない毒……?」
「たとえば、お酒が強い人にはお酒は何ともないけど、お酒が弱い人には毒みたいなものじゃないか?
アレルギー……、魚を食べるとブツブツが出る人とか、人によって反応が違うものはどうなるのかな」
「どうだろう……?」
言われてみれば、どうなるかよく分からない。魔道具を使う人にとって「毒」だったら反応しちゃうかな。
それだと、「毒だ!」ってなって、それを提供した人が犯人みたいにされてしまった後で実はお魚が食べられないだけでした!なんてことが起きちゃうのかな!
わぁ……。
「……分からないね……」
「そうだろ?まずは母上に相談してからだけど、細かい確認は必要になるよ」
「うん」
毒鑑定の魔道具ができた!って思ったけど、沢山確認しないといけない事がわかった。
川の毒を確認するのに使ってもらうにはまだ時間がかかりそうだ。
「毒があると点滅するんだけど、それ以外に『毒あり』って目の前に文字が浮かぶんだ。
他の人が使っても文字が浮かぶのか見てほしいんだ」
「……また、次から次へと人が欲しがりそうなものを……」
「川から汲んだ水に毒が混じっているか確認するとか、役に立ちそうだと思ったんだけど」
「役に立つから、皆が欲しがるんだよ。で、これを持って毒を見れば良いのか?」
兄上は早速毒鑑定玉を手にしてくれた。キョロキョロと首を動かして判定する対象を探している。
「あ、じゃあ、毒の入っているのと入っていないのを混ぜこぜにしてみるね」
僕は口に入れたら毒の絵の具と、似たような色の毒が入っていない絵の具を、さらに他の色を混ぜたりして、色々な色を作って、絵の具用の小皿に入れて並べた。一応番号を振っておいて、どの番号が毒入りなのかは、板に書いて伏せておく。
小皿を八個並べていて、「一」と「六」が毒入りだ。
兄上は掌に乗せた乳白色の魔石をじっと見つめた。
「……魔法陣に魔力を通すんだよな……」
「握っちゃって魔力を通せば良いと思うよ。さあ!どれが毒でしょー!」
乳白色の魔石は小さい。小指の先くらいの大きさだから、刻まれている魔法陣を探して魔力を通すのは結構難しい。しかも雷魔石で魔法陣を転写しているから表面が削られているわけじゃないので魔法陣の位置が分かりづらいんだ。
「こう……か。お、光った」
ポウッとぼんやりと兄上の手の中の魔石が光を帯びた。
「点滅していないのは『毒なし』ってことだよ。何か頭の中に浮かんだ?」
「いや。特に何も浮かばなかったぞ。次は……、お、点滅した」
「おお!毒の反応が出たやつの番号をメモしておいてね」
「おう」
兄上は八個の小皿全部を試してくれた。試す時は、対象の小皿を他の小皿から離れた場所に置いて、魔石を持った手を近づけていた。
一通り、試した後に兄上がメモ書きを僕に見せながら言う。
「一と六だ」
「正解!」
パチパチと手を叩く。僕が番号を控えておいた板を兄上に見せた。
兄上が神妙な顔をして頷いた。
「……殿下に必要そうな魔道具だな」
「そうだね。送ってあげようか?」
「誰が作ったかバレバレなのはダメだぞ!」
兄上が眉間に皺を寄せて、僕を叱るように睨んだ。
わかってる。でも、殿下が毒鑑定魔道具を持っていたら安心だろうな、とは思ってしまう。
「……何か良い方法ないかな……」
僕が尋ねると、兄上は掌の上でコロコロと乳白色の魔法陣魔石を転がしながら口を開いた。
「今のところは、捕まったりした奴がいて警戒しているだろうし、毒耐性水もあるから、全く無防備ってわけでもないだろ。
そもそもこれは、川の水に毒が混ざっているか分かるようにするために作ったんだろ。
川の水の毒判定で、あちこちで使われるようになれば、そのうち殿下の手にも渡るんじゃないか?」
「そうだね!じゃあ、川のあるところに配れば……!」
「まあ、落ち着け。毒鑑定の検証なら、薬師のばあちゃんのところでもっと細かく検証した方が良いだろ。
薄めたらどのくらいまで反応するかとか。反応しない毒はあるか、とか」
「反応しない毒……?」
「たとえば、お酒が強い人にはお酒は何ともないけど、お酒が弱い人には毒みたいなものじゃないか?
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「どうだろう……?」
言われてみれば、どうなるかよく分からない。魔道具を使う人にとって「毒」だったら反応しちゃうかな。
それだと、「毒だ!」ってなって、それを提供した人が犯人みたいにされてしまった後で実はお魚が食べられないだけでした!なんてことが起きちゃうのかな!
わぁ……。
「……分からないね……」
「そうだろ?まずは母上に相談してからだけど、細かい確認は必要になるよ」
「うん」
毒鑑定の魔道具ができた!って思ったけど、沢山確認しないといけない事がわかった。
川の毒を確認するのに使ってもらうにはまだ時間がかかりそうだ。
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