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第2章
第327話 気になる魔獣
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黒ローブたちのことはお父様に任せることにして、少し落ち着いたけど、まだ少し不安な感じがする。朝に兄上とボブと一緒に泉に行って、泉の水を汲んだり、毒耐性の魔石を持っている魔獣を倒したりするのが、ほぼ日課みたいになっているんだけど、他にも黒ローブがいて毒を撒いているかもしれないとか、呪いの毒を作ろうとしているのかもとか考えると、毒耐性の魔石や泉の水が十分にあるのか心配になっちゃうんだ。
「……足りるかなぁ」
いつもより少し多めに瓶を持って泉の水をたくさん汲んではいるけど、川に流れている水を全部解毒できるのかは分からないよね。
最後の瓶を泉の水で満たしてから、呟くように言ってしまう。
「足りなきゃまた汲みにくれば良いさ」
兄上は、不安に思っていないのか、なんでもなさそうに言いながら、魔獣の遺骸に泉の水をたっぷりとかけた。
「川に毒が広がっているって知らせれば、川の水を飲んだり、川の魚を食べないようにしたりすると思うよ」
兄上にそう言われれば、「そうかも」とも思う。幸いなことに、「流行病」が広がっていると言われていたエリアでは寝込む人は多くても、死者や重い症状の患者は出ていないらしい。
具合が悪くなった人達も、シャル叔父さんの商会の人達が運んでくれた、支援物資で回復してきているというし、川の毒が原因だと言うことが伝わっているのなら、慌てる必要はないとのことだ。
「黒ローブのことの方は気になるけどな……」
兄上は少しだけ眉を歪めた。黒ローブのことはやっぱり気になるよね。
ゲンティアナとアンソラ男爵領の領境に毒を撒くとか言っていたし、可能なら今すぐ行って捕まえたいよ。
「……領境までって、半日はかかるの?」
「馬を飛ばしてもかなり時間はかかるはずだよ。近くにいる人に任せるしかないよ。ああ……、電……、連絡できる魔道具とか領境とかに配置できるようになると、もう少しスムーズなんだろうけどな」
「呪いの毒」で黒く爛れた魔獣の遺骸を解毒後に土に埋め終わって、泉の水で満たした瓶を「収納」にしまうと、兄上は近くに置いてあったリュックをヒョイと背負った。
もう引き返すタイミングかと、僕もリュックを背負った。
帰りは乳白色の魔石を持った魔獣を探すので、行きと違う道を通ってみたりする。白い蛇魔獣が居れば狩るけど、それ以外でも光魔法を使うような魔獣が居ないかも探しながら歩いている。
「あ、なんか光ってないか?」
薮をかき分けて、その先を見回した兄上が言う。
「ほぉ、光ってますなぁ。木の上に何匹かいるんでさぁ」
ボブが小声で返事をした。
《ツノヒカリトカゲ》
《毒なし》
「ツノヒカリトカゲ?」
兄上とボブの視線を追いかけて、光っている場所を見てみると、毒鑑定が作動した。木の枝や葉っぱが陰担って、全身が見えないけど、名前からすると光っているのはツノのようだ。
「光ってるのはツノか」
「仕留めましょうか」
「うん。光ってるってことは、光魔石の可能性があるよな」
ボブの申し出に兄上が頷くと、ボブは近くの虫を払うかのような、何でもなさそうな動作でナイフを投げた。
「キュェェ!!」
ボブのナイフはツノヒカリトカゲに命中したけど、近くで別の魔獣の声が聞こえた。声と同時に魔法陣が浮かび上がる。何か魔法を放ってくる?
シュッ
隣の木から、何かが飛び立った。鳥じゃない。広げた四肢に膜が張られていて、四角形の布みたいな姿だ。
《フユウモモンガ》
《毒なし》
ツノヒカリトカゲが落ちる音が聞こえたけど、ボブはフユウモモンガの方にも狙いを定めていた。
ザシュッ!
「キエェェエ!!」
ボブのナイフがフユウモモンガの皮膜を切り裂くと、フユウモモンガは甲高い声をあげて、錐揉みするようにクルクルと回転した。次の瞬間、魔法陣が浮かび上がり、フユウモモンガはクルクルと回ったまま垂直方向に上昇した。
「え?変な動き!」
「仕留め損なったでさぁ」
ボブのナイフが今度は、フユウモモンガの頭に刺さり、フユウモモンガはナイフと共に落ちていった。
あの魔法陣、気になる!
「……足りるかなぁ」
いつもより少し多めに瓶を持って泉の水をたくさん汲んではいるけど、川に流れている水を全部解毒できるのかは分からないよね。
最後の瓶を泉の水で満たしてから、呟くように言ってしまう。
「足りなきゃまた汲みにくれば良いさ」
兄上は、不安に思っていないのか、なんでもなさそうに言いながら、魔獣の遺骸に泉の水をたっぷりとかけた。
「川に毒が広がっているって知らせれば、川の水を飲んだり、川の魚を食べないようにしたりすると思うよ」
兄上にそう言われれば、「そうかも」とも思う。幸いなことに、「流行病」が広がっていると言われていたエリアでは寝込む人は多くても、死者や重い症状の患者は出ていないらしい。
具合が悪くなった人達も、シャル叔父さんの商会の人達が運んでくれた、支援物資で回復してきているというし、川の毒が原因だと言うことが伝わっているのなら、慌てる必要はないとのことだ。
「黒ローブのことの方は気になるけどな……」
兄上は少しだけ眉を歪めた。黒ローブのことはやっぱり気になるよね。
ゲンティアナとアンソラ男爵領の領境に毒を撒くとか言っていたし、可能なら今すぐ行って捕まえたいよ。
「……領境までって、半日はかかるの?」
「馬を飛ばしてもかなり時間はかかるはずだよ。近くにいる人に任せるしかないよ。ああ……、電……、連絡できる魔道具とか領境とかに配置できるようになると、もう少しスムーズなんだろうけどな」
「呪いの毒」で黒く爛れた魔獣の遺骸を解毒後に土に埋め終わって、泉の水で満たした瓶を「収納」にしまうと、兄上は近くに置いてあったリュックをヒョイと背負った。
もう引き返すタイミングかと、僕もリュックを背負った。
帰りは乳白色の魔石を持った魔獣を探すので、行きと違う道を通ってみたりする。白い蛇魔獣が居れば狩るけど、それ以外でも光魔法を使うような魔獣が居ないかも探しながら歩いている。
「あ、なんか光ってないか?」
薮をかき分けて、その先を見回した兄上が言う。
「ほぉ、光ってますなぁ。木の上に何匹かいるんでさぁ」
ボブが小声で返事をした。
《ツノヒカリトカゲ》
《毒なし》
「ツノヒカリトカゲ?」
兄上とボブの視線を追いかけて、光っている場所を見てみると、毒鑑定が作動した。木の枝や葉っぱが陰担って、全身が見えないけど、名前からすると光っているのはツノのようだ。
「光ってるのはツノか」
「仕留めましょうか」
「うん。光ってるってことは、光魔石の可能性があるよな」
ボブの申し出に兄上が頷くと、ボブは近くの虫を払うかのような、何でもなさそうな動作でナイフを投げた。
「キュェェ!!」
ボブのナイフはツノヒカリトカゲに命中したけど、近くで別の魔獣の声が聞こえた。声と同時に魔法陣が浮かび上がる。何か魔法を放ってくる?
シュッ
隣の木から、何かが飛び立った。鳥じゃない。広げた四肢に膜が張られていて、四角形の布みたいな姿だ。
《フユウモモンガ》
《毒なし》
ツノヒカリトカゲが落ちる音が聞こえたけど、ボブはフユウモモンガの方にも狙いを定めていた。
ザシュッ!
「キエェェエ!!」
ボブのナイフがフユウモモンガの皮膜を切り裂くと、フユウモモンガは甲高い声をあげて、錐揉みするようにクルクルと回転した。次の瞬間、魔法陣が浮かび上がり、フユウモモンガはクルクルと回ったまま垂直方向に上昇した。
「え?変な動き!」
「仕留め損なったでさぁ」
ボブのナイフが今度は、フユウモモンガの頭に刺さり、フユウモモンガはナイフと共に落ちていった。
あの魔法陣、気になる!
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