転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第329話 「浮遊」の魔道具の実用化は

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フユウモモンガの姿を少し真似て、大きな布の端を両手足に結びつけて、風魔法とフユウモモンガが使っていた魔法で浮かび上がるというものだ。フユウモモンガが浮いていた魔法は、「浮遊」の魔法って呼ぶことにした。更に闇魔石で、姿を見せなくさせるんだ。
魔石をつける位置とか色々試行錯誤して見て、なんとか完成した。訓練場の中を兄上と一緒に飛び回る。凄く楽しい!

「……これは、鍵付きとかに出来ないかな」

訓練場の端から飛んで、入り口近くに着地した兄上は、腕につけた魔石付きの腕輪を眺めて少し考え込む様子で言った。

「鍵付き?」
「ああ。これって、すぐに使うかもしれないだろ。しかも、ゲンティアナの外まで行くんだとしたら、誰かに盗まれて悪用されないように出来たらって思ったんだよ」
「……識別情報みたいなので良い?」

兄上に言われて最初にイメージしたのは、魔道具を使う人を覚えておけるような機能を作ることだったんだけど、人を判別する方法とか考えると、時間がかかりそうな気がした。
「追跡魔道具」シリーズに使っていた識別情報を流用して、指輪とかペンダントだとか識別情報を付与したものを持った人を判別するようにしておけば、それが鍵になるんじゃないかって思ったんだ。

「登録した識別情報を付与したものを近づけないと起動しないようにすれば良いんじゃない?」

その場で、試しに小さい魔石に識別情報を付与して、実演してみせたら、兄上が何故か渋い顔をした。

「言っては見たけど……。簡単に作るよなぁ……」



夕暮れより前には「浮遊」の魔道具が大体完成したので、父上や母様に披露しようとして、魔道具の機能を説明したら、父上が少しだけ難しそうな顔をした。

「うーん……。とても凄くて便利な物を作ったとは思うよ。それ自体は素晴らしい。……でも、一応言っておくと他領に忍び込むようなことはしてはダメなんだよ」

黒ローブの位置情報を取得して、「浮遊」の魔道具で向かうとしても、ゲンティアナからアンソラ男爵領に直接飛んで行ってはダメだと釘を刺された。

母様は、何故かちょっと怒っているみたいな様子だ。

「高く飛ぶだなんてもしも落ちたら怪我をするわよ。ローレン、あなたが付いていながら……っ」
「あー、僕達が飛ぶのは、訓練場内だけだからっ。クリスには、黒ローブを捕まえに行こうとかはするなって、ちゃんと念を押しておいたから!」

兄上は母様に弁明した後、父上の方に向き直った。

「確かに……、領境を越える手続きのことは失念していましたけど、領境まで飛んで行くだけでも移動時間は短縮されませんか?
領境についたら、普通に門を通る手続きをすれば良いんじゃないかと」

兄上は、ちょっと緊張した様子で父上に話す。
僕も頑張って父上に説明しよう!

「父上!これがあれば、馬とかより早く移動できると思うんだ! 試したけど魔石の魔力の消費はかなり抑えられているし、何時間も飛べるよ!魔力補充用の予備の魔石もセットできるようにしてあるよ!」
「そうか……」

父上の大きな手が僕の頭の上にポンと置かれた。

「クリスもローレンも、色々と考えてくれたんだな……」

身を屈めて僕と目線の高さを合わせてそう言うと、今度は兄上の頭を鷲掴みにした。

「ありがとうな。……だが、黒ローブの捕獲については心配しなくて大丈夫だからな」
「……黒ローブを捕まえたんですか!?」
「アンソラ男爵領内の商会の職員と、ゲンティアナ側の領境の騎士を手配している。もうそろそろだろう。居場所も言動も把握できているのだから、逃しはしないよ」

父上の瞳の奥がギラリと鈍く光った。
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