2 / 334
第1章
第2話 なかなかの大猟
しおりを挟む
僕は急いでオオトカゲが網の中で身を横たえているところに近寄った。
かがみ込んで両手でオオトカゲの身体を押して腹が見える位置迄転がす。
ナイフを手にして、心臓あたりに突き刺す。切り口から血が滴り落ちてくる。ナイフの先に固いものが当たった感触があったのでナイフを抜き、手袋をした手を突っ込む。
指先に伝わる感覚を頼りに魔石を引っ張り出す。手袋毎水魔法で洗い流すと鮮やかな濃いめの水色の魔石が出てきた。
「当たりかも。」
小さいけど色が濃い魔石だ。色が濃いのは魔力が多めなんだ。まあ、オオトカゲ自体が持っている魔石は小さいし、すごく価値があるようなものでもないのだけど。
魔石を無事取り出したらオオトカゲを網の上から縛って、木に逆さに吊るした。結構重たいけどなんとか引っ張り上げることが出来た。頭が下になって血抜きができれば良いから、完全に逆さまになるまで吊るさなくても大丈夫だとは思うけど。
風刃で切り裂いた箇所と心臓部の切り口からダラダラと血が流れて地面に落ちていく。
このまま血抜きができそうなのを確認してから兄上が仕留めた獲物の解体を手伝いに行く。
「……あっちは?」
「血抜き中。手伝うよ。」
僕が兄上のいる方に近寄っていくと、兄上はオオトカゲを沼から引っ張り出しながら振り向いた。兄上の仕留めた3体はどれも僕が仕留めたやつより一回り大きい。
兄上は、オオトカゲの尻尾を片手で掴んでズルズルと引き出している。
途中、沼から別のオオトカゲが顔を出すと、片手でオオトカゲの尻尾を掴んだまま、顔を出したオオトカゲを斬りつけていた。余裕だなぁ。
「じゃあ、ちょっと水で洗い流してくれるか?」
「 うん。」
沼の辺りに並べられたオオトカゲの亡骸は泥だらけだったので、水魔法で水をかけて泥を落とす。泥を落とさないで解体すると肉が泥だらけになっちゃうからね。
僕が仕留めたオオトカゲも、血抜きが終わってから泥を洗い流す予定だよ。
「大漁だね。今夜は唐揚げかな。」
「いや……、夕方に辺境伯様がくるらしい。」
「ええっ?」
泥を洗い落としたオオトカゲの心臓部分にナイフを突き立てて魔石を取りを始めていた僕は手を止めて兄上の方に顔を向けた。
「……辺境伯様、何日いるの?」
「知らね。いつも二、三日だからそのくらいじゃないか?」
ナスタチウム辺境伯は、父、セルジュ・ゲンティアナが領主を務めるゲンティアナ男爵家の寄親なんだそうだ。
寄親ってよくわからないけど、保護してくれる偉い貴族ってことらしい。
父は元々は騎士で何年か前の隣国との戦いで功績を上げて男爵に陞爵したそうだ。
戦いで獲得した地の一部をゲンティアナ男爵領として貰い受けた。
領地といっても未開拓な魔獣溢れる山地だ。兄と僕が狩りをするのは食材が目的でもあるけれど、魔獣に対抗できるように鍛えるためでもある。
僕はクリストファー・ゲンティアナ。家族にはクリスと呼ばれている。
ゲンティアナ男爵家の次男で9歳になったばかり。兄はローレン・ゲンティアナで僕より2つ年上の11歳。
3歳下に妹のメイリーンがいる。僕や兄上はメイリと呼んでいる。元気いっぱいで可愛いんだよ。
領地の中心地は比較的魔獣が弱く、数も少ない地域だ。子供の兄や俺でもなんとか狩りができる森がある、森の奥地にはもっと強い魔獣が潜んでいるらしい。
小さい町だけど冒険者ギルドが誘致されていて、町の住民はほとんどが冒険者か元冒険者だ。
森で狩った魔獣が領の収益の中心だそうだ。
そんなど田舎にわざわざ辺境伯様がやってくるのは
視察を兼ねながら騎士の訓練をする為らしい。
ここは、僕達みたいな子供が狩りをできる場所もあるし、場所によって強い魔獣もいるので難易度を調整しながら狩りができるからだそうだ。
この地に来るまでの間も魔獣との戦いがあるから往復だけで訓練にはなるらしいから、訓練で長期滞在とかはしないみたいだけど。
それでも、辺境伯様と騎士様達が大勢滞在するとなると滞在中の食事などの世話が大変だ。
母様得意の唐揚げやカツは、辺境伯様やその他他領から来た客人にはお出ししないことになっている。
大量に油を使うし、作り方を教えろだとか言われるのが面倒だと母様が言うからだ。
秘伝の味でも、権力が強い上位貴族に要求されたら作り方などを教えないといけないのが嫌なんだって。
母様が作る料理はどれも美味しいと思う。普段は料理人のジャックが食事を作っているのだけど、
気分転換だとか新しいレシピを思いついたとかの時に、母様も料理をするんだ。
ジャックが作る料理ももちろん美味しいよ。
「ねえ、そうなるとオオトカゲこれだけじゃ足りないんじゃないの?」
「流石に他で食材は準備しているさ。」
「そうかぁ。」
かがみ込んで両手でオオトカゲの身体を押して腹が見える位置迄転がす。
ナイフを手にして、心臓あたりに突き刺す。切り口から血が滴り落ちてくる。ナイフの先に固いものが当たった感触があったのでナイフを抜き、手袋をした手を突っ込む。
指先に伝わる感覚を頼りに魔石を引っ張り出す。手袋毎水魔法で洗い流すと鮮やかな濃いめの水色の魔石が出てきた。
「当たりかも。」
小さいけど色が濃い魔石だ。色が濃いのは魔力が多めなんだ。まあ、オオトカゲ自体が持っている魔石は小さいし、すごく価値があるようなものでもないのだけど。
魔石を無事取り出したらオオトカゲを網の上から縛って、木に逆さに吊るした。結構重たいけどなんとか引っ張り上げることが出来た。頭が下になって血抜きができれば良いから、完全に逆さまになるまで吊るさなくても大丈夫だとは思うけど。
風刃で切り裂いた箇所と心臓部の切り口からダラダラと血が流れて地面に落ちていく。
このまま血抜きができそうなのを確認してから兄上が仕留めた獲物の解体を手伝いに行く。
「……あっちは?」
「血抜き中。手伝うよ。」
僕が兄上のいる方に近寄っていくと、兄上はオオトカゲを沼から引っ張り出しながら振り向いた。兄上の仕留めた3体はどれも僕が仕留めたやつより一回り大きい。
兄上は、オオトカゲの尻尾を片手で掴んでズルズルと引き出している。
途中、沼から別のオオトカゲが顔を出すと、片手でオオトカゲの尻尾を掴んだまま、顔を出したオオトカゲを斬りつけていた。余裕だなぁ。
「じゃあ、ちょっと水で洗い流してくれるか?」
「 うん。」
沼の辺りに並べられたオオトカゲの亡骸は泥だらけだったので、水魔法で水をかけて泥を落とす。泥を落とさないで解体すると肉が泥だらけになっちゃうからね。
僕が仕留めたオオトカゲも、血抜きが終わってから泥を洗い流す予定だよ。
「大漁だね。今夜は唐揚げかな。」
「いや……、夕方に辺境伯様がくるらしい。」
「ええっ?」
泥を洗い落としたオオトカゲの心臓部分にナイフを突き立てて魔石を取りを始めていた僕は手を止めて兄上の方に顔を向けた。
「……辺境伯様、何日いるの?」
「知らね。いつも二、三日だからそのくらいじゃないか?」
ナスタチウム辺境伯は、父、セルジュ・ゲンティアナが領主を務めるゲンティアナ男爵家の寄親なんだそうだ。
寄親ってよくわからないけど、保護してくれる偉い貴族ってことらしい。
父は元々は騎士で何年か前の隣国との戦いで功績を上げて男爵に陞爵したそうだ。
戦いで獲得した地の一部をゲンティアナ男爵領として貰い受けた。
領地といっても未開拓な魔獣溢れる山地だ。兄と僕が狩りをするのは食材が目的でもあるけれど、魔獣に対抗できるように鍛えるためでもある。
僕はクリストファー・ゲンティアナ。家族にはクリスと呼ばれている。
ゲンティアナ男爵家の次男で9歳になったばかり。兄はローレン・ゲンティアナで僕より2つ年上の11歳。
3歳下に妹のメイリーンがいる。僕や兄上はメイリと呼んでいる。元気いっぱいで可愛いんだよ。
領地の中心地は比較的魔獣が弱く、数も少ない地域だ。子供の兄や俺でもなんとか狩りができる森がある、森の奥地にはもっと強い魔獣が潜んでいるらしい。
小さい町だけど冒険者ギルドが誘致されていて、町の住民はほとんどが冒険者か元冒険者だ。
森で狩った魔獣が領の収益の中心だそうだ。
そんなど田舎にわざわざ辺境伯様がやってくるのは
視察を兼ねながら騎士の訓練をする為らしい。
ここは、僕達みたいな子供が狩りをできる場所もあるし、場所によって強い魔獣もいるので難易度を調整しながら狩りができるからだそうだ。
この地に来るまでの間も魔獣との戦いがあるから往復だけで訓練にはなるらしいから、訓練で長期滞在とかはしないみたいだけど。
それでも、辺境伯様と騎士様達が大勢滞在するとなると滞在中の食事などの世話が大変だ。
母様得意の唐揚げやカツは、辺境伯様やその他他領から来た客人にはお出ししないことになっている。
大量に油を使うし、作り方を教えろだとか言われるのが面倒だと母様が言うからだ。
秘伝の味でも、権力が強い上位貴族に要求されたら作り方などを教えないといけないのが嫌なんだって。
母様が作る料理はどれも美味しいと思う。普段は料理人のジャックが食事を作っているのだけど、
気分転換だとか新しいレシピを思いついたとかの時に、母様も料理をするんだ。
ジャックが作る料理ももちろん美味しいよ。
「ねえ、そうなるとオオトカゲこれだけじゃ足りないんじゃないの?」
「流石に他で食材は準備しているさ。」
「そうかぁ。」
451
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる