転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第2話 なかなかの大猟

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僕は急いでオオトカゲが網の中で身を横たえているところに近寄った。

かがみ込んで両手でオオトカゲの身体を押して腹が見える位置迄転がす。
ナイフを手にして、心臓あたりに突き刺す。切り口から血が滴り落ちてくる。ナイフの先に固いものが当たった感触があったのでナイフを抜き、手袋をした手を突っ込む。
指先に伝わる感覚を頼りに魔石を引っ張り出す。手袋毎水魔法で洗い流すと鮮やかな濃いめの水色の魔石が出てきた。

「当たりかも。」

小さいけど色が濃い魔石だ。色が濃いのは魔力が多めなんだ。まあ、オオトカゲ自体が持っている魔石は小さいし、すごく価値があるようなものでもないのだけど。

魔石を無事取り出したらオオトカゲを網の上から縛って、木に逆さに吊るした。結構重たいけどなんとか引っ張り上げることが出来た。頭が下になって血抜きができれば良いから、完全に逆さまになるまで吊るさなくても大丈夫だとは思うけど。

風刃で切り裂いた箇所と心臓部の切り口からダラダラと血が流れて地面に落ちていく。

このまま血抜きができそうなのを確認してから兄上が仕留めた獲物の解体を手伝いに行く。

「……あっちは?」
「血抜き中。手伝うよ。」

僕が兄上のいる方に近寄っていくと、兄上はオオトカゲを沼から引っ張り出しながら振り向いた。兄上の仕留めた3体はどれも僕が仕留めたやつより一回り大きい。
兄上は、オオトカゲの尻尾を片手で掴んでズルズルと引き出している。
途中、沼から別のオオトカゲが顔を出すと、片手でオオトカゲの尻尾を掴んだまま、顔を出したオオトカゲを斬りつけていた。余裕だなぁ。

「じゃあ、ちょっと水で洗い流してくれるか?」
「 うん。」

沼の辺りに並べられたオオトカゲの亡骸は泥だらけだったので、水魔法で水をかけて泥を落とす。泥を落とさないで解体すると肉が泥だらけになっちゃうからね。
僕が仕留めたオオトカゲも、血抜きが終わってから泥を洗い流す予定だよ。

「大漁だね。今夜は唐揚げかな。」
「いや……、夕方に辺境伯様がくるらしい。」
「ええっ?」

泥を洗い落としたオオトカゲの心臓部分にナイフを突き立てて魔石を取りを始めていた僕は手を止めて兄上の方に顔を向けた。

「……辺境伯様、何日いるの?」
「知らね。いつも二、三日だからそのくらいじゃないか?」

ナスタチウム辺境伯は、父、セルジュ・ゲンティアナが領主を務めるゲンティアナ男爵家の寄親なんだそうだ。

寄親ってよくわからないけど、保護してくれる偉い貴族ってことらしい。
父は元々は騎士で何年か前の隣国との戦いで功績を上げて男爵に陞爵したそうだ。
戦いで獲得した地の一部をゲンティアナ男爵領として貰い受けた。

領地といっても未開拓な魔獣溢れる山地だ。兄と僕が狩りをするのは食材が目的でもあるけれど、魔獣に対抗できるように鍛えるためでもある。

僕はクリストファー・ゲンティアナ。家族にはクリスと呼ばれている。
ゲンティアナ男爵家の次男で9歳になったばかり。兄はローレン・ゲンティアナで僕より2つ年上の11歳。
3歳下に妹のメイリーンがいる。僕や兄上はメイリと呼んでいる。元気いっぱいで可愛いんだよ。

領地の中心地は比較的魔獣が弱く、数も少ない地域だ。子供の兄や俺でもなんとか狩りができる森がある、森の奥地にはもっと強い魔獣が潜んでいるらしい。
小さい町だけど冒険者ギルドが誘致されていて、町の住民はほとんどが冒険者か元冒険者だ。
森で狩った魔獣が領の収益の中心だそうだ。

そんなど田舎にわざわざ辺境伯様がやってくるのは
視察を兼ねながら騎士の訓練をする為らしい。
ここは、僕達みたいな子供が狩りをできる場所もあるし、場所によって強い魔獣もいるので難易度を調整しながら狩りができるからだそうだ。

この地に来るまでの間も魔獣との戦いがあるから往復だけで訓練にはなるらしいから、訓練で長期滞在とかはしないみたいだけど。
それでも、辺境伯様と騎士様達が大勢滞在するとなると滞在中の食事などの世話が大変だ。

母様得意の唐揚げやカツは、辺境伯様やその他他領から来た客人にはお出ししないことになっている。
大量に油を使うし、作り方を教えろだとか言われるのが面倒だと母様が言うからだ。
秘伝の味でも、権力が強い上位貴族に要求されたら作り方などを教えないといけないのが嫌なんだって。

母様が作る料理はどれも美味しいと思う。普段は料理人のジャックが食事を作っているのだけど、
気分転換だとか新しいレシピを思いついたとかの時に、母様も料理をするんだ。

ジャックが作る料理ももちろん美味しいよ。

「ねえ、そうなるとオオトカゲこれだけじゃ足りないんじゃないの?」
「流石に他で食材は準備しているさ。」
「そうかぁ。」

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