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第1章
第3話 治癒玉
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水魔法で水を出してオオトカゲを洗い流していたら、兄上が僕の手を覗き込んだ。
「怪我したのか?」
「あ。」
手の甲に血がついている。さっき、オオトカゲを避けて木にぶつかった時に擦りむいたところだ。ちょっとズキズキしてた。
「治癒玉使えよ。」
「擦り傷だよ。」
「怪我すると母上が心配するだろ。化膿するとまずいし。」
「……わかった……。」
兄上に言われて僕は渋々、腰にぶら下げていた皮袋から「治癒玉」と呼ばれる水魔石を加工した道具を取り出した。道具といっても、見た目は魔石に魔法陣が刻まれただけの石ころみたいなものだ。
水魔法には治癒の力があるので、水魔石を使って治癒の力を発揮させるように魔法陣を刻んだものだ。
効果を増幅させる為と繰り返し使う為に、魔力を外から流し込んでいる。僕の手の中に収まるくらいの大きさの魔石だけど、魔力を込めるのに結構時間がかかったんだ。
だから擦り傷程度で使っちゃうのは、ちょっと勿体無いような気がしてしまう。まあ、全部の魔力を使っちゃったりはしないだろうけど。
母様は水魔法の使い手だから、治癒玉は使わなくても治癒の力が使えるんだ。でも治癒玉は予め魔力を込めておくことができるから良く使うのだそうだ。
治癒には水魔法の治癒と光魔法の治癒の二種類があるそうだ。治癒できる範囲が違うらしいけど、傷程度だったら、どちらの魔法でも癒せるらしい。
僕は水魔法で水を出すことができるけど、まだ治癒の力は使えないんだ。魔力の制御だとかが凄く難しいらしい。
今は魔法陣で治癒の力の魔力の制御を学んでいるところ。
ちなみにこの治癒玉の魔法陣は僕が描いたんだ。魔法陣の描き方はとても上手だと母様に褒められたよ。えっへん。
治癒玉を握りしめ、手の甲の傷の上にかざそうとして、一旦手を止めて水を出して傷口を洗い流した。傷口はよく洗っておかないとね。
念の為、手全体を綺麗にしてからもう一度治癒玉を掴む。なんとなくで治癒玉も洗ってしまった。
それから掌の真ん中に治癒玉の魔法陣がピッタリ当たるようにして持ってから魔法陣にほんの少し魔力を込めた。治癒玉がぼんやりと水色の光を帯びた。その時ふわっと、空中に魔法陣が浮かび上がった。
魔法陣の中で魔法が発動したのが何となくわかった。これがはっきりわかるようになったら、治癒の力が使えるようになるのかな。
魔法陣が消えるまでじっと見つめた。
魔法陣がスッと消えて、治癒玉の光も消えた後、手の甲を見ると傷口がすっかり消えていた。
いつ見ても不思議な光景だ。
「傷消えたよ。」
「良かった。良かった。」
「ねえ、治癒溜まって、骨折とかも治るのかな。」
「試しに骨折とかするなよ?」
兄上がちょっとわざとらしく眉を顰めて僕の方を見た。わかってる。骨折したら痛いからね。
ただ、治癒玉がどのくらいの傷を治せるのかよくわからないからちょっと気になるんだ。兄上が怪我したときのことも考えて、念の為、5個持ち歩いているんだけど。
兄上が怪我した時と僕が怪我したときの分とその予備。更にもしものとき用にもう一個。魔力込めるの時間かかったんだよ!
全部のオオトカゲを木から吊るして、ふぅっと一息。腰にくくりつけていた竹筒を利用した水筒を手にして、魔力水を口に流し込む。
「それ、何色のやつ?」
「水色。」
「風刃連発してただろう。緑のはなくても良いのか?」
「魔力は吸収できたら後はどっちの属性とかないんじゃないのかなぁ。」
「どうなんだろうな。後から風属性が育たなかったなんてなるかもしれないぞ。」
「ええ~?後で緑のも飲んどく。」
僕が飲んでいる魔力水は、水魔法の魔石を水の中に漬けているもの。魔力ポーションのような劇的な魔力回復はしないけれど、チビチビ飲んでいると身体に負担がなく少しずつ魔力回復ができるんだ。
自分の魔法の属性に合った魔石を使ったほうが吸収が良いみたいな気がするので、僕は水色の水魔法の魔石か緑色の風魔法の魔石を使う。
兄上は火属性が強いから、飲む時は赤い魔石を使う。
オオトカゲの血抜きをしている間に僕は先ほどの色取り取りのキノコを思い出した。
「……ちょっとキノコ採ってくるね。」
兄上にそう断って、茂みの向こうに戻りせっせとキノコを刈りとっていると背中越しに兄上が覗き込んで言った。
「何その色のキノコ。食べられるのか?」
「うーん……。色が使えるかなと思って。」
「お絵描き用か。」
「うん。メイリが絵を描くのにも使えるよね。」
「毒はないのか?」
「赤は毒はないみたい。青は沢山食べるとお腹壊すくらいの毒。灰色は結構毒。」
「毒はやめとけ。メイリの口に入ったりしたらどうする。」
「灰色のは採らないよ。でも青はバクバク食べなきゃ大丈夫そうだし。良い色なんだよ。」
森で採取をしているうちに、毒かそうでないかは見ただけでわかるようになった。
兄上は僕の毒の判定を信頼してくれている。
まだ毒かどうかと、毒の強さくらいしかわからないけど。
そのうち名前とかも浮かんでくるようになると母様は言っていた。それにはいろんな物をよく観察していかないといけないんだって。
兄上は渋々と言った感じで青いキノコを採取することを了承してくれた。
メイリがお絵描きで使う色材には使うなと念押しされた。僕もそこは気をつけるつもりだ。
「怪我したのか?」
「あ。」
手の甲に血がついている。さっき、オオトカゲを避けて木にぶつかった時に擦りむいたところだ。ちょっとズキズキしてた。
「治癒玉使えよ。」
「擦り傷だよ。」
「怪我すると母上が心配するだろ。化膿するとまずいし。」
「……わかった……。」
兄上に言われて僕は渋々、腰にぶら下げていた皮袋から「治癒玉」と呼ばれる水魔石を加工した道具を取り出した。道具といっても、見た目は魔石に魔法陣が刻まれただけの石ころみたいなものだ。
水魔法には治癒の力があるので、水魔石を使って治癒の力を発揮させるように魔法陣を刻んだものだ。
効果を増幅させる為と繰り返し使う為に、魔力を外から流し込んでいる。僕の手の中に収まるくらいの大きさの魔石だけど、魔力を込めるのに結構時間がかかったんだ。
だから擦り傷程度で使っちゃうのは、ちょっと勿体無いような気がしてしまう。まあ、全部の魔力を使っちゃったりはしないだろうけど。
母様は水魔法の使い手だから、治癒玉は使わなくても治癒の力が使えるんだ。でも治癒玉は予め魔力を込めておくことができるから良く使うのだそうだ。
治癒には水魔法の治癒と光魔法の治癒の二種類があるそうだ。治癒できる範囲が違うらしいけど、傷程度だったら、どちらの魔法でも癒せるらしい。
僕は水魔法で水を出すことができるけど、まだ治癒の力は使えないんだ。魔力の制御だとかが凄く難しいらしい。
今は魔法陣で治癒の力の魔力の制御を学んでいるところ。
ちなみにこの治癒玉の魔法陣は僕が描いたんだ。魔法陣の描き方はとても上手だと母様に褒められたよ。えっへん。
治癒玉を握りしめ、手の甲の傷の上にかざそうとして、一旦手を止めて水を出して傷口を洗い流した。傷口はよく洗っておかないとね。
念の為、手全体を綺麗にしてからもう一度治癒玉を掴む。なんとなくで治癒玉も洗ってしまった。
それから掌の真ん中に治癒玉の魔法陣がピッタリ当たるようにして持ってから魔法陣にほんの少し魔力を込めた。治癒玉がぼんやりと水色の光を帯びた。その時ふわっと、空中に魔法陣が浮かび上がった。
魔法陣の中で魔法が発動したのが何となくわかった。これがはっきりわかるようになったら、治癒の力が使えるようになるのかな。
魔法陣が消えるまでじっと見つめた。
魔法陣がスッと消えて、治癒玉の光も消えた後、手の甲を見ると傷口がすっかり消えていた。
いつ見ても不思議な光景だ。
「傷消えたよ。」
「良かった。良かった。」
「ねえ、治癒溜まって、骨折とかも治るのかな。」
「試しに骨折とかするなよ?」
兄上がちょっとわざとらしく眉を顰めて僕の方を見た。わかってる。骨折したら痛いからね。
ただ、治癒玉がどのくらいの傷を治せるのかよくわからないからちょっと気になるんだ。兄上が怪我したときのことも考えて、念の為、5個持ち歩いているんだけど。
兄上が怪我した時と僕が怪我したときの分とその予備。更にもしものとき用にもう一個。魔力込めるの時間かかったんだよ!
全部のオオトカゲを木から吊るして、ふぅっと一息。腰にくくりつけていた竹筒を利用した水筒を手にして、魔力水を口に流し込む。
「それ、何色のやつ?」
「水色。」
「風刃連発してただろう。緑のはなくても良いのか?」
「魔力は吸収できたら後はどっちの属性とかないんじゃないのかなぁ。」
「どうなんだろうな。後から風属性が育たなかったなんてなるかもしれないぞ。」
「ええ~?後で緑のも飲んどく。」
僕が飲んでいる魔力水は、水魔法の魔石を水の中に漬けているもの。魔力ポーションのような劇的な魔力回復はしないけれど、チビチビ飲んでいると身体に負担がなく少しずつ魔力回復ができるんだ。
自分の魔法の属性に合った魔石を使ったほうが吸収が良いみたいな気がするので、僕は水色の水魔法の魔石か緑色の風魔法の魔石を使う。
兄上は火属性が強いから、飲む時は赤い魔石を使う。
オオトカゲの血抜きをしている間に僕は先ほどの色取り取りのキノコを思い出した。
「……ちょっとキノコ採ってくるね。」
兄上にそう断って、茂みの向こうに戻りせっせとキノコを刈りとっていると背中越しに兄上が覗き込んで言った。
「何その色のキノコ。食べられるのか?」
「うーん……。色が使えるかなと思って。」
「お絵描き用か。」
「うん。メイリが絵を描くのにも使えるよね。」
「毒はないのか?」
「赤は毒はないみたい。青は沢山食べるとお腹壊すくらいの毒。灰色は結構毒。」
「毒はやめとけ。メイリの口に入ったりしたらどうする。」
「灰色のは採らないよ。でも青はバクバク食べなきゃ大丈夫そうだし。良い色なんだよ。」
森で採取をしているうちに、毒かそうでないかは見ただけでわかるようになった。
兄上は僕の毒の判定を信頼してくれている。
まだ毒かどうかと、毒の強さくらいしかわからないけど。
そのうち名前とかも浮かんでくるようになると母様は言っていた。それにはいろんな物をよく観察していかないといけないんだって。
兄上は渋々と言った感じで青いキノコを採取することを了承してくれた。
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