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第1章
第14話 狩場の情報
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「!」
レオノールさんの言葉に兄上はハッとして岩場の方を振り返った。
岩場の奥の離れた位置に居た人たちがパッと顔を逸らした。うん、なんかずっとチラチラと嫌な視線を向けてきてる人達がいるよね。
僕と兄上が二人で帰ったら、本当に尾けて来るかもしれない。
僕はレオノールさんと3人組を交互に見た。彼らからは害意は感じない。
「兄上……。この人達は悪い人じゃなさそうな気がするよ。途中まででも付いて来てもらっても良いかも。」
「……そうか……。」
こちらをチラチラ見ている人達の目的が、僕達が狩った角兎だとして、角兎も狩れない人達より兄上の方がずっと強いと思ってる。
でも、相手は複数人いるし、もしも一度にかかって来たりしたらどうなるかわからない。
レオノールさん達が信用できる人達なのかというと、正直よくわからない。会ったばかりだし。
でも、少なくとも害意は感じない。
一緒に歩いてくれると言うなら、お願いした方が安全なんじゃないかって思うんだ。
兄上も同じように考えたのか、レオノールさんからの送ってくれるという申し出を受けることにしたようだ。
「荷物、本当に持たなくて良いの?重そうだし、弟君のだけでも持つよ。」
「荷物は、……大丈夫です。」
「僕も大丈夫です!」
北の荒地から町方面へ戻る道の途中、僕達の後ろを歩いて来てくれたレオノールさんが何度も僕達の荷物が重そうなのを気にしてくれていた。
「ねえ、無理しなくていいのよ。持って逃げたりもしないよ?」
「……本当に大丈夫ですから。」
兄上はチラリと僕の様子を見てから、レオノールさんに答えている。「運搬」のスキルがレベルアップしたらしいおかげで、リュックは見た目より重くは感じていない。
兄上は僕が「運搬」スキルを上手く発動し続けていられるかどうかを気にしてくれているみたいだ。
レオノールさんと一緒に3人組も僕達について来ていた。彼らはジャンさん、ベルンさん、パウロさんと言う名前だそうだ。
彼らが仕えている方がこの町に行くと決めたきっかけが、「名物の角兎のジンジャーソテーが絶品」と言う噂だったそうで、護衛をしている騎士達の間にも噂が広がって
空前の「角兎のジンジャーソテーフィーバー」が沸き起こっているらしい。
「戦闘訓練の場所にこの地が候補に上がってた時に『ど田舎は嫌だ』って最初は拒否されていたらしいんですが、名物の角兎のジンジャーソテーの味を知らないなんて勿体無いとか言われて行く気になられたそうなんです。」
灰色髪のジャンさんの言葉に兄上が目を細める。
「ど田舎で悪かったですね。」
「あ!そ……、そんなことは……すまん。だが、来てみたら思ったほど田舎ではなかったぞ!」
「そうだ。もっと田舎かと思っていたが、そこまで田舎じゃなかった。」
ワタワタしながら、ジャンさんと赤茶髪のベルンさんが取り繕う様に言う。あの、結局田舎って言ってますけど。
「……でも我々だけじゃなさそうよね。来た時にはギルドの依頼も順番待ちだったんでしょう?」
レオノールさんとジャンさん達は別行動をしているけど、大元の部隊は同じみたいだ。
「そうなんですよ。先行して来ているのにこれですから。」
「岩場に居た他の連中も地元の冒険者じゃないんじゃない?」
「角兎、狩れてなかったですもんね。」
レオノールさんやジャンさん達は、お仕えしている「とあるお方」がこの町に来るのに先行して環境を整えたりしているのだろう。
多分、夕方に来る予定の辺境伯様の他に来る予定だという「何組か」なんだろうな。
そして「何組か」の他の関係者もいる様だ。
岩場にいたあの害意を向けて来ていた人達もそうなんだろうと言う推測だ。
「ねえ……、他に角兎の狩場があるんじゃないの?冒険者ギルドに依頼が沢山出ていたって割には、地元の冒険者が集まってなかったみたいよね。」
レオノールさんが、顎を長い指で撫でながら思案する。
「……そう言えば、そうですね。」
ベルンさんが周囲をキョロキョロ見回す。
「……ちゃんと聞いたっすよ、町の住民に。一番近い角兎の狩り場はあの岩場だって。」
くすんだ緑色の髪をしたパウロさんが顔を上げて言う。
「一番近い……。やっぱり他にも狩場があるってことじゃないの?一番近くではないけど、狩りがしやすい場所とか。」
「あ!」
レオノールさんの言葉に、3人組が揃ってハッとした顔をした。そして答え合わせを求めるように僕達の方に視線を動かした。
レオノールさんの言葉に兄上はハッとして岩場の方を振り返った。
岩場の奥の離れた位置に居た人たちがパッと顔を逸らした。うん、なんかずっとチラチラと嫌な視線を向けてきてる人達がいるよね。
僕と兄上が二人で帰ったら、本当に尾けて来るかもしれない。
僕はレオノールさんと3人組を交互に見た。彼らからは害意は感じない。
「兄上……。この人達は悪い人じゃなさそうな気がするよ。途中まででも付いて来てもらっても良いかも。」
「……そうか……。」
こちらをチラチラ見ている人達の目的が、僕達が狩った角兎だとして、角兎も狩れない人達より兄上の方がずっと強いと思ってる。
でも、相手は複数人いるし、もしも一度にかかって来たりしたらどうなるかわからない。
レオノールさん達が信用できる人達なのかというと、正直よくわからない。会ったばかりだし。
でも、少なくとも害意は感じない。
一緒に歩いてくれると言うなら、お願いした方が安全なんじゃないかって思うんだ。
兄上も同じように考えたのか、レオノールさんからの送ってくれるという申し出を受けることにしたようだ。
「荷物、本当に持たなくて良いの?重そうだし、弟君のだけでも持つよ。」
「荷物は、……大丈夫です。」
「僕も大丈夫です!」
北の荒地から町方面へ戻る道の途中、僕達の後ろを歩いて来てくれたレオノールさんが何度も僕達の荷物が重そうなのを気にしてくれていた。
「ねえ、無理しなくていいのよ。持って逃げたりもしないよ?」
「……本当に大丈夫ですから。」
兄上はチラリと僕の様子を見てから、レオノールさんに答えている。「運搬」のスキルがレベルアップしたらしいおかげで、リュックは見た目より重くは感じていない。
兄上は僕が「運搬」スキルを上手く発動し続けていられるかどうかを気にしてくれているみたいだ。
レオノールさんと一緒に3人組も僕達について来ていた。彼らはジャンさん、ベルンさん、パウロさんと言う名前だそうだ。
彼らが仕えている方がこの町に行くと決めたきっかけが、「名物の角兎のジンジャーソテーが絶品」と言う噂だったそうで、護衛をしている騎士達の間にも噂が広がって
空前の「角兎のジンジャーソテーフィーバー」が沸き起こっているらしい。
「戦闘訓練の場所にこの地が候補に上がってた時に『ど田舎は嫌だ』って最初は拒否されていたらしいんですが、名物の角兎のジンジャーソテーの味を知らないなんて勿体無いとか言われて行く気になられたそうなんです。」
灰色髪のジャンさんの言葉に兄上が目を細める。
「ど田舎で悪かったですね。」
「あ!そ……、そんなことは……すまん。だが、来てみたら思ったほど田舎ではなかったぞ!」
「そうだ。もっと田舎かと思っていたが、そこまで田舎じゃなかった。」
ワタワタしながら、ジャンさんと赤茶髪のベルンさんが取り繕う様に言う。あの、結局田舎って言ってますけど。
「……でも我々だけじゃなさそうよね。来た時にはギルドの依頼も順番待ちだったんでしょう?」
レオノールさんとジャンさん達は別行動をしているけど、大元の部隊は同じみたいだ。
「そうなんですよ。先行して来ているのにこれですから。」
「岩場に居た他の連中も地元の冒険者じゃないんじゃない?」
「角兎、狩れてなかったですもんね。」
レオノールさんやジャンさん達は、お仕えしている「とあるお方」がこの町に来るのに先行して環境を整えたりしているのだろう。
多分、夕方に来る予定の辺境伯様の他に来る予定だという「何組か」なんだろうな。
そして「何組か」の他の関係者もいる様だ。
岩場にいたあの害意を向けて来ていた人達もそうなんだろうと言う推測だ。
「ねえ……、他に角兎の狩場があるんじゃないの?冒険者ギルドに依頼が沢山出ていたって割には、地元の冒険者が集まってなかったみたいよね。」
レオノールさんが、顎を長い指で撫でながら思案する。
「……そう言えば、そうですね。」
ベルンさんが周囲をキョロキョロ見回す。
「……ちゃんと聞いたっすよ、町の住民に。一番近い角兎の狩り場はあの岩場だって。」
くすんだ緑色の髪をしたパウロさんが顔を上げて言う。
「一番近い……。やっぱり他にも狩場があるってことじゃないの?一番近くではないけど、狩りがしやすい場所とか。」
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