転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第34話 レオノールさんの場面

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早朝。まだ日が上りきっておらず、空が明るくなりかけている時間。
庭に出てみると、空気が冷たい。誰もいない庭にいるとちょっと秘密を持っているみたいな気持ちになってちょっと気持ちが湧き立つ。

離れの周りを3周軽く走る。いつもなら本館の方もランニングルートなんだけど、怖い騎士とか出てきたら嫌だから避けておく。昨日、槍を持った騎士に行手を遮られたのは少しだけトラウマになっているのかもしれない。

あの騎士の「害意」は迷いがない感じだった。無理に先に進もうとしたら躊躇なく槍で突き刺そうとしているみたいに感じた。

レオノールさんがいなかったら、僕、槍で刺されていたかも。僕だけじゃなくて兄上も怪我したかもしれない。怖いなぁ。

レオノールさんにちゃんとお礼を言えてない気がする。角兎はあげたけど、それは送ってもらったお礼だし。
また会えたらお礼を言いたいなぁ。
レオノールさん、怖い騎士相手に怒っている時は「オネエ」口調じゃなかったなぁ。

ーーー良いんです。侯爵家は兄上が継げば良いんだから。
ーーー君がそんな風にわざと他人に侮られるように振る舞っていても、あの第二夫人は安心はしないだろう。
ーーー直接的な攻撃が母上に行かなければそれで良いんです。兄上が後を継ぐまで何とかできれば。
ーーーでも、僕は君が他の人間に侮られるのが嫌なんだ!

金髪、だけど昨日描いた王子様と違う?もっと大人だ。雰囲気もちょっと違うし、目の下にホクロがない。
悲しげな表情でレオノールさんと向き合っている光景が思い浮かんだ。

新しい場面だ。レオノールさんは、メイリの夢の登場人物じゃないんだけどな。でも昨日レオノールさんと会った時もいくつか絵が思い浮かんだんだよね。
思い浮かんだレオノールさんの姿は、昨日あった時よりちょっと若く見える。実際にあったレオノールさんも若かったけど、思い浮かんだレオノールさんはちょっと少年っぽい雰囲気だ。

ーーー侮る奴にはそうさせておけば良いんです。油断してくれた方がこちらが有利になります。
ーーー侮られたいから、わざと試験で手を抜いたのか?
ーーーそれは……。正直なところ、殿下より少し下の成績になればと……。その思惑は外れてしましたが……。
ーーーうっ!わ、悪かったな!
ーーー……殿下はあの令嬢とのことを真剣に考えておられるのですか?
ーーーいけないか。彼女の側にいると心が安らぐんだ。
ーーーご婚約者がいる身では望ましいことではないと思います。
ーーーそ、そうだが……。彼女を側妃にしたいと考えているんだ。
ーーー殿下……。

レオノールさんが物悲しげな表情で殿下と呼ばれた人物を見つめた。きゅっと唇を引き結んでいる。あ、昨日会ったレオノールさんは唇がちょっと赤っぽかったなぁ。何か塗ってるのかな。

「クリス!どうした?ぼけっと突っ立って?」
「あ、兄上。」

いつの間にか思考というか妄想の波の中にいたようだ。本館が見える通路の脇に立っていた。兄上が声をかけてくるまで兄上が近づいてきたことに気が付かなかった。

「何か物語の場面みたいなのが浮かぶんだ。メイリの夢ともちょっと似てるけど。」
「へえ。メイリの夢と合わせたら、本でも書けるんじゃないか?」
「本か。良いかも。」

今の所思い浮かぶ画面にあまり繋がりは感じないんだけどね。メイリの夢の話を聞くと、僕のイメージも広がるし、そのうちまとまった物語が思いつくかもしれない。
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