55 / 334
第1章
第55話 解呪でなく毒耐性
しおりを挟む
「呪いの毒」という言葉には聞き覚えがある。
脳裏に浮かんだ光景の中でレオノールさんが倒れた時の姿を僕は思い出した。あの時のレオノールさんの皮膚が黒く染まっていた。そして黒い部分がどんどんと広がって行っていたんだ。
レオノールさんは「呪いの毒」を塗ったナイフで刺されたのか……。
「『呪いの毒』を解毒する方法はあるの?」
「聖属性魔法で解呪すると聞いたことがあるわ。……クリスが気になっているのは、毒耐性を持った魔獣の魔石が使えないかっていうことかしら。」
「うん。」
母様は僕が知りたいことをわかってくれているみたいだ。凄い!
でも、僕が頷くと母様はちょっと難しそうな顔をした。
「毒耐性を持った魔獣の魔石が使えるかどうかは……。正直わからないわね。簡単に試すことができないでしょう?
それと……水属性の魔法陣で『解呪』の魔法陣があるとは聞いたことがないのよ。」
「聖属性の魔法陣なら『解呪』があるの?それか光属性とか。」
「光属性でも『解呪』の魔法陣は聞いたことがないわ。
聖属性の魔法陣は……教会が公開していないの。『解呪』に限らず聖属性の魔法陣というものがあるかどうかも知らされていないの。
教会は、聖属性魔法のことは秘密にしたいのよ。……知ろうとしてはダメよ!」
母様は話している途中で、僕や兄様の表情を見てほんの少しだけ「威圧」っぽい空気を出した。僕も兄様も何もしていないのに、怒られたみたいになってる。知ろうとしたらダメなことがあるらしい。
ダメなのは教会のことだけ? 魔石のことは聞いても大丈夫なのかな?
恐る恐る聞いてみる。
「……魔石のことを調べたり実験するのは大丈夫なの?えーと……、例えば……『解呪』できなくても『毒耐性』を発動させるとか……。」
母様の顔色を伺いながら、ゆっくりとした口調で質問をすると、ピリピリとしていた母様の表情がちょっと和らいできた。
「あら。『解呪』という言葉を使わないのは、良いかもしれないわね。」
ニコリとする母様。母様の微笑みを見てホッと力を抜いたのだけど、母様は再びきっと目の力を強めて言った。
「……でも、危ないことはしないで!」
「はあい……。」
危ないことはしていないのにどうして怒られるんだろう……。
実際に「呪いの毒」に侵されている魔獣を捕まえてきて、毒耐性魔法をかけるとか危険なことをするつもりはないんだよ。しなくても実験はできる気がするんだ。
黎明の泉のほとりで黒く爛れた魔獣の皮に泉の水をかけた時、禍々しさが消えた。あの感じになることがわかれば良いんだからね。
……もしかして、泉の水があればそれだけで解呪できるってことのかな。毒耐性を持った魔獣は、泉の水を飲んでたんじゃないかと思う。みんな泉の近くにいたんだし。
泉の水を持ち歩けば……、でも泉の水は時間が経つと効果が薄れちゃうんだよね……。
泉の水の効果を長持ちさせる方法を考えていたらふと、魔石水のことを思い出した。魔石水は魔石を漬けた状態だと効果を維持できる。それなら毒耐性の魔石を泉の水に漬けたらどうだろう……。
考えを巡らせていたらノックの音がした。殿下達が呼んでいるとマーサが告げにきたんだ。マーサが入ってきたら、兄上はマーサがまだ何も言わないうちから立ちあがっていた。
僕も兄様に続いて椅子から立ち上がる。
呼ばれているのは兄上だけかもしれないけど、僕も一応ついていくことにする。
でも、その前に……。
泉から組んできた瓶の一つの蓋を開けて、毒耐性の魔石を瓶の中に一つ入れておいた。
脳裏に浮かんだ光景の中でレオノールさんが倒れた時の姿を僕は思い出した。あの時のレオノールさんの皮膚が黒く染まっていた。そして黒い部分がどんどんと広がって行っていたんだ。
レオノールさんは「呪いの毒」を塗ったナイフで刺されたのか……。
「『呪いの毒』を解毒する方法はあるの?」
「聖属性魔法で解呪すると聞いたことがあるわ。……クリスが気になっているのは、毒耐性を持った魔獣の魔石が使えないかっていうことかしら。」
「うん。」
母様は僕が知りたいことをわかってくれているみたいだ。凄い!
でも、僕が頷くと母様はちょっと難しそうな顔をした。
「毒耐性を持った魔獣の魔石が使えるかどうかは……。正直わからないわね。簡単に試すことができないでしょう?
それと……水属性の魔法陣で『解呪』の魔法陣があるとは聞いたことがないのよ。」
「聖属性の魔法陣なら『解呪』があるの?それか光属性とか。」
「光属性でも『解呪』の魔法陣は聞いたことがないわ。
聖属性の魔法陣は……教会が公開していないの。『解呪』に限らず聖属性の魔法陣というものがあるかどうかも知らされていないの。
教会は、聖属性魔法のことは秘密にしたいのよ。……知ろうとしてはダメよ!」
母様は話している途中で、僕や兄様の表情を見てほんの少しだけ「威圧」っぽい空気を出した。僕も兄様も何もしていないのに、怒られたみたいになってる。知ろうとしたらダメなことがあるらしい。
ダメなのは教会のことだけ? 魔石のことは聞いても大丈夫なのかな?
恐る恐る聞いてみる。
「……魔石のことを調べたり実験するのは大丈夫なの?えーと……、例えば……『解呪』できなくても『毒耐性』を発動させるとか……。」
母様の顔色を伺いながら、ゆっくりとした口調で質問をすると、ピリピリとしていた母様の表情がちょっと和らいできた。
「あら。『解呪』という言葉を使わないのは、良いかもしれないわね。」
ニコリとする母様。母様の微笑みを見てホッと力を抜いたのだけど、母様は再びきっと目の力を強めて言った。
「……でも、危ないことはしないで!」
「はあい……。」
危ないことはしていないのにどうして怒られるんだろう……。
実際に「呪いの毒」に侵されている魔獣を捕まえてきて、毒耐性魔法をかけるとか危険なことをするつもりはないんだよ。しなくても実験はできる気がするんだ。
黎明の泉のほとりで黒く爛れた魔獣の皮に泉の水をかけた時、禍々しさが消えた。あの感じになることがわかれば良いんだからね。
……もしかして、泉の水があればそれだけで解呪できるってことのかな。毒耐性を持った魔獣は、泉の水を飲んでたんじゃないかと思う。みんな泉の近くにいたんだし。
泉の水を持ち歩けば……、でも泉の水は時間が経つと効果が薄れちゃうんだよね……。
泉の水の効果を長持ちさせる方法を考えていたらふと、魔石水のことを思い出した。魔石水は魔石を漬けた状態だと効果を維持できる。それなら毒耐性の魔石を泉の水に漬けたらどうだろう……。
考えを巡らせていたらノックの音がした。殿下達が呼んでいるとマーサが告げにきたんだ。マーサが入ってきたら、兄上はマーサがまだ何も言わないうちから立ちあがっていた。
僕も兄様に続いて椅子から立ち上がる。
呼ばれているのは兄上だけかもしれないけど、僕も一応ついていくことにする。
でも、その前に……。
泉から組んできた瓶の一つの蓋を開けて、毒耐性の魔石を瓶の中に一つ入れておいた。
345
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる