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第1章
第62話 魔魚釣り?
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ーーー旦那様にお手紙を出しましょう。このままではお嬢様がお倒れになってしまいます。
ーーーお父様はお仕事がお忙しいから手紙を読んでくださるかわからないわ。それに……、新しいお母様に私が反発しているだけってお考えになるんじゃないかしら。
ーーーそんな……!
脳裏の絵の中のリネリア嬢は沈んだ様子でずっと俯いたままだ。そんなリネリア嬢をメイドのノンナさんが懸命に励ましているようだだk。
ーーー先月お帰りになった時も、『新しいお母様の言うことをよく聞きなさい。妹とも仲良くしなさい。』っておっしゃっただけだったもの。
ーーー……旦那様ともっとお話しをなさって下さい。そうしたらきっと……!
ーーーそうね……。ノンナにも心配をかけてしまってごめんなさいね。
ーーー謝らないで下さい!お嬢様!
リネリア嬢が少し顔を上げて、震える唇で笑みを作った。
お団子頭のノンナさんが、目の端を指で拭う。
そんな光景が脳裏をよぎって消えて行った。目の前のお団子髪のメイドさんが水の入った木桶を両手で受け取ろうとしているところに声をかけた。
「あの、ノンナさん。そのお水、馬車まで運びましょうか?」
「え、そんな。あれ?なぜ私の名前を?」
「……ノンナさんで合ってましたか。」
「はい。誰かが私のことを呼んでいるのをお聞きになられたのですね!水は一人で運べます!私見た目より結構力が強いのです!」
ノンナさんはえいっと軽くガッツポーズをした後、木桶を受け取り小走りに馬車の方に戻って行った。確かに、水の入った木桶を持った状態なのに軽やかな足取りだ。
「ノンナさん」と言う名前は、脳裏に浮かんだ名前と一致した。
思い浮かんだ光景は、リネリア嬢のお母上が亡くなって、継母と欲しがり妹がやってきた後の話なのかな。
これは単なる僕の妄想なんだろうか。それとも、これから起きる未来の話なのか……?
バシャン!
川の方から水を叩くような音が聞こえてきた。川の水面近くに赤い大きな影。魔魚だ。
反射的に弓をつがえて、矢を射る。魔魚を獲るつもりで、さっき矢に結びつけていたロープがビヨーンと伸びる。
「あ!おい!」
兄上の手がこちらに差し出された。
矢が刺さった魔魚が跳ねたのとほぼ同時に、兄上が僕のリュックから出ていたロープの端を掴んだ。
「あ!そうだった!」
ロープの端をどこにも結びつけないまま矢を放ってしまったことに気がついた。慌てて僕もロープに飛びつく。
ピーンと張ったロープがグッと川の方に勢いよく引っ張られる。ロープを引かれる勢いに尻餅をつきそうになる。
駆け寄ってきた人影。数人の騎士の手がロープに伸びた。
ジャンさん達だ。
「おおー!大物じゃん!」
「ロープを切らすなよ!網か何かないか?」
ジャンさん達以外にもわらわらと人が集まってきた。
「引っ張れー!」
掛け声と共に何人もの騎士達に加勢されてロープが引っ張られ、魔魚が宙を飛んだ。
ダーンと魔魚が地面に打ち付けられた時、ふわっと熱いものがロープを伝って入ってきた。
歓声が沸き起こる。あれ?何か騒ぎになっちゃってない?
「おお!これが、魔魚か?」
ネイサン殿下がこちらに向かって駆けてくる。シェリル嬢やハロルド君もその後ろに続いている。
兄上は魔魚のところに駆けて行って、魔魚の背中に突き刺さった矢を引き抜いた。矢は歪んでいた。折れてたら、魔魚には逃げられてロープを結んだところだけになってたかもしれない。ギリギリだね。
「……矢を使った釣りだったのね……。」
レオノールさんが矢を覗き込んで呟くように言った
。
兄上が魔魚の尻尾を掴んで持ち上げたのを見て、僕は急いで兄上の方に駆け寄った。
ーーーお父様はお仕事がお忙しいから手紙を読んでくださるかわからないわ。それに……、新しいお母様に私が反発しているだけってお考えになるんじゃないかしら。
ーーーそんな……!
脳裏の絵の中のリネリア嬢は沈んだ様子でずっと俯いたままだ。そんなリネリア嬢をメイドのノンナさんが懸命に励ましているようだだk。
ーーー先月お帰りになった時も、『新しいお母様の言うことをよく聞きなさい。妹とも仲良くしなさい。』っておっしゃっただけだったもの。
ーーー……旦那様ともっとお話しをなさって下さい。そうしたらきっと……!
ーーーそうね……。ノンナにも心配をかけてしまってごめんなさいね。
ーーー謝らないで下さい!お嬢様!
リネリア嬢が少し顔を上げて、震える唇で笑みを作った。
お団子頭のノンナさんが、目の端を指で拭う。
そんな光景が脳裏をよぎって消えて行った。目の前のお団子髪のメイドさんが水の入った木桶を両手で受け取ろうとしているところに声をかけた。
「あの、ノンナさん。そのお水、馬車まで運びましょうか?」
「え、そんな。あれ?なぜ私の名前を?」
「……ノンナさんで合ってましたか。」
「はい。誰かが私のことを呼んでいるのをお聞きになられたのですね!水は一人で運べます!私見た目より結構力が強いのです!」
ノンナさんはえいっと軽くガッツポーズをした後、木桶を受け取り小走りに馬車の方に戻って行った。確かに、水の入った木桶を持った状態なのに軽やかな足取りだ。
「ノンナさん」と言う名前は、脳裏に浮かんだ名前と一致した。
思い浮かんだ光景は、リネリア嬢のお母上が亡くなって、継母と欲しがり妹がやってきた後の話なのかな。
これは単なる僕の妄想なんだろうか。それとも、これから起きる未来の話なのか……?
バシャン!
川の方から水を叩くような音が聞こえてきた。川の水面近くに赤い大きな影。魔魚だ。
反射的に弓をつがえて、矢を射る。魔魚を獲るつもりで、さっき矢に結びつけていたロープがビヨーンと伸びる。
「あ!おい!」
兄上の手がこちらに差し出された。
矢が刺さった魔魚が跳ねたのとほぼ同時に、兄上が僕のリュックから出ていたロープの端を掴んだ。
「あ!そうだった!」
ロープの端をどこにも結びつけないまま矢を放ってしまったことに気がついた。慌てて僕もロープに飛びつく。
ピーンと張ったロープがグッと川の方に勢いよく引っ張られる。ロープを引かれる勢いに尻餅をつきそうになる。
駆け寄ってきた人影。数人の騎士の手がロープに伸びた。
ジャンさん達だ。
「おおー!大物じゃん!」
「ロープを切らすなよ!網か何かないか?」
ジャンさん達以外にもわらわらと人が集まってきた。
「引っ張れー!」
掛け声と共に何人もの騎士達に加勢されてロープが引っ張られ、魔魚が宙を飛んだ。
ダーンと魔魚が地面に打ち付けられた時、ふわっと熱いものがロープを伝って入ってきた。
歓声が沸き起こる。あれ?何か騒ぎになっちゃってない?
「おお!これが、魔魚か?」
ネイサン殿下がこちらに向かって駆けてくる。シェリル嬢やハロルド君もその後ろに続いている。
兄上は魔魚のところに駆けて行って、魔魚の背中に突き刺さった矢を引き抜いた。矢は歪んでいた。折れてたら、魔魚には逃げられてロープを結んだところだけになってたかもしれない。ギリギリだね。
「……矢を使った釣りだったのね……。」
レオノールさんが矢を覗き込んで呟くように言った
。
兄上が魔魚の尻尾を掴んで持ち上げたのを見て、僕は急いで兄上の方に駆け寄った。
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