75 / 334
第1章
第75話 光水の鑑定
しおりを挟む
薬師のおばあちゃんが瓶を覗き込んで見るように身を乗り出した。目を細めて、顔を近づけてから少し離して、近づく。
「ほう……。妙な魔石だね。毒耐性か……。」
「はい。毒にやられた後にも生き延びたらしい魔獣から出てきました。この魔石水に、父が採ってきた果物の果汁を入れたら先程の光る水が出来たんです。」
おばあちゃんが魔石水の瓶を凝視している間に、兄上は木箱に入れたドームの果物をリュックから出していた。木箱の蓋を開けて中身を見せる。。
「この光る水の効果と、効果がどのくらい維持できるのかを確認してもらいたくて来ました。光水は昨晩作ったものです。」
「なるほど……。今ここで、作ったものと比べてみようかねぇ。」
薬師のおばあちゃんは、僕達が伝えたかったことを理解してくれたようだ。
椅子から立ち上がって魔石水の瓶とドームの果物を手に取り作業台の方に持っていく。手際よく魔石水をメジャーカップで量を計りながらビーカーに移し、ドームの果物をすり鉢で潰して搾り汁の重さを測ってからビーカーの中にドームの果実の搾り汁を少し垂らした。
ドームの果物の果汁を垂らした瞬間、昨晩と同じようにパーっと液体が輝いた。
見ているとちょっとドキドキする光景だ。
薬師のおばあちゃんは片眉を上げただけで動じた様子はなかった。光が落ちついてからビーカーに入った光水を持ってテーブルの上に置いた。
そして僕達が持ってきた光水もビーカーに移して隣に並べた。
また、じっと顔を近づけたり離したりを何回か繰り返す。
「見た目も効果も一日ではほとんど変わらないようだね。だが日が経ってどのくらい変化があるかは何日か様子を見る必要があるだろう。果実だから腐ってくるかもしれん。」
「……魔石を一緒に入れておいたら長持ちする?」
「魔石から漏れ出る魔力で状態を維持できる可能性はあるが、試してみないと何とも言えん。」
薬師のおばあちゃんはビーカーを皺のある細い指で持ち上げると、窓の光の方に翳して興味深げに眺めた。
「珍しい植物、新しい薬、は興味深いが……。最初から毒耐性の魔石水と混ぜて来たってことは、意図して作ったんだろう?……毒か何か……。」
「森の中に……泉の向こう岸ですが、皮が黒く爛れて、魔石に毒耐性がついている魔獣が何体か出たんです。
その毒を持った魔獣も近くにいるのではと思っています。」
瓶を見つめながらボソボソと述べる薬師のおばあちゃんの予測は当たっている
「心配なんです!毒で……!……倒れちゃうの!」
兄上のキリッとした回答に便乗して、僕も伝えようとしたけど、どう言ったら良いのかわからなくなってしまった。レオノールさんのことはまだ起きていない出来事だし。漠然と「心配」としか言えない。
僕の言葉が辿々しかったからか、薬師のおばあちゃんはチラリと僕を見て、片眉をピクッと持ち上げた。
「解毒剤は、作ろうとして作ったか……。……で、どうするんだい?品質が安定したものが作れたら、今度は大量生産か?」
「そこまでは……。まずは、この薬の効果を確認してもらいたくて来ました。」
「まあ、大量生産の依頼の時は、領主様とギルドを通した方が良いね。……この魔石と果物はもっと手に入るのかい?」
「果物はあと数個はあるのですが、また手に入るかはわかりません。父が狩りに行った先で採取したそうです。木に実っている数自体が多くなかったそうです。
場所も強い魔獣が多いエリアで、他で生えている場所を探すのも簡単ではないようです。
毒耐性の魔石はそれを含めて三つあります。
まだ同じような魔獣がいるんじゃないかと思うので、手に入るかもしれませんが……。」
「毒にやられた中で生き延びた魔獣なんて特殊だろうからね。
採取するにしても危険な場所は大人に任せておけ。無理をするんじゃないよ。」
薬師のおばあちゃんはギロリと目を光らせて僕達を睨むように見た。怒られているみたいで思わず肩を竦めてしまったけど、言われた内容は優しいってちょっと遅れたタイミングで気がついた。
「ほう……。妙な魔石だね。毒耐性か……。」
「はい。毒にやられた後にも生き延びたらしい魔獣から出てきました。この魔石水に、父が採ってきた果物の果汁を入れたら先程の光る水が出来たんです。」
おばあちゃんが魔石水の瓶を凝視している間に、兄上は木箱に入れたドームの果物をリュックから出していた。木箱の蓋を開けて中身を見せる。。
「この光る水の効果と、効果がどのくらい維持できるのかを確認してもらいたくて来ました。光水は昨晩作ったものです。」
「なるほど……。今ここで、作ったものと比べてみようかねぇ。」
薬師のおばあちゃんは、僕達が伝えたかったことを理解してくれたようだ。
椅子から立ち上がって魔石水の瓶とドームの果物を手に取り作業台の方に持っていく。手際よく魔石水をメジャーカップで量を計りながらビーカーに移し、ドームの果物をすり鉢で潰して搾り汁の重さを測ってからビーカーの中にドームの果実の搾り汁を少し垂らした。
ドームの果物の果汁を垂らした瞬間、昨晩と同じようにパーっと液体が輝いた。
見ているとちょっとドキドキする光景だ。
薬師のおばあちゃんは片眉を上げただけで動じた様子はなかった。光が落ちついてからビーカーに入った光水を持ってテーブルの上に置いた。
そして僕達が持ってきた光水もビーカーに移して隣に並べた。
また、じっと顔を近づけたり離したりを何回か繰り返す。
「見た目も効果も一日ではほとんど変わらないようだね。だが日が経ってどのくらい変化があるかは何日か様子を見る必要があるだろう。果実だから腐ってくるかもしれん。」
「……魔石を一緒に入れておいたら長持ちする?」
「魔石から漏れ出る魔力で状態を維持できる可能性はあるが、試してみないと何とも言えん。」
薬師のおばあちゃんはビーカーを皺のある細い指で持ち上げると、窓の光の方に翳して興味深げに眺めた。
「珍しい植物、新しい薬、は興味深いが……。最初から毒耐性の魔石水と混ぜて来たってことは、意図して作ったんだろう?……毒か何か……。」
「森の中に……泉の向こう岸ですが、皮が黒く爛れて、魔石に毒耐性がついている魔獣が何体か出たんです。
その毒を持った魔獣も近くにいるのではと思っています。」
瓶を見つめながらボソボソと述べる薬師のおばあちゃんの予測は当たっている
「心配なんです!毒で……!……倒れちゃうの!」
兄上のキリッとした回答に便乗して、僕も伝えようとしたけど、どう言ったら良いのかわからなくなってしまった。レオノールさんのことはまだ起きていない出来事だし。漠然と「心配」としか言えない。
僕の言葉が辿々しかったからか、薬師のおばあちゃんはチラリと僕を見て、片眉をピクッと持ち上げた。
「解毒剤は、作ろうとして作ったか……。……で、どうするんだい?品質が安定したものが作れたら、今度は大量生産か?」
「そこまでは……。まずは、この薬の効果を確認してもらいたくて来ました。」
「まあ、大量生産の依頼の時は、領主様とギルドを通した方が良いね。……この魔石と果物はもっと手に入るのかい?」
「果物はあと数個はあるのですが、また手に入るかはわかりません。父が狩りに行った先で採取したそうです。木に実っている数自体が多くなかったそうです。
場所も強い魔獣が多いエリアで、他で生えている場所を探すのも簡単ではないようです。
毒耐性の魔石はそれを含めて三つあります。
まだ同じような魔獣がいるんじゃないかと思うので、手に入るかもしれませんが……。」
「毒にやられた中で生き延びた魔獣なんて特殊だろうからね。
採取するにしても危険な場所は大人に任せておけ。無理をするんじゃないよ。」
薬師のおばあちゃんはギロリと目を光らせて僕達を睨むように見た。怒られているみたいで思わず肩を竦めてしまったけど、言われた内容は優しいってちょっと遅れたタイミングで気がついた。
389
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる