転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第75話 光水の鑑定

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薬師のおばあちゃんが瓶を覗き込んで見るように身を乗り出した。目を細めて、顔を近づけてから少し離して、近づく。

「ほう……。妙な魔石だね。毒耐性か……。」
「はい。毒にやられた後にも生き延びたらしい魔獣から出てきました。この魔石水に、父が採ってきた果物の果汁を入れたら先程の光る水が出来たんです。」

おばあちゃんが魔石水の瓶を凝視している間に、兄上は木箱に入れたドームの果物をリュックから出していた。木箱の蓋を開けて中身を見せる。。

「この光る水の効果と、効果がどのくらい維持できるのかを確認してもらいたくて来ました。光水は昨晩作ったものです。」

「なるほど……。今ここで、作ったものと比べてみようかねぇ。」

薬師のおばあちゃんは、僕達が伝えたかったことを理解してくれたようだ。
椅子から立ち上がって魔石水の瓶とドームの果物を手に取り作業台の方に持っていく。手際よく魔石水をメジャーカップで量を計りながらビーカーに移し、ドームの果物をすり鉢で潰して搾り汁の重さを測ってからビーカーの中にドームの果実の搾り汁を少し垂らした。

ドームの果物の果汁を垂らした瞬間、昨晩と同じようにパーっと液体が輝いた。
見ているとちょっとドキドキする光景だ。

薬師のおばあちゃんは片眉を上げただけで動じた様子はなかった。光が落ちついてからビーカーに入った光水を持ってテーブルの上に置いた。
そして僕達が持ってきた光水もビーカーに移して隣に並べた。

また、じっと顔を近づけたり離したりを何回か繰り返す。

「見た目も効果も一日ではほとんど変わらないようだね。だが日が経ってどのくらい変化があるかは何日か様子を見る必要があるだろう。果実だから腐ってくるかもしれん。」
「……魔石を一緒に入れておいたら長持ちする?」
「魔石から漏れ出る魔力で状態を維持できる可能性はあるが、試してみないと何とも言えん。」

薬師のおばあちゃんはビーカーを皺のある細い指で持ち上げると、窓の光の方に翳して興味深げに眺めた。

「珍しい植物、新しい薬、は興味深いが……。最初から毒耐性の魔石水と混ぜて来たってことは、意図して作ったんだろう?……毒か何か……。」
「森の中に……泉の向こう岸ですが、皮が黒く爛れて、魔石に毒耐性がついている魔獣が何体か出たんです。
その毒を持った魔獣も近くにいるのではと思っています。」

瓶を見つめながらボソボソと述べる薬師のおばあちゃんの予測は当たっている

「心配なんです!毒で……!……倒れちゃうの!」

兄上のキリッとした回答に便乗して、僕も伝えようとしたけど、どう言ったら良いのかわからなくなってしまった。レオノールさんのことはまだ起きていない出来事だし。漠然と「心配」としか言えない。

僕の言葉が辿々しかったからか、薬師のおばあちゃんはチラリと僕を見て、片眉をピクッと持ち上げた。

「解毒剤は、作ろうとして作ったか……。……で、どうするんだい?品質が安定したものが作れたら、今度は大量生産か?」
「そこまでは……。まずは、この薬の効果を確認してもらいたくて来ました。」
「まあ、大量生産の依頼の時は、領主様とギルドを通した方が良いね。……この魔石と果物はもっと手に入るのかい?」
「果物はあと数個はあるのですが、また手に入るかはわかりません。父が狩りに行った先で採取したそうです。木に実っている数自体が多くなかったそうです。
場所も強い魔獣が多いエリアで、他で生えている場所を探すのも簡単ではないようです。
毒耐性の魔石はそれを含めて三つあります。
まだ同じような魔獣がいるんじゃないかと思うので、手に入るかもしれませんが……。」
「毒にやられた中で生き延びた魔獣なんて特殊だろうからね。
採取するにしても危険な場所は大人に任せておけ。無理をするんじゃないよ。」

薬師のおばあちゃんはギロリと目を光らせて僕達を睨むように見た。怒られているみたいで思わず肩を竦めてしまったけど、言われた内容は優しいってちょっと遅れたタイミングで気がついた。
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