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第1章
第127話 滞在費という闇
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「キノコの毒で部下の騎士達がバタバタと倒れたのを見た後に『呪いの毒』の話でしょう?
キノコの毒の時だってもしも解毒剤が効かなかったらと思うとゾッとするのよ。
……勿論、部下達だけのことではなくて、私達には守るべき御方もいるから、できる限りのことはしたいの」
毒キノコのおかげ?で、解毒剤が役に立つって思ってくれたらしい。
代金を支払おうとしてくれたんだけど、金額の相場とか分からなくて困ってしまった。
「金額が分からないので父に支払っていただけますか?」
兄上が必殺父上に丸投げ作戦を遂行し始めた。レオノールさんが少し困ったと言うように眉を下げた。少し首を傾げて長いまつ毛で瞬きをパチパチとする。
「わかったわ。……けど、滞在費と一緒になっちゃったりしないかしらねぇ」
「滞在費、ですか?」
レオノールさんのどことなく意味ありげな言い方に兄上が訊き返すと、レオノールさんは口の端をキュッとあげて頷いた。
「ええ。滞在費として支払うと一部が辺境伯に流れてしまうじゃない?だけど解毒剤の代金は別にして欲しいのよね。まあ、男爵に相談してみようかしら」
滞在費が辺境伯に流れるってどういう意味!?って思ったら、兄上が同じことをレオノールさんに尋ねていた。
「滞在費って……、あの……ここでの滞在費として支払われたお金が、辺境伯様に支払われるってことですか?」
「ええ。紹介料として一部ね」
「ええ……」
兄上がめちゃめちゃ渋い顔をした。うわあ。辺境伯様の好感度がダダ下がりだ。まあ、僕とは直接交流はないし、元々別に高くなかったけど……。
兄上と僕が顔を見合わせてた様子を見たからなのかレオノールさんが、ジャラリと音を立てて小さい皮袋を差し出してきた。
「……やっぱり、ここで支払ってしまうわね。今手元に金貨十枚しかないのだけど。足りない分は後でまた渡すわ」
「え?金貨?そんなに受け取れません!」
ギョッとして兄上が手を引っ込めた。金貨って、銀貨何枚分だろう。普段お金を使わないから、よく分からないんだけど、金貨が価値が高いってことはわかる。
「あの解毒剤にはそれだけの価値があるわ。それに、部下を助けてもらった謝礼も考えるとこれだけじゃ足りないと思っているわ」
「それなら父に払ってください!金貨なんて持ったことなくて……」
「あら、希少な解毒剤は持ち歩いているのに?」
ふふっとレオノールさんは面白そうに笑って僕の手に金貨の入っているらしい皮袋を押し付けた。
しゃがみ込んで顔を近づけて小声で言う。
「……大金を持つのが怖かったら、すぐにお父上かお母上に渡してしまっても良いけれど帳簿につけるときに、今回の私達の滞在費に計上されないように気をつけてもらいなさいね」
「……そうしないと辺境伯様にピンハネされるってことですか?」
「ピンハネ……。まあ、はっきり言ってしまうとそうね。私は解毒剤は今回の訓練の滞在費とは別だと思っているわ。でも、辺境伯からは滞在している期間の費用だからって言われてかもしれないわね」
「ええ……セコ…んんんっ」
セコイと言いかけて兄上が軽く咳払いをした。辺境伯様はゴリゴリマッチョで強面の人だけどそんなに細かいのかな、と思ったら辺境伯様の侍従が紹介料とかを要求するらしい。
父上や母様は紹介料のことは知っているのかな。知ってるんだろうなぁ。
キノコの毒の時だってもしも解毒剤が効かなかったらと思うとゾッとするのよ。
……勿論、部下達だけのことではなくて、私達には守るべき御方もいるから、できる限りのことはしたいの」
毒キノコのおかげ?で、解毒剤が役に立つって思ってくれたらしい。
代金を支払おうとしてくれたんだけど、金額の相場とか分からなくて困ってしまった。
「金額が分からないので父に支払っていただけますか?」
兄上が必殺父上に丸投げ作戦を遂行し始めた。レオノールさんが少し困ったと言うように眉を下げた。少し首を傾げて長いまつ毛で瞬きをパチパチとする。
「わかったわ。……けど、滞在費と一緒になっちゃったりしないかしらねぇ」
「滞在費、ですか?」
レオノールさんのどことなく意味ありげな言い方に兄上が訊き返すと、レオノールさんは口の端をキュッとあげて頷いた。
「ええ。滞在費として支払うと一部が辺境伯に流れてしまうじゃない?だけど解毒剤の代金は別にして欲しいのよね。まあ、男爵に相談してみようかしら」
滞在費が辺境伯に流れるってどういう意味!?って思ったら、兄上が同じことをレオノールさんに尋ねていた。
「滞在費って……、あの……ここでの滞在費として支払われたお金が、辺境伯様に支払われるってことですか?」
「ええ。紹介料として一部ね」
「ええ……」
兄上がめちゃめちゃ渋い顔をした。うわあ。辺境伯様の好感度がダダ下がりだ。まあ、僕とは直接交流はないし、元々別に高くなかったけど……。
兄上と僕が顔を見合わせてた様子を見たからなのかレオノールさんが、ジャラリと音を立てて小さい皮袋を差し出してきた。
「……やっぱり、ここで支払ってしまうわね。今手元に金貨十枚しかないのだけど。足りない分は後でまた渡すわ」
「え?金貨?そんなに受け取れません!」
ギョッとして兄上が手を引っ込めた。金貨って、銀貨何枚分だろう。普段お金を使わないから、よく分からないんだけど、金貨が価値が高いってことはわかる。
「あの解毒剤にはそれだけの価値があるわ。それに、部下を助けてもらった謝礼も考えるとこれだけじゃ足りないと思っているわ」
「それなら父に払ってください!金貨なんて持ったことなくて……」
「あら、希少な解毒剤は持ち歩いているのに?」
ふふっとレオノールさんは面白そうに笑って僕の手に金貨の入っているらしい皮袋を押し付けた。
しゃがみ込んで顔を近づけて小声で言う。
「……大金を持つのが怖かったら、すぐにお父上かお母上に渡してしまっても良いけれど帳簿につけるときに、今回の私達の滞在費に計上されないように気をつけてもらいなさいね」
「……そうしないと辺境伯様にピンハネされるってことですか?」
「ピンハネ……。まあ、はっきり言ってしまうとそうね。私は解毒剤は今回の訓練の滞在費とは別だと思っているわ。でも、辺境伯からは滞在している期間の費用だからって言われてかもしれないわね」
「ええ……セコ…んんんっ」
セコイと言いかけて兄上が軽く咳払いをした。辺境伯様はゴリゴリマッチョで強面の人だけどそんなに細かいのかな、と思ったら辺境伯様の侍従が紹介料とかを要求するらしい。
父上や母様は紹介料のことは知っているのかな。知ってるんだろうなぁ。
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