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第1章
第139話 乾杯
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殿下達の「初討伐」の祝賀パーティは、普段の晩餐室ではなくて、
庭園に面した広間での開催になっていた。
すっかり日が暮れて、薄暗い室内に淡い光を帯びた飲み物が入ったゴブレットが配られていく。
「わあ、綺麗!」
「本当!」
シェリル嬢とリネリア嬢が目を輝かせて歓声をあげた。
「ほう!これはなかなか良いな!暗い場所が華やかになる」
辺境伯様も気に入ったようだ。低音のよく響く声で笑う。
お酒を飲む人にも最初は同じ飲み物が配られて行く。
「綺麗ですがこの飲み物はどうして光っているんですか?」
「魔力を通すと光を帯びる果実の果汁を使っているのです。先日、山の奥地まで狩りに行った際に偶然発見した果物でして」
「ああ、もしかして白い粒が集まったような大きい丸い果実のことですか」
ネイサン殿下が興味深げにゴブレットを見つめてから父上に尋ねた。
父上が答えるとネイサン殿下もどの果実のことかピンと来たみたいだ。
「面白いですね!その果実、王都に持って帰りたいです」
「お気に召したようで何よりです。ですが……、山の奥地の崖の中腹に生えているもので偶然採取できたものなのです」
父上が目に微笑みを浮かべながら申し訳なさそうに言う。
「はっはっは!牙虎が上から降ってくるような崖の中腹でしてな。なかなかスリリングな狩りでしたぞ」
辺境伯様の低音が響く。
「牙虎……。それは強い魔獣なんですか?」
「ええ。ナイフみたいな長くて鋭い牙を持った虎型の魔獣ですよ」
ネイサン殿下が興味深げに牙虎について尋ねて辺境伯様が答えた。牙虎!名前からして強そう。いつか僕も牙虎狩りに行けるかな。
「飛び跳ねて崖を登ってくる大変厄介な魔獣でした。いずれは殿下も討伐される機会があるかもしれませんなぁ。
……今日は、記念すべき『初討伐』を見事に成し遂げれられましたね。
ますますのご活躍をお祈りすると共に、初となる魔獣の討伐を達成させられたことをお祝い申し上げます。
おめでとうございます!良き日に!」
「「「良き日に!」」」
辺境伯様がお祝いの言葉を述べてから、果実炭酸光水の入ったゴブレットを掲げた。
乾杯の音頭を取って、皆が合わせて「乾杯」を口にして、ゴブレットを高く掲げた。
ゴブレット同士をカチンとぶつけたりするのかと思ったらそんなことはしないようだった。
ゴブレットを掲げたまま隣の兄上を見上げると、兄上は辺境伯の方をじっとみていた。
「怒り」のような気配がする。何か怒っているようだ。
「……兄上?」
「うん?」
兄上は僕の方に視線を動かすと、にこりと口元に笑みを浮かべて、手にしていたゴブレットを
カチンと僕のゴブレットに軽く当てた。
「あ……」
兄上はハッとして、目を一瞬泳がせた。
「良き日に!……グラスはぶつけないんだった……」
「……良き日に……、そうなの?」
「食器の音を立てるのは行儀良くないんだよ」
兄上がヒソヒソ声で言って肩をすくめた。チラリと視線を母様のいる方に一瞬動かした。ああ、後で母様に怒られちゃうかなぁ。
庭園に面した広間での開催になっていた。
すっかり日が暮れて、薄暗い室内に淡い光を帯びた飲み物が入ったゴブレットが配られていく。
「わあ、綺麗!」
「本当!」
シェリル嬢とリネリア嬢が目を輝かせて歓声をあげた。
「ほう!これはなかなか良いな!暗い場所が華やかになる」
辺境伯様も気に入ったようだ。低音のよく響く声で笑う。
お酒を飲む人にも最初は同じ飲み物が配られて行く。
「綺麗ですがこの飲み物はどうして光っているんですか?」
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「ああ、もしかして白い粒が集まったような大きい丸い果実のことですか」
ネイサン殿下が興味深げにゴブレットを見つめてから父上に尋ねた。
父上が答えるとネイサン殿下もどの果実のことかピンと来たみたいだ。
「面白いですね!その果実、王都に持って帰りたいです」
「お気に召したようで何よりです。ですが……、山の奥地の崖の中腹に生えているもので偶然採取できたものなのです」
父上が目に微笑みを浮かべながら申し訳なさそうに言う。
「はっはっは!牙虎が上から降ってくるような崖の中腹でしてな。なかなかスリリングな狩りでしたぞ」
辺境伯様の低音が響く。
「牙虎……。それは強い魔獣なんですか?」
「ええ。ナイフみたいな長くて鋭い牙を持った虎型の魔獣ですよ」
ネイサン殿下が興味深げに牙虎について尋ねて辺境伯様が答えた。牙虎!名前からして強そう。いつか僕も牙虎狩りに行けるかな。
「飛び跳ねて崖を登ってくる大変厄介な魔獣でした。いずれは殿下も討伐される機会があるかもしれませんなぁ。
……今日は、記念すべき『初討伐』を見事に成し遂げれられましたね。
ますますのご活躍をお祈りすると共に、初となる魔獣の討伐を達成させられたことをお祝い申し上げます。
おめでとうございます!良き日に!」
「「「良き日に!」」」
辺境伯様がお祝いの言葉を述べてから、果実炭酸光水の入ったゴブレットを掲げた。
乾杯の音頭を取って、皆が合わせて「乾杯」を口にして、ゴブレットを高く掲げた。
ゴブレット同士をカチンとぶつけたりするのかと思ったらそんなことはしないようだった。
ゴブレットを掲げたまま隣の兄上を見上げると、兄上は辺境伯の方をじっとみていた。
「怒り」のような気配がする。何か怒っているようだ。
「……兄上?」
「うん?」
兄上は僕の方に視線を動かすと、にこりと口元に笑みを浮かべて、手にしていたゴブレットを
カチンと僕のゴブレットに軽く当てた。
「あ……」
兄上はハッとして、目を一瞬泳がせた。
「良き日に!……グラスはぶつけないんだった……」
「……良き日に……、そうなの?」
「食器の音を立てるのは行儀良くないんだよ」
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