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第1章
第142話 光るゴブレット
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モヤっとした「害意」の気配の出所はいまいち辿れなかった。霧が満ちている場所で霧の出所を探すみたいな定まらない感じだ。僕自身が直接「害意」が向けられているわけじゃないからかもしれない。
「クリス?」
僕はキョロキョロと広間にいる騎士を見回していると、兄上が声をかけてきた。
広間にいる騎士達のほとんどは殿下達に注目を向けているようだった。周囲に目を向けながらも殿下達の状況を把握するように時々チラリと目線を送っているのがわかる。
一人、別の場所をじっと見ている騎士がいた。
その目線の先を追ってみると、壁際のドリンクコーナーがあった。
ドリンクコーナーには先ほどの侍女の姿が見える。ちょうど殿下の飲み物のおかわりを取りに行っているところだ。
飲み物が気になる?それとも侍女の人?
侍女の人の傍に置かれているゴブレットに目がいく。
《銅のゴブレット》
《灰色キノコの毒》
毒?
ギョッとしたのとほぼ同時に侍女の人の辺りでピカーッと何かが光った。
「キャッ!」
小さく悲鳴をあげて侍女の人が飛び退くように後ろに下がった。手には水差しを持っていて、淡い光を帯びた水滴が飛び散る。テーブルの上のゴブレットが光を放っていた。果実炭酸光水の淡い光じゃなくて、眩しいような強い光だ。
「え?え?何?」
「どうしたの?」
「光ってる」
「何?」
騒つく殿下達の声を聞きながら、僕は兄上の袖をぐいぐいと引っ張った。
「兄上、ど、毒が……!」
僕が囁くようにで言うと兄上はハッと目を見開いて、光っているゴブレットの方に振り向き、ゴブレットを指さして叫ぶように言った。
「確認して!急いで!」
いきなり騒然となった。
光の元に駆け寄る騎士。殿下達を守るように取り囲む騎士。
動揺する令嬢達。
庭園に居た騎士達も広間に駆け込んできた。
先ほど侍女の人をじっと見ていた騎士はどこに行ったんだろうと思って広間の中を見回す。あの人は明らかにゴブレットが光るより前に様子を伺っていたように見えた。光るのを知っていた?それとも……。
騎士が少し窓に近い位置に移動して立っていたのを見つけた。何だかちょっと動揺したような様子に見える。バタバタと庭園から騎士が駆け込んでくる様子を目で追っていた。
駆け込んでくる騎士の流れが途切れると、光るゴブレットの方を振り向いた。唇を歪めてギロリと目を動かした。
睨まれた?僕?いや多分、僕と兄上の後方に居る殿下を見ているのだと思う。怒っているような鋭い目線だ。
「害意」の気配が増すのを感じた。
この人?
この騎士が毒を用意したのか?
直感的にそう思った。誰かに知らせようと思って口を開きかけたけど、声を発する前に少し考えて躊躇する。毒を持った現場を見たわけじゃない。どうしよう。勘違いだったら?
どう言ったら良いだろうと頭を巡らせながら、兄上の袖を掴んだ。
「クリス?」
僕はキョロキョロと広間にいる騎士を見回していると、兄上が声をかけてきた。
広間にいる騎士達のほとんどは殿下達に注目を向けているようだった。周囲に目を向けながらも殿下達の状況を把握するように時々チラリと目線を送っているのがわかる。
一人、別の場所をじっと見ている騎士がいた。
その目線の先を追ってみると、壁際のドリンクコーナーがあった。
ドリンクコーナーには先ほどの侍女の姿が見える。ちょうど殿下の飲み物のおかわりを取りに行っているところだ。
飲み物が気になる?それとも侍女の人?
侍女の人の傍に置かれているゴブレットに目がいく。
《銅のゴブレット》
《灰色キノコの毒》
毒?
ギョッとしたのとほぼ同時に侍女の人の辺りでピカーッと何かが光った。
「キャッ!」
小さく悲鳴をあげて侍女の人が飛び退くように後ろに下がった。手には水差しを持っていて、淡い光を帯びた水滴が飛び散る。テーブルの上のゴブレットが光を放っていた。果実炭酸光水の淡い光じゃなくて、眩しいような強い光だ。
「え?え?何?」
「どうしたの?」
「光ってる」
「何?」
騒つく殿下達の声を聞きながら、僕は兄上の袖をぐいぐいと引っ張った。
「兄上、ど、毒が……!」
僕が囁くようにで言うと兄上はハッと目を見開いて、光っているゴブレットの方に振り向き、ゴブレットを指さして叫ぶように言った。
「確認して!急いで!」
いきなり騒然となった。
光の元に駆け寄る騎士。殿下達を守るように取り囲む騎士。
動揺する令嬢達。
庭園に居た騎士達も広間に駆け込んできた。
先ほど侍女の人をじっと見ていた騎士はどこに行ったんだろうと思って広間の中を見回す。あの人は明らかにゴブレットが光るより前に様子を伺っていたように見えた。光るのを知っていた?それとも……。
騎士が少し窓に近い位置に移動して立っていたのを見つけた。何だかちょっと動揺したような様子に見える。バタバタと庭園から騎士が駆け込んでくる様子を目で追っていた。
駆け込んでくる騎士の流れが途切れると、光るゴブレットの方を振り向いた。唇を歪めてギロリと目を動かした。
睨まれた?僕?いや多分、僕と兄上の後方に居る殿下を見ているのだと思う。怒っているような鋭い目線だ。
「害意」の気配が増すのを感じた。
この人?
この騎士が毒を用意したのか?
直感的にそう思った。誰かに知らせようと思って口を開きかけたけど、声を発する前に少し考えて躊躇する。毒を持った現場を見たわけじゃない。どうしよう。勘違いだったら?
どう言ったら良いだろうと頭を巡らせながら、兄上の袖を掴んだ。
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