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第1章
第204話 兄上は怒っている
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騎士さん達の前に立って兄上が抗議の声を上げた。
「どういうことなんですか?二つの檻で同じ現象が起きたってことは、たまたま鍵の不具合があったってわけじゃないですよね?
もし、ゲンティアナの屋敷の敷地内に入れていたら、大変なことになっていましたよ!」
「……我々も気が付かなかった……。今まで、背びれイタチやら角兎やらを捕獲した時はなんともなかったから」
「魔法を使う魔獣じゃなかったからでしょう。それと、訓練の時も檻から出して土に埋めてたから。
あの蛇魔獣みたいに魔法を使う魔獣だったら、知らないうちに鍵が開いて逃げ出してたかもしれないじゃないですか」
兄上が言う通り、もしも、訓練場の中とかに置かれていたら、蛇魔獣が「シャー」とか言っているうちに鍵が開いて夜中に逃げ出したりしてたかもと考えるとゾッとする。
目の前で逃げ出したならどうとでもなるけど、見ていない時に屋敷内を魔獣が彷徨くなんて。メイリが怖がっちゃうよ!殿下達だってびっくりしちゃうんじゃないかな。
「それに、檻に向かって魔法を放つ訓練なんてしていたら殿下だって危険でしたよね!」
「それについては我々も今気がついて非常に危険だと認識した」
騎士さん達の顔が青ざめている。一人が報告に行くと言って屋敷がある方に駆け出して行った。
「……始末しちゃって良いですか?
町に危険が及ぶと判断したら討伐しても構わないとレオノールさんからは言われているんですが」
兄上が腰に差している剣の柄に手を添えて冷たい声音で言う。声は冷たいけど、「怒り」の気配が凄い。
全身から魔力が炎みたいに立ち昇ってる。
父上が怒ってる時にちょっと似てる気がする。
「ま、待ってくれ。今報告に行っているから!もしも、今、魔獣が逃げ出したら我々が責任を持って始末する」
騎士さんが焦った様子で兄上と檻の間に立って説得しようとしている。
兄上は「怒り」の気配のままだ。
「……信用できません。魔獣が逃げ出したら?
貴方達が始末するという言葉を信じて、町の人が魔獣に襲われたらどうするんですか。」
「し、しかし……」
騎士さん達は困ってる様子だ。誰か呼びに行ったのならすぐにやってくるよね。檻と魔獣は証拠なんだからこのまま見てもらった方が良い気がするんだけどな。
「兄上。他の人を呼びに行ってるんでしょう?檻を見てもらった方が良いんじゃない?」
兄上に声を掛けると、僕の方を振り向いた兄上の眉間に皺が寄っていた。騎士さん達はちょっとほっとしたみたいな顔をしている。
「クリス、王宮騎士の顔を立てるためにゲンティアナの地を危険に晒す訳にはいかないんだぞ」
「顔を立てる?せっかく呼びに行ったのになって。ねえ、魔獣が出ないようにするなら土壁魔石で壁を作って囲もうか」
僕は土壁の魔法陣を刻んだ魔石を取り出して兄上に見せた。背びれイタチの討伐訓練の時に騎士さん達が土魔法で囲いを作ってたけど、それの魔法陣魔石バージョンだ。
オレンジ色の魔石を持った手を振ったら兄上が訝しげに目を細めた。
「……土壁の魔法に反応して檻が開くんじゃないか?」
「十分離れてたら大丈夫だと思うけど」
魔法が降りかからない距離なら檻の鍵の魔法陣は浮かび上がらなかった。現に、空の檻に魔法を撃ったって他の檻の鍵は開かなかったし。
兄上は眉間に皺を寄せたまま少し考えた様子になってから口を開いた。
「……その土壁魔石のせいじゃなかったとしても、土壁を作っている最中に檻が開いたりしたら、土壁魔石のせいにされかねない。人が来るのを待とう」
結局、このまま誰か来るのを待つことになった。土壁を作っている最中に檻が開いたら魔獣を倒しちゃえば良いんじゃないのかなって思ったけど、違うらしい。
僕達のせいみたいになったら困るってことかな。
尚、ボブはちょっと離れたところに黙って立っているけど手には投げナイフが握られている。いつでも投げられますよーって感じで。
「どういうことなんですか?二つの檻で同じ現象が起きたってことは、たまたま鍵の不具合があったってわけじゃないですよね?
もし、ゲンティアナの屋敷の敷地内に入れていたら、大変なことになっていましたよ!」
「……我々も気が付かなかった……。今まで、背びれイタチやら角兎やらを捕獲した時はなんともなかったから」
「魔法を使う魔獣じゃなかったからでしょう。それと、訓練の時も檻から出して土に埋めてたから。
あの蛇魔獣みたいに魔法を使う魔獣だったら、知らないうちに鍵が開いて逃げ出してたかもしれないじゃないですか」
兄上が言う通り、もしも、訓練場の中とかに置かれていたら、蛇魔獣が「シャー」とか言っているうちに鍵が開いて夜中に逃げ出したりしてたかもと考えるとゾッとする。
目の前で逃げ出したならどうとでもなるけど、見ていない時に屋敷内を魔獣が彷徨くなんて。メイリが怖がっちゃうよ!殿下達だってびっくりしちゃうんじゃないかな。
「それに、檻に向かって魔法を放つ訓練なんてしていたら殿下だって危険でしたよね!」
「それについては我々も今気がついて非常に危険だと認識した」
騎士さん達の顔が青ざめている。一人が報告に行くと言って屋敷がある方に駆け出して行った。
「……始末しちゃって良いですか?
町に危険が及ぶと判断したら討伐しても構わないとレオノールさんからは言われているんですが」
兄上が腰に差している剣の柄に手を添えて冷たい声音で言う。声は冷たいけど、「怒り」の気配が凄い。
全身から魔力が炎みたいに立ち昇ってる。
父上が怒ってる時にちょっと似てる気がする。
「ま、待ってくれ。今報告に行っているから!もしも、今、魔獣が逃げ出したら我々が責任を持って始末する」
騎士さんが焦った様子で兄上と檻の間に立って説得しようとしている。
兄上は「怒り」の気配のままだ。
「……信用できません。魔獣が逃げ出したら?
貴方達が始末するという言葉を信じて、町の人が魔獣に襲われたらどうするんですか。」
「し、しかし……」
騎士さん達は困ってる様子だ。誰か呼びに行ったのならすぐにやってくるよね。檻と魔獣は証拠なんだからこのまま見てもらった方が良い気がするんだけどな。
「兄上。他の人を呼びに行ってるんでしょう?檻を見てもらった方が良いんじゃない?」
兄上に声を掛けると、僕の方を振り向いた兄上の眉間に皺が寄っていた。騎士さん達はちょっとほっとしたみたいな顔をしている。
「クリス、王宮騎士の顔を立てるためにゲンティアナの地を危険に晒す訳にはいかないんだぞ」
「顔を立てる?せっかく呼びに行ったのになって。ねえ、魔獣が出ないようにするなら土壁魔石で壁を作って囲もうか」
僕は土壁の魔法陣を刻んだ魔石を取り出して兄上に見せた。背びれイタチの討伐訓練の時に騎士さん達が土魔法で囲いを作ってたけど、それの魔法陣魔石バージョンだ。
オレンジ色の魔石を持った手を振ったら兄上が訝しげに目を細めた。
「……土壁の魔法に反応して檻が開くんじゃないか?」
「十分離れてたら大丈夫だと思うけど」
魔法が降りかからない距離なら檻の鍵の魔法陣は浮かび上がらなかった。現に、空の檻に魔法を撃ったって他の檻の鍵は開かなかったし。
兄上は眉間に皺を寄せたまま少し考えた様子になってから口を開いた。
「……その土壁魔石のせいじゃなかったとしても、土壁を作っている最中に檻が開いたりしたら、土壁魔石のせいにされかねない。人が来るのを待とう」
結局、このまま誰か来るのを待つことになった。土壁を作っている最中に檻が開いたら魔獣を倒しちゃえば良いんじゃないのかなって思ったけど、違うらしい。
僕達のせいみたいになったら困るってことかな。
尚、ボブはちょっと離れたところに黙って立っているけど手には投げナイフが握られている。いつでも投げられますよーって感じで。
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