転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第224話 新たな魔道具

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毒耐性水が作れるカップ以外にももう一つ作りたいものがあったんだ。

魔獣の檻がまずい状態だってわかった時、すぐに父上を呼びに行った方が良いって思ったけど呼びに行っている間に魔獣が檻から出ちゃったらと思うと、その場を離れられなかったんだよね。
騎士さんの一人が報告に行ってくれたみたいだから、それで良いかって思ったのもある。

だけど、報告に向かったのが王宮騎士さんだったからか、すぐに駆けつけてきてくれたのはレオノールさんだった。父上が到着した時には魔獣を倒し終わった後だった。
父上に話が伝わるのに時間がかかってしまったんだと思う。

だから、父上にすぐ連絡ができるような魔道具を作ろかなって思ったんだ。

この間、風魔法で音を集めて、カップに耳を当てたら遠くの音が聞こえるようにできたので、もうちょっと改良したら両方の声が届くようになるんじゃないかと思うんだ。

風魔石を使って、目的地まで風を送れられれば良いんだけど、問題はどうやって目的地を見つけるかだな。
カップに風を集めている時は、僕の目の前にカップがあったから音を集める場所を指定するのは難しくなかった。
問題は、相手がどこにいるかがわからないのに音を送るってことだ。

風魔法が届く範囲だったら、音を送る側と受け取る側で特定の波紋を持った魔力を識別できるようにすればどうだろう。
雷魔石に小さく父上の似顔絵を彫る。似顔絵を共通の識別情報にして、魔法陣と一緒に風魔石に書き込む。
うっかりして作り始めてから気がついたけど、お話しをするには、聞く方と話す方の両方が必要だったんだよね。

一つの魔石じゃなくて、聞くのと話すので二つに分けよう。
耳飾りにしようかと思ったけど、材料がないから指輪と腕輪にする。耳に手を添えたときに指輪が耳の近くにきて、腕輪が口の近くになったら話をしやすい気がする。

父上と僕とでお話し……、兄上ともお話したいな。メイリとも母様とも。……魔石が沢山必要だなぁ。
それと、狩りで危険な時もあるかもしれないから、ボブとも連絡ができた方が良いかな。
指輪と腕輪をジャラジャラと沢山付けていたら重たいから、一つの指輪と腕輪に魔石をいくつも埋め込むか……。
腕輪はまだスペースがあるけど、指輪に沢山魔石を埋め込むのは厳しい。
お話する人を登録する魔石は一つにして、誰とお話をするか選ぶような機能の魔石もつければ良いかな。
魔獣の檻の鍵のところで浮かび上がった魔法陣には数字が出ていた。
起動するたびに数字が減っていってゼロになったら、鍵を開ける魔法が起動するようになっていた。
あの時に浮かび上がった魔法陣を参考にすれば、数字によって起動する魔法を変えることができそうだ。

翌朝、まだ空が明るくなり始めたばかりの頃、兄上と待ち合わせてから厨房に向かうことになった。
もうジャックが朝食のパンを焼いている頃だから、薬師のおばあちゃんに持っていくパンを貰ってくるんだ。

「あ、兄上。魔道具作ったよ。サンプルと……」

厨房に向かう前に、離れの玄関ホールで、陶器のカップと蓋付きのカップを取り出して見せた。

兄上は、毒耐性魔石が底に埋め込まれた陶器のカップは平然と見ていたのに、蓋付きのカップの上に手を置いて魔力を流したらカップに水が充されたのを見たら、眉間に皺を寄せた。

「……これは、ちょっと機能を盛り込みすぎじゃないか?便利すぎて目立つぞ」
「水が出る魔道具とかは、旅の人も持っていたりするから大丈夫かなと思ったんだけど……」
「毒耐性の機能も加わるからね。それに、この水、妙に冷えてないか?」
「冷水にしてみたんだけど」
「冷水は毒耐性には関係ないだろう?」
「でも、魔力を含んだ水の方が、早く毒耐性水が出来るみたいなんだよ」
「冷水の方が魔力を多く含んでいるってことか?でも、多少時間がかかっても、毒耐性の水が出来るだけで十分だよ」

目立っちゃうのは良くないってことで、ゴーシュさん達にサンプルで見せるのは、底に毒耐性魔石を埋め込んだ陶器のカップにすることになった。
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