転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

文字の大きさ
249 / 334
第2章

第249話 商業ギルドへの勘違い

しおりを挟む
「商業ギルドって、お手紙をパパッと遅れるんでしょう?似たようなものが作れないかなって思って作ってみたんだ」
「……何を作ったって?」

兄上はパンをちぎっていた手を止めて怪訝な顔をした。

「……クリス兄様、今度は一体何を?」

メイリは食べていたものを慌てて飲み込んでから、口を開いた。なぜギョッとした顔をしているんだろう。

「手紙の魔道具だよ。商業ギルドにはきっと立派なのがあるんだろうと思ったんだけど、家族で手軽に使えるものができないかなって思って。でもちょっとゴツい造りになっちゃった」

「手紙」の魔道具をもう一つ「収納」から出して、兄上の隣に置いた。
自分の席に腰を下ろして、「手紙」の魔道具でメッセージを打ち込む。

『明日は魔魚釣りに行こうよ』

「送る」と書かれた魔石に魔力を流すと、兄上の席の隣に置いた「手紙」の魔道具が少し光った。

「……魔魚釣りとか、呑気だな……」
「え?見せて見せて!」

兄上にメッセージは届いたようだ。
メイリが席を立って兄上の隣にある魔道具を見に行く。

「メイリ、食事中に席を立つのはお行儀良くないよ」
「それなら魔道具を出すのは食事が終わってからにしてよ。兄様達だけで楽しむのはずるいわ!」
「……そうだね。ごめん。……僕がメイリの隣に移動すれば良いかな」
「わたしがクリス兄様の隣に移動するわ!」

僕と兄上が少し間を空けてテーブルに隣り合っていて、メイリの席はテーブルの向かい側だった。
母様が来たらメイリの隣に腰を下ろす予定だった。

メイリは自分の席からグラスとカトラリーを持って、移動してきた。僕と兄上でメイリのお皿を運ぶ。

「……本当は、食べ終わってからにした方が良いんだぞ」
「気になってしまって、落ち着いて食べられないわ」

「手紙」の魔道具を凝視している兄上とメイリの姿を見ながら、僕は角兎のクリーム煮を一口食べる。
口の中に入れると肉がほろほろっとなる。優しい味だ。

「クリス兄様、使い方を教えてよ」

メイリにせがまれて、ざっくりと使い方の説明をすると、直ぐに使い始めるメイリ。
要領を得るのが早いな。流石メイリだ。

「『こんばんは』……うん。こっちからも送るぞ」
「『クリスは何か勘違いしている』……うん。そうかも」
「え?」
僕はメイリが見ていた魔道具を覗き込んでから、兄上の方を振り向いた。

「勘違いって何?」
「商業ギルドには、多分、こんな魔道具はないよ」
「え?これだと、しょぼすぎるってこと?」
「いや……。多分、商業ギルド同士の連絡手段のことだと思うんだけど、
 商業ギルドでは、魔鳥に手紙を運ばせてたよ。何度か行ったことがあるけど」
「魔鳥?魔獣を使うの?テイムってやつ?」

商業ギルドなら凄い魔道具を使っているのかと思ったら、違ってたらしい。急ぎの連絡の時は、魔鳥に手紙を持たせて運ばせているらしい。
魔獣を使うスキルを持っている人がいると聞いたことがある。それだったら、どこの商業ギルドでもテイムができる人がいるんだろうか。ちょっと気になるなぁ。

「魔鳥にどうやって指示しているかは知らないけど、魔鳥なんだよ。連絡手段は。
 こういう魔道具を使っているわけじゃないんだ」
「王都でも?」
「王都は……、知らないけど」

魔鳥の方が便利なのかな。
魔鳥を使った場合は、ちゃんと手紙を封書のまま送れるから、ギルドの人に読まれたりもしないしちょっとした物なら一緒に運んでもらえるのかもしれない。

「そうかぁ。魔鳥の方が良いのかな」
「いや。もし、この魔道具で、遠くにすぐにメッセージを送ることができるなら、凄く便利なものだと思うよ。
 これは、風魔法でメッセージを運ぶのか?どのくらいの距離まで行けそうなんだ?」
「距離は『お話』の魔道具で繋がるところなら大丈夫だと思う。もっと遠くへだと……。何か方法を考えないと」
「うん。とりあえず、母上に相談しよう」

兄上は、「お話」の魔道具で母様に連絡をして「なるべく早く戻ってきて」って伝えていた。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

処理中です...