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第1話
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ブロワ公爵邸の見事な薔薇園に設置されたベンチにこの公爵邸の主たるジュリアンとその妻フルールは腰掛け、夫婦の時間を楽しんでいる。
「お話には聞いておりましたが、どれも素晴らしい薔薇ですわね。珍しい紫色の薔薇や青い薔薇まであって驚きましたわ」
「フルールが一番好きな花が薔薇だと聞いて、用意したのです。お気に召してもらえたようで何よりです」
ジュリアンはそう言って、美しい顔でふんわりと微笑む。
胸までの長さの淡い金色の髪を左耳の下でリボンで一つに緩くまとめ、いつもは少しつり目気味の青空のように澄んだ水色の瞳はフルールに対して愛を如実に語っていた。
ジュリアンの微笑みがあまりに美しくて、見つめられたフルールはつい赤面してしまう。
自分が好きな花を覚えていてくれただけでなく、珍しい色の薔薇まで見せてもらえてフルールは感激した。
そうやって二人は二人の世界に浸っていたところに、執事のクロヴィスが慌てた様子で駆けつけてくる。
「ご歓談中のところ、失礼致します。旦那様の幼馴染のキャシー様がお見えになられて。私が偶々席を外していた為に彼女に対応したのが新人の使用人で、屋敷内に通してしまい、旦那様と会うまでは帰らないと仰られております。大変申し訳ございませんが、応接室までお願い致します」
「わかった。会いたくないけれど、会わないと帰ってくれないなら仕方ない。その新人には私からも注意をするが、クロヴィスからも指導を頼む」
「かしこまりました」
ジュリアンはフルールに向き合う。
「フルール。今から私は客人に会わなくてはならなくなりました。大変申し訳ありませんが、フルールもついてきて下さいませんか? キャシーとは誓って男女の仲だったことはなく、むしろ迷惑な存在だったけれど、私が女性と二人で話をするのはフルールもモヤモヤすると思いますので」
「わかりましたわ。同席させて頂きます」
「ありがとうございます、フルール」
それから二人は薔薇園から応接室へ移動する。
道中、フルールはキャシーについてジュリアンから説明を受ける。
キャシー・ボナリー子爵令嬢。
年齢は16歳で、ジュリアンの4歳年下。
両親が商会を営んでおり、四年程前に両親が隣の国バンベルクに商会の支店を出店し、その立ち上げ・運営の為に一家で移住することになったが、恐らくその支店の経営が軌道に乗った為、もう彼女の両親がバンベルクにいる必要がなくなったのでこちらの国に戻ってくることになったのではないかとのこと。
応接室のドアをクロヴィスがノックして、入室する。
「旦那様と奥様のフルール様がお見えになられました」
「はーい! 入ってもらって!」
中にいた客人はジュリアンが入室するなり、フルールのことなど眼中になく、ダッシュでジュリアンの方へ駆けつけて抱きつく。
(え? クロヴィスはちゃんと私のことも妻のフルールと言いましたし、来てるって今言いましたわよね? 妻の前で夫に抱きつくなんて非常識ですわ)
ジュリアンに抱きついたキャシーは猫撫で声でねっとりと話しかける。
「ジュリアン。私、やっとこの国に戻って来れたわ! 婚約してから長らく待たせてごめんなさいね。さぁ、私と結婚しましょう!!」
「何を言ってるのですか? 私とキャシーが婚約関係にあったことはないですし、男女の仲だったこともありません。それに私はフルールと既に結婚しています」
抱きついてきたキャシーを強引に剥がしつつ、ジュリアンは冷ややかに告げる。
キャシーはジュリアンの返答に納得出来なかったのか、頬を膨らませる。
「じゃあ、そのフルールとやらと離婚して私と再婚しなさい!! これは命令よ!!」
(……何故あなたの言いなりに離婚しなくてはならないのかしら?)
「お話には聞いておりましたが、どれも素晴らしい薔薇ですわね。珍しい紫色の薔薇や青い薔薇まであって驚きましたわ」
「フルールが一番好きな花が薔薇だと聞いて、用意したのです。お気に召してもらえたようで何よりです」
ジュリアンはそう言って、美しい顔でふんわりと微笑む。
胸までの長さの淡い金色の髪を左耳の下でリボンで一つに緩くまとめ、いつもは少しつり目気味の青空のように澄んだ水色の瞳はフルールに対して愛を如実に語っていた。
ジュリアンの微笑みがあまりに美しくて、見つめられたフルールはつい赤面してしまう。
自分が好きな花を覚えていてくれただけでなく、珍しい色の薔薇まで見せてもらえてフルールは感激した。
そうやって二人は二人の世界に浸っていたところに、執事のクロヴィスが慌てた様子で駆けつけてくる。
「ご歓談中のところ、失礼致します。旦那様の幼馴染のキャシー様がお見えになられて。私が偶々席を外していた為に彼女に対応したのが新人の使用人で、屋敷内に通してしまい、旦那様と会うまでは帰らないと仰られております。大変申し訳ございませんが、応接室までお願い致します」
「わかった。会いたくないけれど、会わないと帰ってくれないなら仕方ない。その新人には私からも注意をするが、クロヴィスからも指導を頼む」
「かしこまりました」
ジュリアンはフルールに向き合う。
「フルール。今から私は客人に会わなくてはならなくなりました。大変申し訳ありませんが、フルールもついてきて下さいませんか? キャシーとは誓って男女の仲だったことはなく、むしろ迷惑な存在だったけれど、私が女性と二人で話をするのはフルールもモヤモヤすると思いますので」
「わかりましたわ。同席させて頂きます」
「ありがとうございます、フルール」
それから二人は薔薇園から応接室へ移動する。
道中、フルールはキャシーについてジュリアンから説明を受ける。
キャシー・ボナリー子爵令嬢。
年齢は16歳で、ジュリアンの4歳年下。
両親が商会を営んでおり、四年程前に両親が隣の国バンベルクに商会の支店を出店し、その立ち上げ・運営の為に一家で移住することになったが、恐らくその支店の経営が軌道に乗った為、もう彼女の両親がバンベルクにいる必要がなくなったのでこちらの国に戻ってくることになったのではないかとのこと。
応接室のドアをクロヴィスがノックして、入室する。
「旦那様と奥様のフルール様がお見えになられました」
「はーい! 入ってもらって!」
中にいた客人はジュリアンが入室するなり、フルールのことなど眼中になく、ダッシュでジュリアンの方へ駆けつけて抱きつく。
(え? クロヴィスはちゃんと私のことも妻のフルールと言いましたし、来てるって今言いましたわよね? 妻の前で夫に抱きつくなんて非常識ですわ)
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「ジュリアン。私、やっとこの国に戻って来れたわ! 婚約してから長らく待たせてごめんなさいね。さぁ、私と結婚しましょう!!」
「何を言ってるのですか? 私とキャシーが婚約関係にあったことはないですし、男女の仲だったこともありません。それに私はフルールと既に結婚しています」
抱きついてきたキャシーを強引に剥がしつつ、ジュリアンは冷ややかに告げる。
キャシーはジュリアンの返答に納得出来なかったのか、頬を膨らませる。
「じゃあ、そのフルールとやらと離婚して私と再婚しなさい!! これは命令よ!!」
(……何故あなたの言いなりに離婚しなくてはならないのかしら?)
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