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第2話
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王宮での話し合いが行われた一週間後。
今日はアルノーとオデットの結婚式だ。
雲一つない青空で今日結ばれる二人を天が祝福しているかのようである。
王太子殿下と名門公爵家令嬢の結婚式ということで、代々王族が結婚式を挙げてきた聖ヴィエンヌ大聖堂で行われることになっている。
国を挙げての結婚式なので招待客も国中の貴族だけにとどまらず、付き合いのある近隣諸外国の要人も数多く招待されており、大人数で二人を祝う盛大な式になる予定だ。
この時点で、アルノーは重婚することを公表していない。
まず、元々アルノーの正式な婚約者であるオデットと挙式してから、次にキャロリンと挙式する。
その時にどちらが正妃でどちらが側妃か公表する予定だ。
つまり今日の結婚式の招待客は国王夫妻とアルバネル公爵夫妻以外を除き、アルノーが重婚することを知らず、アルノーとオデットが結婚するのでお祝いする為に参加している。
招待客はそれぞれ持参した招待状を受付に見せ、入場許可をもらい、指定された客席に座り、今か今かと式が始まるのを待っている。
純白のフロックコートに身を包んだアルノーがまず入場し、神父が立つ祭壇付近まで歩を進める。
そして次は花嫁の入場だ。
大聖堂に備え付けられているパイプオルガンによる荘厳な演奏が鳴り響く。
大聖堂の扉付近で花嫁の父親であるアルバネル公爵がオデットをエスコートする為に待っている。
しかし待てど暮らせど花嫁がやって来る気配はない。
招待客がざわつき始め、花嫁の様子を確認する為に、アルバネル公爵が公爵家から結婚式の手伝いをさせる為に連れてきていたメイドに花嫁を探すよう命じる。
数分後、そのメイドは息を切らしながら戻って来た。
その手には白い封筒が一通握られている。
「どうしたんだ? オデットは?」
メイドはアルバネル公爵の問いに力なく首を振る。
「オデットお嬢様はここには来ません。私がお嬢様を探している途中にちょうど公爵家の他の使用人にばったり出くわしました。公爵邸ではもうそろそろ起きなければ式の準備に間に合わない時間になってもオデットお嬢様が起きていらっしゃらないので、メイドがお嬢様のお部屋を開けたら部屋はもぬけの殻。そしてベッドの横の小さな机の上にこの手紙が置いてあったそうです。それから急いで旦那様にお伝えしようと手紙を持ってこの大聖堂まで来たそうです」
アルバネル公爵はメイドから封筒を受け取ると開封する。
「何が書いてあるんだ?」
封筒に入っていた便箋には流麗な字でこう書かれていた。
”私はアルノー王太子殿下とは結婚出来ません。私は旅に出ますので、私のことは探さないで下さい。二度と公爵家へは帰らないので、勘当扱いで私の籍は公爵家から除籍して頂いて構いません。今までお世話になりました。”
「くそっ!! オデットめ、この儂の顔に泥を塗ってくれおって!!」
手紙を読み終えたアルバネル公爵は憤怒の形相で手紙をぐしゃぐしゃに丸めて地面に叩きつけた。
メイドは小声で事情を説明したが、手紙を読んだアルバネル公爵が口汚く大声で罵った為、招待客は結婚式当日に花嫁が逃げたということを察した。
中にはアルノーとオデットの学園時代の同級生も参加していた為、彼らはオデットが逃亡した理由にもしかしたら学園時代、アルノーが付き合っていたキャロリン・ルーキエ男爵令嬢絡みで自分達の知らない何かがあったのかもしれないと推測した。
元々彼らは今日アルノーとオデットの結婚式が行われたということは、アルノーとキャロリンはやはり王太子と男爵令嬢では身分諸々釣り合いが取れない為、結局二人は別れることになったのだと思っていたのだ。
尤も彼らも客観的に見てキャロリンが王太子妃として相応しいとは全く思っていなかった。
公爵の罵声はアルノーの耳にも届いており、アルノーは自分が結婚式当日に花嫁に逃げられた花婿になるということを悟った。
アルノーはアルバネル公爵のように大声で口汚く罵ったりはしなかったが、内心はオデットへの怒りに満ちていた。
アルノーはキャロリンだけでは問題があるとわかっていたからこそオデットとも結婚することに決めた。
先日王宮で説明した時は受け入れた様子だったから安心したのに、いざ結婚式当日を迎えたら逃げるだなんて。
あの日アルノーは確かにオデットが納得するような説明はしなかったが、だからと言って逃げ出すなんて思いもよらなかった。
逃げ出したら彼女のみならずアルバネル公爵家にも泥を塗ることになる。
それをわかっていながら逃げるとは。
次、オデットに会ったら文句の一つでも言ってやらねば気が済まない。
結婚式に花嫁が来ないなんて相当な屈辱だ。
アルノーは怒り狂っていたが、頭に浮かんでいるのはどれもこれも自分の都合ばかりでオデットの気持ちなんて欠片も考えていないことに気づいていない。
結婚式は花嫁が来ないことが判明したので、解散となった。
盛大に行う予定だった王太子の結婚式で花嫁逃亡という何とも後味の悪い結婚式だった。
今日はアルノーとオデットの結婚式だ。
雲一つない青空で今日結ばれる二人を天が祝福しているかのようである。
王太子殿下と名門公爵家令嬢の結婚式ということで、代々王族が結婚式を挙げてきた聖ヴィエンヌ大聖堂で行われることになっている。
国を挙げての結婚式なので招待客も国中の貴族だけにとどまらず、付き合いのある近隣諸外国の要人も数多く招待されており、大人数で二人を祝う盛大な式になる予定だ。
この時点で、アルノーは重婚することを公表していない。
まず、元々アルノーの正式な婚約者であるオデットと挙式してから、次にキャロリンと挙式する。
その時にどちらが正妃でどちらが側妃か公表する予定だ。
つまり今日の結婚式の招待客は国王夫妻とアルバネル公爵夫妻以外を除き、アルノーが重婚することを知らず、アルノーとオデットが結婚するのでお祝いする為に参加している。
招待客はそれぞれ持参した招待状を受付に見せ、入場許可をもらい、指定された客席に座り、今か今かと式が始まるのを待っている。
純白のフロックコートに身を包んだアルノーがまず入場し、神父が立つ祭壇付近まで歩を進める。
そして次は花嫁の入場だ。
大聖堂に備え付けられているパイプオルガンによる荘厳な演奏が鳴り響く。
大聖堂の扉付近で花嫁の父親であるアルバネル公爵がオデットをエスコートする為に待っている。
しかし待てど暮らせど花嫁がやって来る気配はない。
招待客がざわつき始め、花嫁の様子を確認する為に、アルバネル公爵が公爵家から結婚式の手伝いをさせる為に連れてきていたメイドに花嫁を探すよう命じる。
数分後、そのメイドは息を切らしながら戻って来た。
その手には白い封筒が一通握られている。
「どうしたんだ? オデットは?」
メイドはアルバネル公爵の問いに力なく首を振る。
「オデットお嬢様はここには来ません。私がお嬢様を探している途中にちょうど公爵家の他の使用人にばったり出くわしました。公爵邸ではもうそろそろ起きなければ式の準備に間に合わない時間になってもオデットお嬢様が起きていらっしゃらないので、メイドがお嬢様のお部屋を開けたら部屋はもぬけの殻。そしてベッドの横の小さな机の上にこの手紙が置いてあったそうです。それから急いで旦那様にお伝えしようと手紙を持ってこの大聖堂まで来たそうです」
アルバネル公爵はメイドから封筒を受け取ると開封する。
「何が書いてあるんだ?」
封筒に入っていた便箋には流麗な字でこう書かれていた。
”私はアルノー王太子殿下とは結婚出来ません。私は旅に出ますので、私のことは探さないで下さい。二度と公爵家へは帰らないので、勘当扱いで私の籍は公爵家から除籍して頂いて構いません。今までお世話になりました。”
「くそっ!! オデットめ、この儂の顔に泥を塗ってくれおって!!」
手紙を読み終えたアルバネル公爵は憤怒の形相で手紙をぐしゃぐしゃに丸めて地面に叩きつけた。
メイドは小声で事情を説明したが、手紙を読んだアルバネル公爵が口汚く大声で罵った為、招待客は結婚式当日に花嫁が逃げたということを察した。
中にはアルノーとオデットの学園時代の同級生も参加していた為、彼らはオデットが逃亡した理由にもしかしたら学園時代、アルノーが付き合っていたキャロリン・ルーキエ男爵令嬢絡みで自分達の知らない何かがあったのかもしれないと推測した。
元々彼らは今日アルノーとオデットの結婚式が行われたということは、アルノーとキャロリンはやはり王太子と男爵令嬢では身分諸々釣り合いが取れない為、結局二人は別れることになったのだと思っていたのだ。
尤も彼らも客観的に見てキャロリンが王太子妃として相応しいとは全く思っていなかった。
公爵の罵声はアルノーの耳にも届いており、アルノーは自分が結婚式当日に花嫁に逃げられた花婿になるということを悟った。
アルノーはアルバネル公爵のように大声で口汚く罵ったりはしなかったが、内心はオデットへの怒りに満ちていた。
アルノーはキャロリンだけでは問題があるとわかっていたからこそオデットとも結婚することに決めた。
先日王宮で説明した時は受け入れた様子だったから安心したのに、いざ結婚式当日を迎えたら逃げるだなんて。
あの日アルノーは確かにオデットが納得するような説明はしなかったが、だからと言って逃げ出すなんて思いもよらなかった。
逃げ出したら彼女のみならずアルバネル公爵家にも泥を塗ることになる。
それをわかっていながら逃げるとは。
次、オデットに会ったら文句の一つでも言ってやらねば気が済まない。
結婚式に花嫁が来ないなんて相当な屈辱だ。
アルノーは怒り狂っていたが、頭に浮かんでいるのはどれもこれも自分の都合ばかりでオデットの気持ちなんて欠片も考えていないことに気づいていない。
結婚式は花嫁が来ないことが判明したので、解散となった。
盛大に行う予定だった王太子の結婚式で花嫁逃亡という何とも後味の悪い結婚式だった。
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