側妃にすると言われたので従者と一緒に逃げることにしました。

水月 潮

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第7話

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 食事を終えたオデットとベルナールは会計を済ませ、喫茶店を出る。

 先程まで歩いていた時と同様に手を繋いで歩く。

 ただ、オデットは喫茶店に入るまではベルナールのはぐれない為という言葉を文字通りの意味で受け取っていたが、喫茶店であんなことをされて言われたら、この手を繋ぐという行為にもそのような意味合いが含まれているのかと考えてしまい、ドキドキしながら歩いていた。


 そのオデットの心中をベルナールは察していたが、特に追求はしなかった。

 ベルナールは先程かなりオデットを動揺させてしまった自覚がある。

 一度に距離を詰め過ぎると人間の習性的に逃げたくなる。

 焦らずじっくりと距離を縮めるのが良い。


「さて、お嬢様。軽食も頂きましたし、次の場所へ移動しましょう」

「次の場所はどこ?」

「ここ、シャルドーから次はアルディアに向かいます。アルディアはラリアーノ王国に属する街です。地図で見れば、ラリアーノ王国の北方に位置します」

「どのくらいの時間、馬車に乗るのですか?」

「大体4時間くらいですね。今日はアルディアで宿を取って一泊する予定です。あまり長時間移動するとどうしても疲れますし、夕方には宿を確保しないと泊まる場所がなくなってしまいますので、今日の移動はアルディアまでという予定にしました。それに、アルディアは自然豊かな保養地としても有名ですので、旅の疲れを取るには最良かと」

「ではアルディアに着いたらまず宿を取って、それから夕食の時間まで散策するということで合っておりますか?」

「そうですね。せっかく行くのですから、夕食の前に散策しましょう」


 話しながら歩くと馬車の乗り合い所まであっと言う間に到着する。

 王都と違ってシャルドーは遠方の街になるので、シャルドーからアルディアに向かう為の馬車の予約は入れていない。

 その為、乗り合い所の受付で空いている馬車がないか交渉する必要がある。

 ベルナールは自分一人で受付に行って手続きをしている間、オデットを一人にすると色々問題がありそうだと判断したので、オデットと一緒に受付に向かった。


 オデット本人はあまり頓着はしていないようだが、客観的に見ても美少女なので、見知らぬ男からのナンパや誘拐――ちょうどお誂え向きにここは馬車の乗り合い所なので誘拐してすぐに馬車に乗せ、攫うことは容易である――などの標的になりやすい。

 誘拐された後の展開は言わずもがなだ。

 そのような事態は避けるべきなので、ベルナールは自分と行動を共にさせることにしたのである。


 受付で交渉した結果、30分後にこの乗り合い所に戻ってくる馬車を借りられることになった。

 これはかなり運が良い方だ。

 運が悪ければ三時間・四時間待たされることもあり得る。


 オデットとベルナールは馬車を待つ30分の間に、馬車の中でも食べられそうなパンや飲み物を買うことにした。

 馬車に乗る時間が長い為、小腹が空いた時の為に用意する。

 乗り合い所の近場にパン屋もジューススタンドもあるので、そこで調達することにした。

 二人はロールパンを3つとオレンジジュースとミックスジュースを一つずつ購入した。

 ジュースはオデットの分がミックスジュース、ベルナールの分がオレンジジュースである。

 二つ購入したのは味の好みが問題だ。


 30分後、予定通り馬車が到着した為、オデットとベルナールは馬車に乗る。


「思ったよりも早く馬車に乗ることが出来て良かったです。この分だと恐らく夕方までにアルディアに到着するので、先程お嬢様にお伝えしたように散策は出来そうですね」

「馬車がない時はもっと時間がかかるのですか?」

「そうです。予約を入れたらそんなことはないのですが、私達みたいに予約を入れられなかった場合は、言われた時間待つしかないのです」

「そうなのですわね。私達が今から行くアルディアは自然豊かな保養地とのことですが、何か観光名所のような場所はありますの?」

「確かモンテルボ湖という名前の湖がありましたね。あとは温泉が湧いているので、温泉を楽しめる施設もありますよ」

「温泉?」

 聞きなれない単語が出て来たのでオデットはベルナールに問い返す。

「色々な成分を含んだお湯です。温泉に浸かると美容効果がありますよ。お肌がつるつるになります」

「それは嬉しいですわ!」

 無邪気にはしゃぐオデットにベルナールは温かな瞳で見守る。

「お嬢様、また長旅になりますので、眠たくなった時はお休み下さい。でも、昼間あまり寝すぎると夜に眠れなくなってしまいますので、出来る限り起きていることを勧めます」

「先程馬車でひと眠りしたから今は平気ですわ。馬車の窓から風景を眺めるのも楽しいですし」


 馬車は今、先程まで二人がいたシャルドーの街中からもうかなり離れていて、田舎の農村地帯を走っている。

 あちこちに緑が広がっており、とても長閑のどかな風景だ。

 大きな風車がゆっくりと回っている。


 二人は馬車の中で風景を楽しんでいた。
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