創作BL R-18短編集

とぶまえ

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余計なこと言うから

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「これから先も君とアナルファックしたい」

 いかがわしいホテルの一室で、整った顔の、可愛げすらある顔の男がこの上なく下品なことを言っている。人好きのする明るい笑みを浮かべているけれど、口から出て来た言葉には品や爽やかさの欠けらもない。
 シャワーを浴び終えて帰り支度をしていた俺は手を止め、ベッドに腰掛けているそいつに顔を向けた。

「俺のこと気に入ったの?」
「うん。顔が好き。あと、奥まで挿れさせてくれるところも好き。無駄な肉のない身体は肌が綺麗で触り心地滑らか。セックスしてる時に長いオレンジ色の髪が汗で濡れて白い肌に貼りつくのも、セックスする前は理性的そうだった緑色の目が気持ちよくて涙で潤んじゃうのも好き。声も好き。気持ちいいのも苦しいのも、かわいい声でたっぷり喘いでくれるから僕まで興奮しちゃう。存在がえっち。弄りまわして身体も頭もぐずぐずにしてから奥の奥までちんちん突っ込んでぶち犯したい」
「言い方を考えろよ」

 青い髪をしたこいつ、スラッジとはセックスする相手を探す為だけに登録しているマッチングアプリで偶然知り合った。気に入らなかったら即帰ればいいと思いながら実際に会ったところ、写真以上に顔がいいし、ちんこもでかいし、セックスも俺好みに執拗だし、非常に理想的な相手だった。

「ああいうアプリ使ったことがなくて緊張してたんだ。最初に会えたのが君でよかったよ、パラス。僕は凄く運がいい。今日のことは素敵な出来事として日記に書き綴っておくね。後から読み返して幸せな気分になるんだ」
「使ったことないって本気で言ってる?」
「会う相手全員に言ってるよ」
「だろうね」

 スラッジは黄色い目を細めて愉快そうにけらけらと笑う。その姿はいかにも軽薄そうで、誠実さや真面目さとは全く無縁の存在に見えた。俺としてはその方が気が楽だから悪くはない。

「でも君を気に入ったのは本当。また会おうよ」

 顔も身体もセックスも好みの相手が誘ってきているのだから、断る理由なんてない。
 俺は了承した。それから一年、セックスだけをするただれた関係がずるずると続いている。


◇◇◇


 世の中がハロウィンで仮装だのなんだのと浮かれている中、俺はセックスをする為だけのホテルにいた。少し青みがかった照明のせいで部屋には独特で背徳的な空気が流れている。
 俺は服を剥かれた状態でベッドに寝かされていた。こういう用途の為にあるとしか思えない形状のベッドの柵に両手を縄で縛り付けられている。動こうとしても縄が手首に食い込むだけで、拘束から逃れることは出来ない。
 まあ、逃げる気もなかった。これは完全に合意の上での拘束だ。
 俺をベッドに拘束したスラッジは俺の足の間に陣取っていた。こんな不健全な状況には場違いな無邪気な顔でにこにこと笑っている。随分と楽しそうだ。
 スラッジはするりと脇腹を撫でてきた。ふいに感じた手の冷たさと擽ったさに軽く身体を捩る。指先はゆっくりと肌をなぞりながら徐々に上に近付いてくる。俺は黙ってそれを見ていたけれど、胸の突起を撫でられた瞬間、身体がぴくりと反応した。

「ッ…ん……」

 小さく息を飲んだ俺を見ながら、スラッジは乳首をすりすりと擦りつつ口を開いた。

「前々から思ってたけど、縛ってた方が反応いいよね。抵抗出来ないと興奮する?」
「……多少」
「あはは、マゾっ気があるね。凄く良い。かわいいよ。じゃあ今日はこのまましようか」

 スラッジは傍らに転がしていたローションの入ったボトルに手を伸ばす。こっちとしてもさっさと始めたいのは山々だけれど、一つ気に食わないことがある。俺は右足をスラッジの身体に回してこちら側に引き寄せた。

「足は?」
「え?」
「足は縛らないの?」
「興奮するのは多少じゃなかったの?」
「多少出来るならやった方が良いだろ」
「縛っていじめてくださいって言って」
「何急に」
「僕もそう言われた方が興奮する気がする」
「……」

 スラッジは真剣な顔をしている。真剣な顔で、ド変態のようなことを言っている。しかし縛れと要求している側の俺も大概だという自覚があったから、大人しくノッてやる事にした。

「抵抗出来ないようにきつく縛って、泣くほどいじめてください」
「んー」

 スラッジは曖昧な顔で返事をしながら俺の足を掴み軽く曲げさせる。

「あんまり興奮しなかった。あと君敬語死ぬほど似合わないよ。二度と使わないでくれ」
「言えって言ったの君だろ」
「僕ってねだられるよりも嫌がってる子に無理矢理する方が好きなのかも知れない」
「最悪だね」
「褒めてくれてありがとう」

 スラッジは「足そのままにしててね、パラス」と言って、新しい縄を用意して俺の足を縛り始めた。どこで習得した技能かは知らないが手つきはこなれている。ここでぐだられたら萎えるから良い事だ。

「はい、完成」

 スラッジは左右の足をそれぞれ膝を曲げさせた状態で足首と足の付け根を縛り上げた。少し足を伸ばそうとしてみたが、俺の要望通りきつく縛られていて縄は緩みもしない。

「本当に抵抗出来なくなっちゃったね」

 両手は頭上に上げさせられたまま動かせず、さっきまでならスラッジを蹴り飛ばすという選択肢があっただろう足も今では役に立たない。スラッジが言う通り、本当に何も抵抗出来ない。
 俺の性癖は執拗に責められること。それとは正反対に、スラッジは人を弄り回すことに快感を覚える質だ。そんな奴の前で、なされるがまま犯されるしかない格好をさせられている。そう思うと、ぞくぞくとした期待が身体の奥から湧き上がって来て微かに口角が上がった。

「嬉しそうな顔してる」

 そう言う癖に、スラッジの方もそんな顔をしていた。これからやることが楽しみで仕方ないという顔だ。指摘してやろうかと思ったが、ふいにスラッジが俺のちんこを軽く握ったので声が詰まった。スラッジはコンドームの入った袋を持っている。

「着けてあげる」
「抱かれる趣味に目覚めたの?」
「僕のお尻は立ち入り禁止だよ」
「じゃあなんで俺に着ける必要があるんだよ」
「このコンドーム、媚薬ローションが使われてるらしくて。いつもより興奮出来ちゃうかもよ?」
「嘘くさい」
「試してみないと嘘か本当か分からないよ」
「自分で試せよ」
「サイズが合わないから無理」

 そう言われると強く反論が出来ない。こいつのちんこは文句無しにでかいから普通のものではサイズが合わないというのも分からない話ではない。
 スラッジは媚薬付きだという怪しいゴムを俺のちんこに着けた。最初はひやりと冷たさが襲って来たが、数秒経つと今度はじわじわとした熱を感じた。元から期待はしていないけれど、ただの温感ローションだろこれ。

「いつもより気持ちよかったら右手をあげてね。気持ちよくなかったら左手をあげて」
「どっちも出来ないって分かって言ってるだろ」
「縄を引き千切るという手があるよ」
「無茶言わないで」
「君なら出来ると信じてる」

 言いながら、スラッジは用意していたローションを指に纏わせて俺の後孔にゆっくりと挿入した。

「ん……準備して来たから、慣らさなくていいよ。君の挿れて」
「君は今奴隷なんだから口答えしちゃ駄目」
「変な設定付けないで」
「嫌だとかやめてって懇願するのはいいよ」
「やめるの?」
「ううん、もっといじめる」
「趣味悪い」

 慣らさなくていいと言っているのに、スラッジはねちっこく中を解した。とっくに柔らかくなっている場所を十分も二十分も弄り続け、指を一本から三本に増やして更に弄し、解すついでとばかりに前立腺もぐにぐにとこねくり回す。

「ぅ…ッんん……も、いいから……ッ。挿れて……っ」
「だーめ」
「なんで、っぁ……んぅう……っ」
「えっちな姿はなるべく長く見てたい」
「ッ挿れてくれれば、…ぅ……っもっと…ぁッ……見せてあげるから、早くっ……」
「焦らされるの大好きな癖に」
「そんなに、好きじゃ…ない……っ。っあ……ッ」
「嘘はよくないよ。かわいい声漏れちゃってる」

 笑いながら言うスラッジは指を止めるそぶりすら見せない。

「奴隷くんに命令とかしちゃおうかな」
「ん、っ……だから…変な設定、付けんな……っ、……っ」
「いいじゃないか、ごっこ遊び。そんなに難しいことは言わないよ。一つだけ聞いてくれればそれでいいから」
「っん、…ぅ……どんなこと?」
「僕が許可するまでイかないで」
「……それぐらいなら」

 深く考えずに「いいよ」と伝えれば満足気な笑みが返ってきた。俺はイかないように意識しながら浅く息を吐き、スラッジが満足するのをひたすら待った。



「ぁ……ッ……あ……~~~……っ」

 スラッジは、本当にねちっこい。もう何時間も指で責められているんじゃないかと錯覚するほど長く責められ続けている。それだけならまだしも、未だにスラッジはイッていいと言わないし、イケるような刺激も与えてこない。

「も……う、っいい加減に……ッ」

 終わらせてと訴えてもスラッジは手を休めない。じっとしていられず、無意識のうちに身体が逃げようとするけれど縄によって簡単に身動きを封じられた。

「ん……、っ……ッん……ッ」

 イケないなら、別の刺激が欲しい。俺はわざと手に力込めて動かそうとし、手首に更に縄を食い込ませた。ぎちぎちと締め付けられると縄に囚われているという実感が増す。縄が食い込む圧迫感と痛み、自由に動けないもどかしさは、今の俺にとっては興奮材料にしかならなかった。

「えっちな顔してる」
「……ッ、ぅ…ヤッてない時でも、…っん……いつもそんなこと言ってるだろ……」
「今はとびきりえっちだよ。これのお陰?」

 スラッジはちんこを軽く扱く。ああ、そういえば媚薬付きのコンドームなんて馬鹿らしいものを着けられていたなと、完全に忘れていたぐらいだったのだけれど、触られた瞬間にびくんと大きく身体が震えた。

「っ~~ー…ァっ……あ、ッ……!?」
「あれ。どうしたの?」
「待っ…て、変、なんか変……っ」
「……」

 普段より過敏に反応した俺を見たスラッジはにんまりと嫌な笑みを浮かべた。右手で中を弄りながら、左手でゆっくりちんこを扱き始める。

「ぅ…んッ、んん……!」
「イッちゃ駄目だからね。どれだけ気持ちよくても勝手にイッちゃ駄目」
「~~ー……っ!」

 媚薬なんて、精々プラシーボ効果で感じやすくなったと錯覚するような代物だろうと思っていたのに、明らかに身体がおかしい。こんな緩い触り方をされている時に感じるようなレベルの快感じゃない。

「ん、ッ……ぁっ、ああ……っ! 待っ、て、イキそ…ぅ……!」
「我慢が出来ない悪い子の所にはサンタさんが来ないよ」

 スラッジは笑っているが、今はそういう変な話をするような余裕は俺にはなかった。焦らされまくった前立腺を三本の指で捕まえられて容赦なく弄られ、それと同時に過敏になっているちんこを扱かれる。今すぐにでもイッたっておかしくなかった。
 イキたい、イキそうといくら訴えてもスラッジは笑って適当なことを言うばかりで、イッていいとは言わない。決定的な快感を与えられずにただ焦らされるのもキツイけれど、決壊する寸前でお預けを食らうのはそれ以上にキツかった。

「は、っぁ、…ッあぁ……! っんぅ……ッ、も、我慢できない……! あ、っァ……、~~ー…!」
「イキたい?」
「い…きた、い、イキたい……っ!」
「あと五分我慢しよっか」
「ぅ……っむり、だって……!」
「一緒に頑張ろう」

 頑張るのは俺だけだろ。内心でそう思いつつ、俺ははあはあと息を乱しながら必死に絶頂を堪えた。全身に力が入り、足の指先が丸まる。わざと身体に縄を食い込ませて悦に浸るような余裕すらなく、ただ純粋に身体が逃げようとするのを縄で押さえ付けられていた。全身にじっとりと汗が滲む。

「あ…っ……ぅう……も…う、ごふん、経ってる……っ」
「まだだよ。多分」
「この……っん、ぅ゛……ッ計ってないだろ君……!」
「大正解。後で花丸をあげよう」
「ふざけんな……ッ」

 抗議を無視して、スラッジは三本の指で前立腺をしつこく弄り続け、追い詰めるようにねちっこくちんこを扱く。俺は益々乱れた熱い息を吐きながら、すぐそこまで来ている絶頂を懸命に遠ざけようとした。強ばった身体が時折堪えきれないというようにびくんと震える。

「~~……っ! ぁ…んん゛っ……ッう、~ーーッ……!」
「うんうん、いい子。頑張ってるね。頑張る子の所にはクリスマスにサンタさんが来てくれるよ。電マとかプレゼントしてくれるんじゃないかな」

 「今度使おうね」と楽しげに言ったスラッジはちんこを根元からゆっくりと大きく扱いた。

「んぅ゛ぅ……!」
「さっきからずっとちんちんびくびくしてる。我慢するのやめて、溜めてるもの全部出せたら凄く気持ちいいだろうね」
「わ、かってるなら、はやく、イかせて……っ!」
「五分経ってないから駄目」
「う、ぅ゛、計ってないって言った癖に……!」
「今から計るよ。五分って何秒かな? 忘れちゃった」
「あ…ッ……、ぁ゛…さ、ん、十秒……っ」
「あはは、雑な嘘つくね。かわいいから採用してあげよう」

 スラッジはゆっくりと、苛つく程にゆっくりと勿体ぶって数字を数え始めた。勿論手は休めない。ローションを纏わせた指先で中をぐちゅぐちゅと弄び、射精を煽る手つきでちんこを扱く。より一層増した刺激に、俺は背を仰け反らせて喘いだ。少しでも刺激を減らすべきなのに、イキたがっている身体が勝手に腰を揺らす。

「にーじゅごー、にーじゅうしー」
「あ…ッ……っん……う゛うぅ……! ぁ゛、~~……ッ! すらっじ、は、やく……っ」
「今から君のかわいいところ十箇所言う遊びとかしない?」
「~ー……っ! したら、首絞める……ッ、あ、っんぅ゛……! っ……~ーッ……!」

 スラッジは笑いながら更に身体を責め立てる。俺は襲いかかってきた強い快感の波に歯を食いしばりながら悶えた。気持ちよさと辛さがごちゃ混ぜになって目に涙が滲む。

「ん゛…ぅう……ッ! ~ー……っ! ぁ゛っ……ッぅ゛、~~…ん゛ぅぅ……ッ!」

 もう、無理。もう一秒だって我慢出来ない。涙を堪えながら絶え絶えに訴えてもスラッジはわざとらしくゆっくりと数を数えるだけだった。

「さーん」
「っう……んん……ッ! はやく……ぅう゛……ッ!」
「にー……、だっけ? さっき僕四って言ったっけ?」
「~~ー……ッ!」

 まだ勿体ぶる気なのか。もどかしさで、縛られた腕に顔を押し付けながら声にならない声をあげる。腕を暴れさせそうになったが縄がそれを許さない。それでもじっとしていられず、ぎしぎしと拘束を軋ませる。

「ぅう゛…っ……~~! ん゛、ッ…ぅぅ゛……!」
「あと一秒数えたらイかせてあげるね。それまでイッちゃ駄目だよ」
「わ゛、かったから……! ぁッ……っん、んん゛……ッ早く、かぞえて……っ!」
「普段の淡々としてる君もいいけど余裕のない姿というのもまたかわいいよ。本当にもう、かわいくてかわいくて」
「っあ……ッ」

 スラッジは急にちんこから手を離し、後孔からもずるりと指を引き抜いた。ずっと咥え込んでいたものを失った穴は名残惜しげにひくひくしている。

「そろそろ僕が限界」

 笑顔で言うスラッジは息を乱している。スラッジのことを見る余裕なんてなくて気付いていなかったけれど、随分と興奮しているようだ。それも相当切羽詰まった様子で。
 スラッジは性急な手付きで服を脱ぐと、勃起したものの先端を俺の後孔に押し当てた。本人の整った顔に似合わず、エラの張ったちんこは太さも長さもそこら辺の男以上で可愛げがない。

「まだイッちゃ駄目だからね」
「う、ん゛……っ」

 念を押してから、スラッジはゆっくりと中に挿入した。前立腺を押し潰されながらゆっくりと太いものに中をこじ開けられていく。堪らなく好きな感覚で、ずっと焦らされていたところにそんなもの与えられたら簡単にイッてしまいそうになる。けれど俺は馬鹿正直にスラッジの命令を聞き、手足を強ばらせびくびくと震えながら懸命に耐えた。

「ぅ……んん゛……ッ! っん……~~ッ……っ!」
「ッ、中、熱い……。僕のことぎゅって締め付けて喜んでくれてる。っ……ん、ッ、君の中に入るの、僕大好きなんだよ」
「っそんなの……ッぁ゛…ぅ…元から、知ってる……っ」

 中をぎゅうっと締め付け、スラッジの目へ真っ直ぐ視線を向けた。

「っん…っぅ゛……俺も、好き……」

 俺の言葉を聞いたスラッジは嬉しげに口角を上げた。「僕の方がもっと好きだよ」と無駄な対抗心を発揮しながら更に奥まで挿入する。

「あ…ぁ゛ッ……! あ゛っ、~~……ッ!っ……ス、ラッジ、もうイキたい……!」
「っ、あとちょっとだけ」
「~ー…っうぅ゛……ッ、いつまで、…っ…待たせるんだよ……!」

 涙目でスラッジを睨む。もう、本当に限界だった。一瞬でも気を抜いたら決壊してしまう。ぎりぎりの状態でずっと耐えさせられている。

「ん、ぅッ……、イキたいよね、ずっと我慢してるもんね、僕もイキたい」

 スラッジは荒く息を吐きながら俺の腰を強く掴んだ。

「全部挿れさせて」
「ん゛、っぁ゛、ッ~~ー……!」

 ぐり、と奥の結腸の入口を突かれ、強い圧迫感に悲鳴のような喘ぎが漏れた。スラッジは結腸の入口をこじ開けて奥へ挿入ろうとしている。

「あ゛、あ゛ぁ゛……っ!  っぅ゛… ~ーー……ッ!」
「僕があと一秒数えたらイッていいよ。一秒だよ、一秒。ッ……二秒の半分、一年の……」
「っう゛、ん゛……分かってるから、ッ焦らさないで……っ!」
「あはは」

 軽い声で、しかし全く余裕なんてなさそうなぎらついた目でスラッジが笑う。普段の可愛げのある整った顔とは違って、完全の犯す側の顔だ。
 好きな顔だ。

「いち」

 スラッジがそう数えた瞬間、ぐりゅ、と結腸の入口をこじ開けられた。

「っーー~~~あぁあ゛あ゛あ……ッ!」

 奥をこじ開けられたのと同時に、ずっと我慢させられていたものが決壊して俺は背を仰け反らせてイッた。気絶してしまいそうなほどの激しい快感が一気に身体中を駆け巡る。頭は快感一色に染まって思考が真っ白になった。射精を待ち望んでいたちんこは、触られてもいないのに白濁液が吐き出しコンドームの中を汚した。

「あぁ……ッぁ゛……~~っ」

 長くて深い絶頂に息が上手く吸えない。あまりにも気持ちいいから、永遠にこのままならいいのになんて、まともな思考の出来ない頭で考えてしまう。

「は、ぁ……パラス……」

 感じ入った声でスラッジが俺の名前を呼んでいる。俺は何とかそれに視線だけ返した。

「君って、えっちだよね。いつも全部挿れさせてくれるもん。中、凄く気持ちいい」
「ん……、ッ、あ゛……っ!?」

 奥からスラッジのものが抜け出ていった直後、強く腰を打ち付けられた。どちゅりと奥の入口を再びこじ開けられて大きな声が漏れる。

「イッてる顔、かわいかったよ。気持ちよくて頭の中空っぽになっちゃってた?」
「っう゛……んん゛ッ……! ま゛、って……まだ無理……!」
「僕もイキたいな」

 あれだけぎらついた目をしていた奴が奥に挿れただけで満足する訳がないなんて、よく考えなくても分かる。頭が真っ白になっていた俺が分かっていなかっただけで。

「~~っ……ッあぁ゛、 ぅ゛…ッああ゛……! や゛、ぁあ゛あッ……!」

 腰を打ち付けられる度にスラッジの太くて硬いものが奥を突き、本来なら絶対に入ってはいけない場所をこじ開ける。絶頂の余韻が抜け切っていない身体を揺さぶられ、俺は身体をびくびくと震えさせながら悲鳴を漏らすように喘いだ。

「んう゛、ぅ゛うっ……! あ゛ッ…~~ーっ! ッあぁ゛ー……っ!」

 奥まで挿れられることは、嫌いじゃない。これを求めてちんこがでかい奴を探している。苦しさもあるけれど、犯されているという実感を強く得られて堪らない充足感がある。前立腺を擦りあげられながら奥を突かれるのは気持ちいい。だからこそ、既に頭が許容範囲いっぱいに快感で染まっている今は辛い。もう充分気持ちいいのに、更に与えられたら、おかしくなりそうになる。

「ぁあ゛っ……! ああ゛ッ…っあぁ゛あ……ッ!ッん゛、うぅ゛…~~ッ!」
「ん、ぅ……君と、深く繋がれて嬉しい……っ。んッ……そんなに喜んでくれてることも、嬉しくて堪らない」

 スラッジは恍惚とした笑みを浮かべている。俺はぜえぜえと息を吐きながら「待って」と「休ませて」を繰り返したけれど、スラッジは無視する。というよりも、そもそも興奮し過ぎて聞こえていないように見えた。

「パラス……っ。ッ……奥に、出させて……っ」
「ッ、っん゛んッ……!」
「ねえ、っ……僕の名前呼んで、お願い」
「ぅ゛……ッ、ん゛っ、す……らっじ、スラッジ……!」
「ッ~ー……!」

 奥を突き上げたスラッジが耐えきれないという顔で息を詰まらせ、中にどぷどぷと白濁液を注ぎ込む。その感覚を感じながら、俺はまた小さく絶頂を迎えて身体をびくんと震わせた。
 目を伏せたスラッジは深く呼吸をして乱れた息を整え、額に滲んだ汗を手の甲で拭ってから黄色い目を俺に向ける。
 
「……イクの我慢するところからもう一回やらない?」
「ちょっとぐらい人の身体の負担考えて」
「ええー」

 スラッジは軽い声で言いながら俺のちんこに被せていたコンドームを外した。天井に顔を向けて軽く口を開け、その上でコンドームをひっくり返す。何をしているんだと困惑している俺を尻目に、スラッジは中から滴り落ちてきた精液を飲み込む。何も出てこなくなり用済みになったコンドームをベッドの上に雑に放ったスラッジは、汚れた口元を指先で拭って笑った。

「残念」
「今君めちゃくちゃ気持ち悪いことしてるよ」
「セックスは得てしてそんなものだよ」


◇◇◇


 ベッドに仰向けに寝っ転がりながら自分の両手首を見上げた。縄に締め付けられた痕がくっきりと残っていて酷い有様だ。緊縛してセックスをしましたとこれでもかと主張している。
 こればかりは体質だろうけれど俺はどうにもこういった痕が消えにくい。何日か残るだろう。仕事に行く時にはこの跡を見られないように神経を使わなければならないと思うと憂鬱になる。別に他人からどう見られようが構わないけれど、職場となるとそうもいかない。仕事に支障が出るのは論外だ。生活に影響するし、そうなればセックスなんてしている場合じゃなくなる。
 そんなことを考えていると、シャワーを浴びに行っていたスラッジが戻ってきてぼすりと俺の横に寝転がった。やけに上機嫌に笑っている。

「気持ち悪い顔してる」
「僕はいつでもかわいいし格好いいよ」

 スラッジは自信満々に言い切る。まあ、確かに面は間違いなくいい。こんな相手が釣れるのだからマッチングアプリも捨てたものじゃない。

「風呂場でオナニーでもしてたの?」
「なんでそんな話になるんだい」
「機嫌がいいから」
「シャワーを浴びながら君のことを考えてたからだよ。君と僕ってとても身体の相性がいいと思うんだ」
「それは俺も思うよ」
「性格の相性もいいと思う」
「……まあ、そうなんじゃない?」

 多少の鬱陶しさを感じることはあるけれど、だからこそあの執拗なセックスになるのだろうし、こいつの常識の緩さは居心地がいい。品行方正な真人間と一緒にいたって息苦しいだけだ。

「身体の相性もよくて、性格の相性もいい。お互いそれを認めてる。つまりはもう、ほとんど恋人のようなものじゃないだろうか」

 スラッジは親指と人差し指で小さなハートマークを作っている。何を言い出すかと思えば、くだらないことを。

「僕と恋人になる?」
「冗談きつい」
「酷い」

 スラッジはぱっと手を開いてハートマークを崩す。酷いなんて言いながらも、何も気にした様子もなく平然としている。それはそうだろう。こいつは普段からこういうことばかり言っている。セックスしている間も散々似たようなことを聞いたし、最初に会った時からそうだった。どうせ何も考えずに喋っているし、誰にでも言っている。

「次はいつ会う?」
「会いたい時に」
「早いうちだと嬉しいな。僕は君のこと大好きだからね」
「身体が好きの間違いだろ」
「あはは」

 ほら、否定しない。

「そう言えば、紙と赤ペンが必要だったね。一緒に買って帰ろうよ」
「何に使うの?」
「花丸を描くんだ。あげるって言ったじゃないか」
「いつ言った?」
「君がイキたくて堪らないって悶えてる時に」
「覚えてない」
「僕は大好きな君との会話を一言一句違わず覚えていると言うのに」
「本当に?」
「どうだと思う?」
「嘘だと思う」
「疑い深い君には花丸を増やしてあげよう」
「正解だって言ってるのと同じだろそれ」


◇◇◇



「本当に覚えてるよ」



◇◇◇
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