女官は推しの妄想をして腐っていたい~という訳で、お付きのお嬢様が立てるフラグはすべて私が折らせていただきます~

さくらぱん

文字の大きさ
1 / 8

お嬢様、婚約を破棄される

しおりを挟む
「アリスティア・ロザモンド。君との婚約は破棄させてもらう!」

 凛とした声がホールに響き渡りました。

 ああ、そのセリフを生で聞けるなんて夢みたいです!

 なんと素晴らしいお声なのでしょう。
 激しさの中にも芯の強さが感じられます。
 スマホに録音してエンドレスで聞いていたいです。
 許されるのなら、耳元でもう一度言って欲しいのですがお願いできますでしょうか。

 おっと、いけませんいけません。
 推しの素敵な声を聞いて我を忘れてしまいました。
 心を落ち着けましょう。

 すぅ、はぁ。すぅ、はぁ。
 精神的な深呼吸をすませます。
 ガチで深呼吸なんてしたら目立ってしまいますからね。
 目立つのはいけません。

 ふと周りを見渡してみると、皆さまの表情が固まっておられました。
 それはそうでしょう。
 皇太子様が衆人環視の中で婚約を破棄すると宣言されたのですから。

 テーブルの近くにおられるのは将軍の肩書を持つ偉丈夫です。
 口をあんぐりと開けておられます。
 あらあら。食べていた物が落ちてお召し物が汚れていますよ。

 窓際に立っているのは知識豊富なイケメン宮廷魔術師なのですが、目元を隠すメガネがずり落ちてますね。
 おかげでいつものクールさが吹き飛んでしまっています。

 それからいくつかの輪を作っておられる女性陣。
 その中でもひと際目立つのはピンクの髪をした美少女でしょうか。
 手にした扇で口元を隠されています。

 あら? 一瞬だけチラリと見えた口は笑っていませんでしたか?

 きっと私の見間違いでしょう。
 なにしろあの方はこの世界の元である乙女ゲームではヒロインだったのですから。

 しかし、何故このような場所で、いきなりあんなことを皇太子様が口になされたのでしょうか。

 冷たい目で見つめる皇太子様のお姿は素晴らしいの一言に尽きますけれども。
 脳内に別名で保存しまくっておきます。
 緊張のあまり姿勢を崩してしまった体で少し角度を変えて皇太子様の姿を瞳に捉え、これも別名で保存です。

 いいですね。これはいいアングルです。
 ゲームのスチルとは違う構図でこのシーンを見られるなんてファン冥利に尽きます。

 おっと、いけませんいけません。
 できるのならもう少し寄りで収めたいところですが、無暗に皇太子様に近寄るなんて、そんな恐れ多いことなどできるはずがありませんものね。

「君はこの国を継ぐ私の妃に相応しくない……と、思うのだ」

 皇太子様はこのゲームのメインヒーローです。
 パッケージでも中央に描かれていますしね。

 画面の向こう側にいたときから思っていましたけど、やっぱりイケメンですよねえ。

 今は輝くような金の髪をきっちりと撫でつけて、でも一筋だけ髪がほつれて額にかかっているところなんてグッとするほどセクシーです。

 そして声。とってもいい声なんです。
 ああ、音声再生モードで何度もリピートした声を生で聞けるなんて……幸せすぎます。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

処理中です...