58 / 675
島国の戦士
第58話 それぞれの想い ~麻乃 2~
しおりを挟む
「あれ、修治のところも今、終わり?」
「ああ、ちょうどいいタイミングだったみたいだな。そういえば、新しい刀を買ったって?」
「うん、こいつと、もう一刀は家に置いてある」
腰に差した夜光の柄を握ってみせた。
「鞘に凝った細工がしてあるな。壊れたら泣くんじゃないのか?」
「意地悪なことをいわないでよ。見た目より強いっていってたから、多分平気だよ」
「先生がな、炎魔刀、返してくれるってよ」
修治が笑ってそう言ったのを聞いて、麻乃は思わず声をあげた。
「本当?」
「ああ。ただし、手もとに置くだけにしろってさ。帯びているところを見つかったら、次は殺されるな」
「置くだけでも十分だよ。そっかぁ、戻ってくるんだ……」
車の前までくると、午後からの会議でほかのみんなが集まってきていた。
おりた車のドアを閉めながら、巧が声をかけてきた。
「二人とも久しぶりじゃない。今日はどうしたのよ?」
「顔合わせだよ」
「なんだ、もう選別できたのか? ずいぶんと早いじゃねぇか」
後ろから顔を出した徳丸も加わる。
「うん、梁瀬さんが資料を細かくまとめてくれてね、選定がかなり短縮できたから」
「じゃあ、あんたたちあれね? 地獄の演習するんでしょ?」
「もちろんだよ。最初にキツイ思いをしたほうが、あとが楽になるもん」
「まったくとんでもねぇ鬼だな。おまえたちは」
徳丸が笑った。
サバイバル演習はどの部隊も必ずやるけれど、基礎訓練を済ませてからにしている。訓練開始早々におこなうのは麻乃と修治だけだった。
「ここまで来たのなら、会議にも出ていけばいいのに」
「いや、帰りにいろいろと寄るところがあるんだよ。次の会議には出るつもりだけどな」
穂高と修治が話しを始めたとき、鴇汰に後ろから腕を引っ張られ、みんなの輪から離れた。
「このあいだはありがとうね。掃除とかご飯とか」
「そんなのはいいんだけど、おまえ、腕はもういいのかよ? ちゃんと医療所行ったのか?」
「あれから痛まないよ、大丈夫。それと、修治にも黙っててくれてありがとう」
「別に……あいつと話すことなんてねーから。ってか、知られるとマズイ理由でもあるのかよ?」
「あまり余計な心配をかけたくないだけだよ」
鴇汰の問いかけに、麻乃は目を反らして小声で答えた。
「心配って――」
「おい! そろそろ行くぞ」
「鴇汰、俺たちのほうもそろそろ時間だよ。早く向かわないと」
鴇汰の言葉をさえぎって、修治と穂高が呼びかけてきた。
「うん、今、行く! じゃあね、また今度」
鴇汰の腕を軽くたたくと、麻乃はそのまま振り返らずに走った。背中に鴇汰の視線を感じる。
車に乗り込み、走りだすときに少しだけ目線を向けると、穂高と一緒に階段をのぼっていく鴇汰の後姿が見えた。
たまらなく切なく胸が痛んだ。
「ああ、ちょうどいいタイミングだったみたいだな。そういえば、新しい刀を買ったって?」
「うん、こいつと、もう一刀は家に置いてある」
腰に差した夜光の柄を握ってみせた。
「鞘に凝った細工がしてあるな。壊れたら泣くんじゃないのか?」
「意地悪なことをいわないでよ。見た目より強いっていってたから、多分平気だよ」
「先生がな、炎魔刀、返してくれるってよ」
修治が笑ってそう言ったのを聞いて、麻乃は思わず声をあげた。
「本当?」
「ああ。ただし、手もとに置くだけにしろってさ。帯びているところを見つかったら、次は殺されるな」
「置くだけでも十分だよ。そっかぁ、戻ってくるんだ……」
車の前までくると、午後からの会議でほかのみんなが集まってきていた。
おりた車のドアを閉めながら、巧が声をかけてきた。
「二人とも久しぶりじゃない。今日はどうしたのよ?」
「顔合わせだよ」
「なんだ、もう選別できたのか? ずいぶんと早いじゃねぇか」
後ろから顔を出した徳丸も加わる。
「うん、梁瀬さんが資料を細かくまとめてくれてね、選定がかなり短縮できたから」
「じゃあ、あんたたちあれね? 地獄の演習するんでしょ?」
「もちろんだよ。最初にキツイ思いをしたほうが、あとが楽になるもん」
「まったくとんでもねぇ鬼だな。おまえたちは」
徳丸が笑った。
サバイバル演習はどの部隊も必ずやるけれど、基礎訓練を済ませてからにしている。訓練開始早々におこなうのは麻乃と修治だけだった。
「ここまで来たのなら、会議にも出ていけばいいのに」
「いや、帰りにいろいろと寄るところがあるんだよ。次の会議には出るつもりだけどな」
穂高と修治が話しを始めたとき、鴇汰に後ろから腕を引っ張られ、みんなの輪から離れた。
「このあいだはありがとうね。掃除とかご飯とか」
「そんなのはいいんだけど、おまえ、腕はもういいのかよ? ちゃんと医療所行ったのか?」
「あれから痛まないよ、大丈夫。それと、修治にも黙っててくれてありがとう」
「別に……あいつと話すことなんてねーから。ってか、知られるとマズイ理由でもあるのかよ?」
「あまり余計な心配をかけたくないだけだよ」
鴇汰の問いかけに、麻乃は目を反らして小声で答えた。
「心配って――」
「おい! そろそろ行くぞ」
「鴇汰、俺たちのほうもそろそろ時間だよ。早く向かわないと」
鴇汰の言葉をさえぎって、修治と穂高が呼びかけてきた。
「うん、今、行く! じゃあね、また今度」
鴇汰の腕を軽くたたくと、麻乃はそのまま振り返らずに走った。背中に鴇汰の視線を感じる。
車に乗り込み、走りだすときに少しだけ目線を向けると、穂高と一緒に階段をのぼっていく鴇汰の後姿が見えた。
たまらなく切なく胸が痛んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる