上 下
148 / 166
冒険者~学園騒動~

いつもの風景と心配事

しおりを挟む
野外演習二日目の朝は、特に何事もなく始まった。
今は各自で朝食の準備をしているようだ。

「朝は温かいスープにするか。あぁ~、そういや出汁まだあったかな?」
「皮でも剥いで手を熱湯に浸けとけば?出汁が取れるんじゃない?」
「恐ろしいわ!?何の出汁だ!何の!むしろお前が浸かれよ。おまえの肉は最高級だから最高級の出汁がでるぞ!」
「はぁ!?……まぁ、魔王おまえは禍々しいから出汁も禍々しいのになるかもしれないもんね~」
「ハッ!残念でした。この体は勇者あいつのだ。むしろ聖なる出汁になるかもな!」
「聖なる出汁って何だ!」

何やら訳の分からない口論を繰り広げるアルベルトとガイを放置したフェリーチェは、自分が持っていた材料でスープ作りを始めていた。
そんなフェリーチェにソロソロと近付いたブレンダが声をかける。

「あの~」
「どうかしました?あっ、皆さんの分も作りますよ」
「ありがとうございます!……じゃなくて!アレは止めなくて良いのですか?」
「ただのジャレ合いですよ。いつもの事です」
「そ、そうですか?何か殴り合いになってますけど」
「いつもの事です」
「ま、魔法を使い始めましたけど!?」
「結界張ってるから大丈夫ですよ~」
「その結果に亀裂が入りましたが!?」
「大丈夫、大丈夫……できた。アル~、ガイ~、ご飯だよ~」
「は~い」「おぉ~」

フェリーチェが声をかけたとたんアルベルトとガイは素早く彼女の側に移動してきた。
それを見たブレンダはガックリと肩を落とすが、二人のジャレ合いを目撃した生徒たちのザワつきは暫く収まらなかった。
時は過ぎ、演習の時間になった。
今日は学園側が指定した場所に向かう演習だ。
もちろんただ向かうだけじゃなく、グループごとで違う薬草の採取と魔物の討伐をしなければならない。

「つまり、出発前に薬草のある場所と魔物のいる場所を把握して、ルートを決めないといけないって事だよね」
「気付いてるのは少ないね。グレースたちは分かってるみだいだけど」
冒険者おれらにとっては当たり前なんだけどな」
「でも、これって大丈夫かな?」
「何がだ?」
「だって、目的地に行くルートってあそこ・・・を通るでしょ?」
「ん?…あぁ~確かに僕たちが落ちた場所も通るね。でも、入り口は全部ガイが塞いだんだろ?」
「あぁ、いくつか残してるが登録した魔力・・・・・・に反応して開くようにしてあるから大丈夫だろ」

今回の演習場所の森は、以前ガイがいた地下施設がある森だった。ガイがファウスト家に移り住み無人になっていたが、施設には貴重な物が多くあったので、誰でも入れないようにしていた。

「……グレース様も登録してたよね。あと私たちも」
「反応したら開くね」
「…グレースに言っとくか」
「「それが良いよ」」

話し合いをしているグレースに通信して地下施設の件を伝えると、ハッとした顔をしたので、彼女も忘れていたようだ。グレースは施設の入り口を避けるようにルートを考え直す事になった。
準備が終わり、次々に出発する生徒たち。
グレースたちも出発し、順調に薬草の採取をしながら進んでいた。
少し離れた場所には他の班の姿も見える。
皆、真剣に取り組んでいるようだ。
そんな中、薬草を採取するでもなくグレースたちの後を着ける者たちがいた。
メリンダの班だ。
もちろんフェリーチェたちがそれに気付かない筈も無く警戒していたが、目的がはっきりしなかったのでそのまま様子を見る事にした。
しかし、フェリーチェたちは後にその判断を後悔する事になる。





しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

目覚めた公爵令嬢は、悪事を許しません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:45,590pt お気に入り:3,291

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:10,587pt お気に入り:2,217

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,455pt お気に入り:3,013

今世は我儘なぐーたら令嬢を目指します

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:468pt お気に入り:3,722

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:710

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,057pt お気に入り:13

婚約破棄ですか。お好きにどうぞ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:5,249

処理中です...