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禁忌の子

交渉

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朝、私はある魔法のおかげで、ぐっすり眠る事が出来た。
ある魔法とは、「空気布団」エアクッションだ。
これは、床で寝るのが嫌だったので作ってみた。
それとセスの事があったので念のため「時空障壁」エターナルバリアを使用した。

(う~ん、よく寝たぁ。ご飯がくるまでスキルを試してみようかな)

私が念のため「時空障壁」エターナルバリアはそのままにして、スキルを試そうとした時

――カシャッカシャッ

足音が近づいてきた。

(あれ?足音が1つしか聞こえない……スキル「気配探知」………やっぱり気配も1人分だ……もしかして……)

――カチャカチャ――ガシャン
――キィー

ドアが開き男の顔が見えた瞬間、私は部屋の角に逃げていた。
入って来たのはセスだった。

――バタン

「……よぉ、起きてるな。メシを持って来た。ここに置いておくぞ」

セスは食事を机に置いて、こちらに近づいて来たが
何か・・にぶつかり足を止めた。

「うおっ!?……何だ?」

セスは手を伸ばし確かめた。

「これは……結界か?…………へぇ~……」

セスがニヤニヤしながら私を見てきた。

(ギャー!「時空障壁」エターナルバリアの解除忘れてた~!でも、今解除するとアイツが来るしっ……)

私が悩んでいると、

――ドカッ

セスが胡座で座り込んで、笑みを消して話しかけてきた。

「そのままでいい、お前と話がしたい」

私はセスの思いがけない言葉に、返事を返せずにいる間、彼は待っていた。
その態度と真剣な目を無視できず、話してみることにした。
『時空障壁』エターナルバリアを解き「障壁」バリアに切り替えた。

「話って何ですか?」

私が返事をすると、

――ボフンッ

セスを煙が包み姿が見えなくなったと思ったら、煙の中から知らない声が聞こえた。

「感謝する!改めて自己紹介だ」

煙がはれた時、そこにいたのは昨日見た獣人だった。

「俺の名はチェイス!狐人族だ。まあ昨日の時点で分かっていたみたいだけどな。話したいのはその事についてだ。お前、『鑑定』系スキルを持ってるな?それもかなり上級の」

私はセス――チェイスの言葉に驚いた。

「!?どうして……」

「俺の『隠匿』はレベルが高い。それを見破れるのは『看破』のスキルかそれ以上の物しかないからさ」

私は返答に困ってしまった。

(どうすればいい……スキルの事は話さないほうがよさそうだし……でも何て誤魔化す?)

「どのスキルかは答えなくていいさ。ただ、そのスキルの力を貸して欲しい。」

(スキル?……何か態度も違うし)

「どうして『禁忌の子』私なんかのスキルが必要なんですか?」

「っ!?今までの事はすまないと思ってる……たが、あれはお前の為でもあったんだ」

私は、チェイスの言ってる意味が分からなかった。

「私の為?あれのどこが私の為なんですか!」

「俺がああしなければ、あの女に何をされてたか分からないからさ……俺がああいう態度をとっていれば、少しは気が晴れるだろうからな」

「あの女?メイド長ですか?彼女がどうして」

「あの女はお前の父親、ディエゴ・ベイリーを崇拝していて、『禁忌』である双子を産んだ母親とその双子を憎んでるからさ。弟が生まれてからは、あからさまに弟の方ばかり世話してるしな」

「!?っそれって、2人は大丈夫何ですか?」

「お前……あぁ表立っては何も出来ないさ、双子の事を知る人間は限られてるからな」

私は、チェイスの話を聞き昨日の事を思い出していた。

(昨日、2人を包んでいたオーラ。『心眼』は感情をオーラとして見る事が出来、感情によって色が変わるらしい。
チェイスの色は青で、メイド長の色は……黒だった。
チェイスが言う事が本当なら、黒は憎しみということで、なら青は?)

私が考え込んでると、セスが話かけてきた。

「何故だ?」

「え?」

「何故2人を気にするんだ?会ったことも、会いに来たこともないのに。血が繋がってるからか?」

セスの言葉に、私は前世の事が頭にうかんできた。

「血は関係ないです。私はただ、自分ではどうしようもないことで、責められるのが納得いかないだけ……今は私が地下室ここにいるけど、もしも私が“妹”だったら?“双子”じゃなければ?“双子”が禁忌じゃなければ?……母だってそう……沢山の可能性の中で、たまたま“こう”なってしまっただけ……それで恨んでも何かが変わるわけじゃないし、悲しいし悔しいけど、それは2人を心配しない理由にはならないってだけですから」

(小学校の時、『小夜』が孤児だと知ってイジメられた事があった。その事で卑屈になっていた時に、お義父おとうさんが言ってくれた言葉だけど……今は私もそう思うから)

私が思ってる事を伝えチェイスを見てみると、目を見開き口を開けたままこちらを見ていた。

(ん?どうしたんだろう……私、変な事言ったかな?)

「……お前いったいいくつだ?たしか4歳だったよな……どうやったらそんな答えが出てくるんだ」

(はっ!?そうか!普通4歳児がこんな事考えないよね)

「そっ、そう言えば力を貸すって……どうしたんですか?」

――ジトー

「「……………………」」

2人はしばらく見つめあっていたが、チェイスの方が先に折れた。

「はぁ~……実はな、俺はトラスト王国で仕えている主がいるんだが、3ヵ月前その主の子どもと他にも何名か誘拐された。俺たちが手分けして痕跡を追っていたら、このベイリー家にたどり着いたんで、変化して潜り込み探しても、仕掛けがあるようで見つからなかった。それで、お前のスキルで探して欲しいんだ」

「誘拐……でも“俺たち”って事は他の人もいるんでしょ?『禁忌』に頼んで大丈夫なの?」

事情を知り力になりたかったが、『禁忌』ということで何を言われるか分からなかったので聞いてみた。
だが私は、チェイスの次の言葉に唖然とした。

「あぁ!その事なら大丈夫だ!何せ双子が『禁忌』と言われてたのは何百年も前の事で、言ってたのだって人族だけだし、今じゃこのアンブラー帝国だけだしな!ハッハッハ」

(………………………………………………はあ!?)

「なっ!………落ち着け、落ち着け、私落ち着け~……って無理!っスキル『冷静沈着』」

私は、自力で冷静になれなかったので、スキルを頼った。

「お、おい……大丈夫か?」

「はい。今、大丈夫になりました」

「そうか……本当は国に応援を呼ぶ予定だったんだが、領主が3日後に戻ると聞いて焦ってたんだ。領主が戻り次第、誘拐された奴らは奴隷として売られちまうらしいからな」

「奴隷!?そんなの酷い……」

「奴隷事態は珍しくないさ……特にこの国は人族……いや、自分たち以外はみんな奴隷と同じだからな。他所から拐ってきては違法取引で売るのさ」

私は、自分が生まれた家がそんな事に係わっていると知って驚いた。

「さすがにこれじゃあ応援は間に合わないし、困ってた時に昨日の事があったと言うわけさ」

「でもどうやって探すの?」

「取り合えず、めぼしを付けてる場所を鑑定して欲しい。見つけたら後は俺たちの仕事だ。それで報酬なんたが、お前も連れ出してやる。行きたい国があるならそこまで連れて行ってもいいしな」

「……………え?」
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