婚約破棄から恋をする

猫丸

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ことの裏側(番外編)

番外編:第三王子の受難の恋

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※兄ロイド16歳のころ。カイル10歳です。
※閑話 国王夫妻の頭痛参照

 
 長兄も次兄も七歳で相手が決まったのだが、カイルには婚約者はまだいない。
 それは、カイルが望む令嬢に、既に婚約者がいるからだ。

 
 常々おかしいと思っている。
 リンジーこと、リンゼイ・モルガン伯爵令嬢は八歳だ。なのに、彼女の婚約者は十歳も年上だなんて。
 しかも、生まれてわずか二ヶ月で婚約したなんて、納得いかない。

 彼女の婚約者になれないと知った七歳の日から、カイルは王宮で遭遇するたびに、恋敵エリオットに戦いを挑み、ことごとく全敗記録を更新している。

「リンゼイ嬢と婚約解消しろ!」
 第三王子様に命令する権利はございませんね、とあしらわれ。

「十歳も上なんて彼女がかわいそうだ!」
 リンジーからは不満は言われてません、余計なお世話です──と鼻で笑われ。

「僕の方が年齢的にちょうどいい!」
 あなたの勝手な思い込みなど話になりませんね、と馬鹿にされ。

「赤ん坊のリンジーに断るチャンスもなかったのに勝手に婚約したんだぞ!」
 跪いて赤ん坊のリンジーの手をとり、きちんとプロポーズいたしましたよ。リンジーはそれまで泣いておりましたが、その瞬間に私の指を握りご機嫌な笑顔を見せてくれました───それが何か? とたたみかけられ。
 
「返事をしたのはモルガン伯爵だろっ」
 当たり前でしょう、生後二ヶ月で「喜んで」と喋る赤ん坊がいたら珍獣ですよ、と愚か者呼ばわりされ。

「お前なんか好きじゃない。こわくて言えないだけなんだ!」
 年齢など関係なく私たちは仲良しで、昨日もリンジーにエル様大好き…と言ってもらいました、と勝ち誇られ。

「お前なんて大っ嫌い!!」
 負け犬の遠吠えのようなカイルの癇癪で毎回戦いは終わっている……。

 ───あんな奴!

 マリオン公爵嫡男エリオット。
 長兄ロイドの側近のひとり。
 年齢も何もかも、追い抜くことができない存在。勝てるのは身分ぐらいな、子供のプライドを粉々にしてくれる存在やつ

(婚約者になりたい令嬢なんていっぱいいるのに何でなんだよ!!) 

 家柄、容姿、頭脳、立ち居振る舞い。どれをとっても抜群なエリオットの、婚約者の座を狙う年齢的にちょうどいい女は山といる。
 王子のカイルにリンジーを譲ったって、困らないじゃないか。そう思う。
 思うけれど、これは口にできない。

「リンジーはいやじゃないの?」
 どうして? エル様だ~いすきよ、と満面の笑顔で言われ。
「他のひとが好きっていったら?」
 エル様がいちばん好き、とさらに笑顔を向けられ。
 いつもいつも大好きなエル様の話題になると、リンジーはものすごく楽しそうにするからだ。
 おかげで、好きな食べ物、好きな本、好きな色、好きな歌などなど、知りたくもないエリオット知識が蓄えられている。

「………なんでリンジーじゃないの!?」 
 
 今夜カイルの婚約者を発表すると母である王妃に云われ、カイルは朝から不機嫌だった。
 勝手に婚約者を決められて腹が立つ。

 発表なんてされたら、もうリンジーを諦めなくてはならない!
 絶対に絶対に、い・や・だ!

「ロイド兄上だって、オレグ兄様だって好きな相手と婚約してるのにっ!」 
 
 何故か「うぅっ」と長兄は呻いていたが、兄と婚約者の複雑な事情を知らないカイルは、中睦まじいと信じている。
 次兄のオレグだって、婚約者が十歳になってのデビュタントの日に、浮かれてエスコートをしていたのは目撃済みだ。

「───こんな婚約、破棄してやる」
 心に誓う。
 妥当エル様を果たすまで負けるもんか!

 この数時間後の夜会で、カイルはのである。
 
※次はカイルに対するの話。
 
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