聖女への供物

たなまき

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 私は助手の聖女に関する知識が不安になり、確認してみたくなった。

「聖女の条件は何かわかるか?」

「見た目が関係ないのなら、心の美しさですかね」

 アランの口から正解が出たのでほっとする。

「その通り、心根の良さをはかるために何度も試験と面接をおこなうんだ」

 聖女は身も心も美しい娘が選ばれると世間では言われているが、実際には見た目は特に重視されていない。人前に出る以上、マナーが身についている必要はあるが、一番重要なのは心根の良さだ。

 心根の良くない聖女がその役目につくと、国が荒れると言われている。逆に心の美しい娘が聖女になると国は安定し、豊かになる。

 教会は国のために心根の良い娘を選抜しようと、聖女選抜に力を入れているのだ。そのため、この国では心理学者が重用される。候補者の性格を測るための試験問題や面接の質問作りが重要だからだ。毎回、聖女候補たちに対策されてしまうので、常に新しい問題が必要だった。

「たしか、性格の良くない聖女の時期は国が荒れるんですよね? それって本当なんでしょうか。この国は平和な時代が長く続いてますよね」

「君はまだ若いからな。過去には幾度も国が荒れた記録がある。いずれも聖女に問題があったと言われているが、私も自分の目で見たわけではないからな。単に聖女に責任を押しつけた可能性もある」

 私が聖女付きの司祭となってから約二十年、国が荒れたことはない。ただ、神学校で学んでいた頃、の聖女時代を経験したことがある。悪天候が続き、川が氾濫した。作物の収穫量が減少し、飢えた民衆の心は荒れ、暴動が起きた。あの四年が私の任期中に再現したらと考えると寒気がする。

「そういえば、聖女になると寿命が縮むとも言われてますよね。あれも事実なんですか? 聖女パトリシア様が長生きできないなんて自分は嫌です」

「うむ、確かにそう言われているな。だが、長命の元聖女がいるのも事実だ。全員が短命になるわけではないのだろう。もし必ず短命になるのなら、あんなに大量の少女たちが聖女になりたいとは考えないだろう」

 だが、最終試験で必ず候補者に尋ねる質問がある。

『国のためにその生命を捧げる覚悟はあるか?』

 この質問に首肯できない候補者はどんなに有望な娘でも選考外とされるのだ。教会の最上位のみが知る事実があるのかもしれないと私は思っている。

 ――次の聖女は大丈夫だろうか。パトリシア嬢ほど立派な娘でなくても良い。どうか平和な四年をもたらしてほしい。

 選考に関わっていない私は祈るしかないのだった。
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